保険外交員の搾取の問題

保険外交員が労働契約を締結する保険代理店から

搾取されている問題がクローズアップされています。

 

 

給料から様々な費用が天引きされて収入が低い,

売上が低いと費用のマイナスが多くなり,

借金を背負わされてしまう,

会社から損害賠償請求すると脅されて,

会社を辞めさせてもらえない,

等といった被害が発生しているようです。

 

 

 

このような保険外交員の搾取被害に対応するために,

保険外交員搾取被害弁護団」が結成され,

私も,弁護団の一員に加えていただきました。

 

 

http://hokenhigai.com/problem.html

 

 

本日は,保険外交員の搾取被害について解説していきます。

 

 

以前は,保険外交員は,保険代理店と委任契約を締結し,

保険の販売を行っていたようです。

 

 

委任契約の場合,労働基準法が適用されないため,

一方的に契約を解除されたり,最低賃金法が適用されないため,

毎月の収入が最低賃金を下回るなどのリスクを負うことになります。

 

 

ところが,2014年に金融庁の指針により,

保険外交員と保険代理店の委任契約は,

保険業法で禁止されている再委託の禁止に該当するとされて,

委任契約から労働契約へと切り替わりました。

 

 

 

 

委任契約から労働契約に切り替わると,

雇用主である保険代理店は,保険外交員の社会保険料を

一部負担しなければならなくなります。

 

 

保険代理店は,これまでなかった,

社会保険料などの費用負担が生じるので,

どこかで費用を圧縮したいと考えます。

 

 

そこで,保険外交員の給料から,

パソコンのキーボードの購入代金,

プリンター代,パソコンシステム使用料,名刺代など,

保険代理店が負担すべき費用について,

さまざまな名目で控除しているようです。

 

 

また,リーズという見込み客を割り当ててもらう費用も,

給料から天引きされていたようです。

 

 

保険に関心のある消費者を5,000円の商品券などで勧誘し,

その見込み客に対して,保険外交員が営業をかけるのです。

 

 

保険になにも関心がない人よりも,

商品券で勧誘されてたとはいえ,

保険に関心のある人に営業をかけた方が,

保険契約の締結につながる確率はあがることから,

リーズというものが利用されているようです。

 

 

とはいえ,商品券だけもらって契約しない見込み客もいますので,

リーズの割当を受けたからといって,

保険契約の締結につながるわけでもありません。

 

 

 

 

このリーズの割当を受けるのに費用がかかり,

給料から天引きされるのです。

 

 

保険外交員が保険契約を獲得して,

売上を伸ばせればいいのですが,売上が少ないと,

給料よりも費用が大きくなり,それが借金になるというのです。

 

 

このような保険外交員の借金が積み重なると,

退職したくても,借金の返済ができないので,

辞めさせてもらえないという悪循環になるのです。

 

 

しかし,給料から,会社にかかる費用を勝手に天引きすることは,

労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に違反します。

 

 

賃金全額払の原則は,労働者に賃金の全額を確実に受け取らせて,

労働者の生活が脅かされないように保護するために導入されました。

 

 

この賃金全額払の原則から,会社は,

労働者に対して請求権をもっていたとしても,

一方的に賃金と相殺することは禁止されています。

 

 

さらに,労働者が自由な意思に基づいて

賃金との相殺に合意することは禁止されていませんが,

この労働者の合意は,自由な意思に基づいてされたものと

認められるに足りる合理的な理由が客観的に存在する時に

限り認められ,厳格かつ慎重に判断されます。

 

 

そのため,保険外交員の給料から,

保険代理店の費用が天引きされていることについて,

保険外交員が自由な意思に基づいて合意していない限り,

無効となります。

 

 

石川県内の保険外交員の搾取被害については,

私が担当させていただきますので,

保険外交員の給料からの天引き,借金を背負わされる,

退職させてもらえないなどのご相談があれば,ご連絡ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

正社員と非正規雇用労働者の賞与の格差は不合理か?

2019年2月15日,大阪医科大学の元アルバイト労働者が,

アルバイト労働者には,賞与が支給されないなどの待遇格差は

労働契約法20条に違反するとして,大学に対して,

差額の支給を請求した事件の控訴審判決がくだされました。

 

 

この判決では,アルバイト労働者に対して,

賞与を支給しないことが不合理であると判断されました。

 

 

非正規雇用労働者に対して,賞与を支給するべきだと判断した

画期的な判決であり,今後の,非正規雇用労働者と正社員の

賃金格差の裁判に与える影響は大きいと思います。

 

 

 

 

本日は,この大阪医科薬科大学の大阪高裁判決について解説します。

 

 

まず,労働契約法20条は,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に相違がある場合,業務の内容,業務に伴う責任の程度,

職務の内容及び配置の変更の範囲,その他の事情を考慮して,

その相違が不合理であってはならないと定められています。

 

 

おおざっぱに言えば,正社員と非正規雇用労働者が,

同じ仕事をしているなら,同じ労働条件にしましょうということです。

 

 

労働契約法20条の趣旨は,非正規雇用労働者については,

正社員と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく,

両者の労働条件の格差が問題となってきたことをふまえて,

非正規雇用労働者の公正な処遇を図るため,

その労働条件につき,期間の定めがあることにより

不合理なものとすることを禁止したことにあります。

 

 

さて,大阪医科大学の事件では,正社員には,

通年で4.6ヶ月分の賞与が支給され,契約社員には,

正社員の賞与の8割に当たる額の賞与が支給されていましたが,

原告のアルバイト労働者には,賞与は支給されていませんでした。

 

 

そのため,アルバイト労働者に全く賞与を支給しないのは

不合理であるとして争われたのです。

 

 

 

 

ここで,労働契約法20条違反について争われた裁判では,

問題となる手当などの趣旨や性質を詳細に検討して,

不合理か否かが判断されてきました。

 

 

そして,賞与とは,会社業績や労働者の勤務成績によって

変動することが多く,支給対象期間における労働の対償としの性格

だけでなく,功労報奨的な意味や生活補填的な意味も含まれ,

労働者の労働意欲を高めるインセンティブという性質もあります。

 

 

この賞与の性質のうち,労働意欲を高めるインセンティブの側面

を重視すれば,長期雇用へのインセンティブを与えるものとして,

正社員にだけ賞与を支給しても不合理とはいえないという方向に傾き,

労働の対償という側面を重視すれば,正社員にだけ賞与を

支給することは不合理であるという方向に傾きます。

 

 

そこで,大阪医科大学の賞与がどのような性質のものかが

検討されたところ,基本給にのみ連動するものであり,

労働者の年齢や成績に連動するものではなく,

大学の業績にも一切連動しておらず,大阪医科大学の賞与は,

賞与算定期間に就労していたことそれ自体に対する

対価としての性質を有するものと判断されました。

 

 

そうであるなら,フルタイムのアルバイト労働者に対して,

額の多寡があるにせよ,全く支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

 

 

もっとも,大阪医科大学の賞与には,

付随的には長期雇用へのインセンティブという趣旨も含まれており,

正社員とアルバイト労働者とでは,実際の仕事内容も

採用の際に求められる能力にも相違があり,

アルバイト労働者の賞与算定期間における功労も相対的に低いことから,

アルバイト労働者の賞与の金額を正社員と同額にしなければ

不合理とまではいえず,正社員の賞与の60%を下回る

支給しかしない場合に不合理になると判断されました。

 

 

なぜ,アルバイト労働者に正社員の賞与の60%を支給すれば

不合理にならないのかについて不明な点はありますが,

正社員とアルバイト労働者の仕事内容が異なっているものの,

アルバイト労働者に賞与を全く支給しないのはおかしいとして,

バランスをとったのだと考えられます。

 

 

非正規雇用労働者に対して,

賞与を支給すべきとした画期的判決であり,

非正規雇用労働者の格差是正に一歩前進したと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者は会社の調査に協力しなければならないのか?

労働者が会社の経費を不正に使用するなどの

懲戒処分に該当する行為(非違行為といいます)をした場合,

会社は,労働者の非違行為の有無を調査します。

 

 

経費の不正使用であれば,具体的には,

領収書や会計帳簿を税理士にチェックしてもらい,

お金の流れにおかしいところがないかを確認したり,

他の労働者の聞き取りを行います。

 

 

 

 

客観的に手堅い証拠を固めた後に,

非違行為をしたと疑われる労働者に

事情を聴取することになると思われます。

 

 

このような調査を経て,会社は,非違行為があったのか,

あったとしたらどのような懲戒処分とするのかを決定します。

 

 

それでは,会社が懲戒処分を検討すための調査をする場合に,

労働者は,会社の調査に応じなければならないのでしょうか。

 

 

この論点について争われた富士重工事件の

最高裁昭和52年12月13日判決では,

違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため,

事実関係の調査をすることができることは,

当然のことといわなければならない」と判断されました。

 

 

また,ドコモCS事件の東京地裁平成28年7月8日判決では,

「労働者は自身の労働契約上の義務に違反する行為に関し,

使用者が調査を行おうとするときは,

その非違行為の軽重,内容,調査の必要性,その方法,態様等に照らして,

その調査が社会通念上相当な範囲にとどまり,

供述の強要その他の労働者の人格・自由に対する

過度の支配・拘束にわたるものではない限り,

労働契約上の義務として,その調査に応じ,

協力する義務がある」と判断されました。

 

 

 

 

ようするに,非違行為をした労働者は,

会社の調査に協力する義務を負うのが原則といえます。

 

 

そして,非違行為をした労働者が,会社の調査の過程で,

うそをついたり,積極的に調査を妨害する行為をした場合は,

会社との信頼関係を悪化させるので,会社が懲戒処分を決める上で,

労働者にとって不利益に評価されてしまうのです。

 

 

そのため,非違行為をしたことに争いがない場合には,

労働者は,素直に会社の調査に応じた方が,

自分の身を守ることにつながるといえそうです。

 

 

次に,非違行為をした労働者ではない,その他の労働者には,

会社の調査に応じる義務があるのでしょうか。

 

 

この論点について,富士重工事件の最高裁判決では,

①当該労働者の職責に照らして,

調査に協力することが職務内容になっている場合,または,

②調査対象である非違行為の性質・内容,

非違行為見聞の機会と職務執行との関連性,

より適切な調査方法の有無などを総合判断して,

労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると

認められる場合には,調査に協力する義務はありますが,

それ以外の場合には調査に協力する義務はないと判断されました。

 

 

ようするに,①非違行為をした労働者を監督する立場にある

上司の場合や,②防犯カメラなどがなく,

非違行為を目撃した労働者が一人しかおらず,

非違行為を証明するためには,目撃した労働者の証言が必要な場合

などには,調査に協力する義務はありますが,そうでないなら,

一般の労働者には調査に協力する義務はないことになります。

 

 

非違行為をしていない労働者は,

会社の調査に無理に協力する必要はありませんが,

非違行為をした労働者に対して同情する理由がないのであれば,

通常は会社の調査に協力することがほとんどだと思います。

 

 

非違行為をした労働者が,会社から調査を受けており,

どのように対応すればいいか迷った場合には,

早急に弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます

降格による賃金減額に理由はあるのか?

会社における長時間労働やパワハラが原因で体調を崩し,

一定期間休職した後,職場に復帰したところ,

会社から降格を告げられて,給料が減額されてしまったとします。

 

 

せっかく,体調が回復して,仕事ができることになったのに,

明確な理由もなく,給料が減額されるのでは,労働者は,納得できません。

 

 

このような場合,労働者は,どのようにして

降格を争っていけばいいのでしょうか。

 

 

本日は,育児休業後に復職したところ,

担当職務を変更されて減給されたことが違法であると

争われたコナミデジタルエンタテインメント事件を紹介します

(東京高裁平成23年12月27日判決・労働判例1042号15頁)。

 

 

 

 

この事件では,育児休業から復職後に

役割グレードが引き下げられて,

役割報酬が550万円から500万円に減額され,

さらに成果報酬がゼロと査定されて,

年俸が育休前の640万円から,

復職後に520万円に引き下げられたのです。

 

 

この事件のように,労働者の組織における職務の価値や

職務遂行上の責任・権限の大きさである役割の等級によって,

労働者を格付けする制度を職務・役割等級制度といいます。

 

 

この事件では,役割グレードが報酬グレードと連動していることを

定めた就業規則などの根拠規定はなく,会社は,労働者に対して,

役割報酬の大幅な減額を生じるような役割グレードの変更が

なされることについて具体的な説明をしていませんでした。

 

 

その結果,役割報酬の引き下げは,労働者にとって

最も重要な労働条件の一つである賃金額を

不利益に変更するものであり,就業規則に明示的な根拠もなく,

労働者の個別の同意もないまま,会社の一方的な行為

によって行うことは許されないと判断されました。

 

 

 

 

また,育児休業から復職後に成果報酬を

ゼロ査定としたことについては,

育児休業を取得したことを理由として

成果報酬を支払わないとすることであり,

不利益な取扱にあたるとされました。

 

 

育児介護休業法10条では,

労働者が育児休業をしたことを理由として,

不利益な取扱をしてはならないと規定されています。

 

 

会社には,育児休業を取得したことを

不利益に取り扱うことがないように,

前年度の評価を据え置くなどの適切な方法を

とるべき義務があるのです。

 

 

 

 

結果として,役割報酬の減額に伴う差額請求と,

成果報酬については慰謝料が認められました。

 

 

このように,降格によって賃金を減額された場合,

まずは,就業規則上の根拠を確認し,

就業規則に根拠規定がないのであれば,

会社に対して,賃金を減額した根拠を質問してみてください。

 

 

この質問に対する回答が不明確であれば,

なんの根拠もなく,降格して賃金を減額したとして,

賃金減額が無効になる可能性があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

職場における自由な人間関係を形成する自由

昨日,とても嬉しいことがありました。

 

 

毎日ブログを書き続けて9ヶ月を経過して,ついに,

私のブログを見て,法律相談に来れられた方が現れたのです。

 

 

 

 

その相談者の方は,次のようにおっしゃりました。

 

 

働く人に役立つ情報が記載されているので,

毎日チェックしています,ブラック企業対策として息子にも

ブログをすすめています,同じ職場の悩みをもっている同僚にも

ブログをすすめていますなど,本当にありがたいお言葉をいただきました。

 

 

ブログを毎日更新している者にとって,

自分のブログが誰かの役に立っていると実感できるときが,

最高に嬉しいのです。

 

 

毎日ブログを更新することが,

人の役に立つことが実感できましたので,

今後とも毎日ブログを更新していきます。

 

 

さて,本日は,職場における自由な人間関係を形成する自由

について解説したいと思います。

 

 

労働者が,会社から不合理な取扱を受けたため,

労働組合を結成しようとしたら,会社が,

他の労働者から労働組合結成の動きを聞き出すなどの監視をして,

労働組合の結成を抑制するような言動をしてきた場合,

労働者は,どのような対応をすればいいのでしょうか。

 

 

この問題について参考になるのが,

関西電力事件の最高裁平成7年9月5日判決です。

 

 

関西電力事件では,共産党員などの労働者に対して,

会社として,職場内外で尾行・待ち伏せなどによって監視し,

また,他の労働者と付き合わないように働きかけるなどして

孤立化を図りました。

 

 

 

 

また,労働者のロッカーを無断で開けて,

上着のポケットに入っていた手帳を取り出して,

その内容を写真撮影しました。

 

 

最高裁は,会社のこれらの行為について,

原告らの職場における自由な人間関係を形成する自由

不当に侵害するとともに,名誉やプライバシーを侵害するものであり,

労働者の人格的利益を侵害していることから,

不法行為に基づく損害賠償請求を認めました。

 

 

このように,会社が労働者を継続的に監視したり,

他の労働者との接触や交際を妨げることは,

労働者の職場における自由な人間関係を形成する自由

を侵害することになります。

 

 

労働者の職場における自由な人間関係を形成する自由については,

人間関係からの切り離しのパワハラを受けた場合に,

主張すると効果的だと考えます。

 

 

 

 

もっとも,会社の監視行為を証明するには,

会社の内部文書などを入手する必要があり,

困難なことが多いと思います。

 

 

また,労働組合を結成することを抑制しようとする会社の言動は,

労働組合法7条1号に規定されている不当労働行為に該当し,

違法になる可能性があります。

 

 

労働者としては,会社が労働組合結成の準備段階において,

労働組合つぶしを仕掛けてくるおそれがありますので,

会社側の人物の言動を録音するか,メモするなどして記録に残し,

不当な配転や解雇については,争うことを検討するべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

自分が源泉

鈴木博氏の「自分が源泉~ビジネスリーダーの生き方が変わる~

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

タイトルとなっている,自分が源泉とは,

すべての結果は自分が創りだしている!という立場をとること」です。

 

 

とても自分が創り出したとは思えないことも含めて,

すべてを自分が創っているとしたら,

という立場で結果と向き合い,結果を受け取るということです。

 

 

例えば,社長が,従業員が自分の言ったとおりに

仕事をしてくれないと考えていたとしたら,

従業員の勤務態度を自分が創っているとしたら,と捉えてみるのです。

 

 

そうすると,自分の指示の仕方があいまいだったから

従業員が動いてくれないのか,日ごろの従業員の働きぶりに

感謝すれば従業員は動いてくれるのか,などと思考が動き出し,

自分の力で解決できるという選択肢が生まれます。

 

 

自分で創った結果は,自分で創りなおせる

と考えられるようになれます。

 

 

すべての結果を自分が創ったという立場を取るということは,

すべての結果への影響力とパワーが自分自身の

手元にあるということなのです。

 

 

このように,自分が源泉で考えると,

結果を前進させるための気づきを得られると考えられます。

 

 

 

 

具体的には,次のステップで思考します。

 

 

まず,結果を「これはこれ」と捉え,

その事実をあるがままに認めます。

 

 

次に,「これは私が創った」という立場をとります。

 

 

最後に,「この結果を持って,ここからどのように行動し,

何を創り出すか」を考えます。

 

 

このように思考することで,次の目標の達成のために

新しく動き出し始めることができます。

 

 

自分が源泉の力を育むためには,「完了」を生きる必要があります。

 

 

「完了」とは,起こっている状況やそのとき感じる自分の思いや

感情に対して,「そのままでいいという許可」を与えることです。

 

 

私達は,過去の出来事や周囲の人の自分への言動などに囚われて,

気づかないうちに,自分の時間がそれらの反応に支配されて,

貴重な時間が使われてしまっています。

 

 

完了とは,自分が囚われていることに気づき,

「今ここ」に集中するということです。

 

 

 

人間は,自我を守るために,失敗しないように行動するので,

周囲で起こることに刺激を受けて,自動的に反応します。

 

 

そのため,人間は,結果がでないと言い訳をしたり,

人のせいにしたがったりします。

 

 

このような反応は,人間である以上仕方がないことであり,

このような反応があってもいいと自分に許可を与えることによって

大きなパワーが生み出されるのです。

 

 

起きた出来事や自分の感情について,

「これはこれでOK」と完了することで,

自分を囚われの状態から自由にして,

集中力を高めることができるのだと思います。

 

 

「自分が源泉」や「今ここ」,「これはこれでOK」

と自分自身の会話をすれば,結果に対する捉え方が変わり,

ストレスが軽減され,より自分の力が発揮される

ことになるのだと考えました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

バイトテロに対する懲戒処分

昨日のブログに引き続き,本日は,

バイトテロに対する懲戒処分について検討します。

 

 

アルバイトの労働者が,ツイッター,インスタグラムなどの

SNSに勤務先の商品(特に食品)や什器を使用して

悪ふざけを行う様子の動画を投稿して,

それが拡散していった場合,会社は,

そのアルバイトを懲戒処分することができるのかという問題です。

 

 

 

 

まず,会社が労働者を懲戒するためには,

就業規則に懲戒の対象となる事由と懲戒処分の種類が定められ,

その就業規則が周知されていなければなりません。

 

 

そのため,会社の就業規則に,労働者が会社の信用を毀損したり,

会社の器物を損壊した場合には,懲戒処分を科すことができるという

規定が存在していなければ,会社は,労働者を

懲戒処分することができないのです。

 

 

次に,懲戒処分の対象とされた労働者の行為が

就業規則所定の懲戒事由に該当し,懲戒処分に

「客観的に合理的な理由」があると認められることが必要です

(労働契約法15条)。

 

 

この要件で問題になるのは,労働者の私生活上の行動を

理由として懲戒処分ができるかというものです。

 

 

労働者は,労働契約により,勤務時間中は

職務に専念する義務を負っていますが,

勤務時間外の時間をどのようにして過ごすかは,

労働者の自由であり,会社は,仕事に無関係な

職場外における労働者の行為を規制することはできないのです。

 

 

そのため,労働者の私生活上の行動は,

原則として会社の規制に服することはなく,

会社の事業活動に直接関連を有するものや,

会社の社会的評価の毀損をもたらすもののみが

例外的に懲戒の対象となるにすぎないのです。

 

 

 

 

そして,懲戒処分が,「労働者の行為の性質及び態様

その他の事情に照らして」,「社会通念上相当であると」

認められる必要があります(労働契約法15条)。

 

 

ようするに,労働者の懲戒該当事由に対して,

懲戒処分が重すぎてはならないということです。

 

 

これを,懲戒処分の相当性の要件といい,

労働者が懲戒処分を争う際には,

相当性の要件でせめるのが効果的です。

 

 

労働者の私生活上の行動に対する懲戒処分については,

厳格に判断される傾向があり,「当該行為の性質,情状のほか,

会社の事業の種類,態様・規模,会社の経済界に占める地位,

経営方針及びその従業員の会社における地位・職種」を総合判断して,

「会社の社会的評価に影響を及ぼす悪影響が相当重大であると

客観的に評価される」ことが要求されます(日本鋼管事件・

最高裁昭和49年3月15日判決・労働判例198号23頁参照)。

 

 

労働者による不適切な動画の投稿が

勤務時間以外の私生活の中で行われた場合,

動画の内容が会社の業務内容に関するものであり,

会社の社会的評価を毀損するものであれば,

懲戒処分は有効となると考えられます。

 

 

とくに,くら寿司やセブンイレブンのバイトテロの場合,

SNSで拡散された上に,テレビなどのマスコミにとりあげられて,

消費者に対して,くら寿司やセブンイレブンが不衛生であるとの

印象を与えて,信用を毀損したといえますので,

懲戒処分は有効になると思います。

 

 

 

 

もっとも,バイトテロに対して最も重い懲戒解雇とした場合,

当該アルバイトに過去に処分歴がなく,

長時間労働やパワハラを受けるなど劣悪な労働環境であったり,

労働者に対するSNSの利用についての教育が杜撰であった

という事情があれば,場合によっては,

懲戒解雇は重すぎるとして無効になる可能性もあると思います。

 

 

懲戒解雇の一つ手前の諭旨解雇に

とどめておいた方が無難のように思います。

 

 

とにかく,バイトテロは,重い懲戒処分を科される

危険がありますので,労働者は,決して,

バイトテロのような行為はしないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

バイトテロに対する損害賠償請求

くら寿司のアルバイト店員が,魚をゴミ箱に捨てた後,

まな板に戻して調理しようとする動画や,

セブンイレブンのアルバイト店員がおでんのしらたきを口に入れて,

その後に出す動画がSNSへ投稿され,大きな問題となりました。

 

 

ウィキペディアによりますと,このように,

主にアルバイトなどの非正規雇用で雇われている

飲食店小売店の従業員が、勤務先の商品(特に食品)や

什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、

SNSに投稿して炎上する現象をバイトテロと呼ぶようです。

 

 

 

 

このような動画が拡散されますと,会社のイメージは悪化し,

消費者は,他の店員も同じような不適切な行為を

しているのではないかと疑い,その会社から物を買うことをためらい,

会社の売上が減少するリスクが生じます。

 

 

そこで,くら寿司やセブンイレブンは,再発防止のために,

不適切な動画を投稿した元アルバイト店員に対して,

損害賠償請求をする検討を始めたようです。

 

 

本日は,会社のバイトテロに対する損害賠償請求が

認められるのかという問題について解説します。

 

 

この問題は,会社の労働者に対する

損害賠償請求が認められるかという論点です。

 

 

 

労働者が労働契約に基づく義務に違反して会社に損害を与えた場合,

会社は,労働者に対して,債務不履行に基づく損害賠償請求ができ,

労働者が違法に会社に損害を与えた場合,会社は,労働に対して,

不法行為に基づく損害賠償請求ができます。

 

 

もっとも,会社から労働者に対する損害賠償請求は,

資力に乏しい労働者にとって酷な結果となることから,

会社と労働者の経済力の差や,労働者の活動から利益をえる会社は

そこから生じるリスクも負担すべきという考え方(報償責任といいます)

を考慮し,損害の公平な分担を図るために,

裁判例の多くは,一定の範囲で労働者が負う責任を限定しています。

 

 

まず,労働者に業務遂行上の注意義務違反があっても,

それほど重大なミスとはいえない場合には,

労働者に対する損害賠償請求は発生しないと考えられます。

 

 

次に,労働者に重大なミスがあったとしても,

労働者側の宥恕すべき事情や会社側の責任を考慮して,

労働者が負担すべき損害賠償額が軽減されることがあります。

 

 

茨城石炭商事事件の最高裁昭和51年7月8日判決では,

事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,

労働条件,勤務態度,加害行為の態様,

加害行為の予防若しくは損失の分散についての会社の配慮の程度

その他諸般の事情に照らして」,

労働者の損害賠償額が4分の1に減額されました。

 

 

他方,ミスといえないような,

故意による悪質な行為については,

労働者は,基本的に全額の損害賠償義務

を免れることはできないと考えられます。

 

 

くら寿司やセブンイレブンのバイトテロの場合,

業務妨害罪や器物損壊罪などの犯罪に該当する可能性があり,

故意による悪質な行為であるため,

会社が被った損害の全額を賠償しなければならないと考えられます。

 

 

 

もっとも,アルバイトが非常に劣悪な労働条件のもとで酷使されており,

その腹いせにやってしまったという,労働者側に同情すべき点があったり,

会社のアルバイトに対する教育指導が杜撰であったなどという

事情があれば,場合によっては損害賠償額が

減額される余地があるかもしれません。

 

 

また,バイトテロによって,会社にどれだけの損害が

発生したのかという点も争点になると予想されます。

 

 

仮に,会社が,会社の売上が減少したことを損害だと主張したとしても,

競合他社が自社よりも優れたサービスを提供しだしたので

売上が減少したなどという他の要因があれば,

バイトテロの行為と売上の減少との間に因果関係があるのかが

不明になってくるため,因果関係の証明ができるのか

という問題が生じます。

 

 

バイトテロの裁判が始まれば,損害額が減額されるか,

会社が主張する損害とバイトテロの行為との間に

因果関係が認められるのかに注目したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

自己都合退職か会社都合退職かの判断基準とは?

会社を退職する場合,自己都合退職か会社都合退職か

が問題となることがあります。

 

 

 

 

雇用保険の基本手当を受給する際,会社都合退職ですと,

給付制限がなく,自己都合退職の場合よりも,

基本手当の給付日数において優遇されています。

 

 

また,退職金についても,自己都合退職の場合には,

会社都合退職の場合よりも,退職金の支給額を減額する

という退職金規定をもうけている会社も多いです。

 

 

ところが,退職金規定に,自己都合退職については

退職金を減額するという条項があったとしても,

どのような場合に自己都合退職になるのかについて

明確な基準を定めている会社は少ないです。

 

 

とくに,給与の大幅な切り下げを通告されたり,

遠隔地配転を命じられて退職するに至った場合,

労働者としては,会社の都合によって退職を余儀なくされた

と考えるのですが,退職に際して,「一身上の都合により」

などと記載された退職届を提出させられるケースも多く,

退職届を形式的にみると自己都合退職となっているときに

トラブルに発展することがあります。

 

 

それでは,どのような基準をもって

自己都合退職と会社都合退職とを

区別するべきなのでしょうか。

 

 

結論としては,退職に至る具体的事情を

総合的に判断して決することになります。

 

 

すなわち,労働者が勤務を継続することに障害があったか否か,

その障害が使用者,労働者のいずれの責任に帰せられるか,

退職の理由が使用者,労働者いずれの支配領域内で

起きた事情によるものか,労働者の自由な判断を困難にする事情が

使用者側に認められるか,といった諸要素を勘案して,

総合的に判断することになります。

 

 

具体的な事件で検討してみましょう。

 

 

労働者が会社に対して,自己都合退職の退職金と

会社都合退職の退職金との差額,及び,

自己都合退職の雇用保険の基本手当と

会社都合退職の雇用保険の基本手当との差額について,

損害賠償請求して,これが認められたゴムノイナキ事件を紹介します

(大阪地裁平成19年6月15日判決・労働判例957号78頁)。

 

 

この事件の労働者は,顧客からのクレームが多いことから,

会社から退職勧奨を受けて,退職願の届出を催促されて,

会社から言われるがまま,一身上の都合により退職するとの

退職願を作成して,提出しました。

 

 

 

会社が,自己都合退職として退職金を支給し,

雇用保険の手続をしたことから,労働者は,

会社都合退職であるとして争いました。

 

 

判決では,労働者が子供の学費や住宅ローンの状況からすれば,

全く自発的に退職を申し出るとは考えがたいこと,

労働者は自分から退職願を作成して持参したのではなく,

会社主導で作成されたこと,会社が退職願を直ちに受理して,

翻意を促すことも引き留めることも一切していなかったこと,

といった事情を考慮して,労働者の退職は

会社都合退職にあたるとされました。

 

 

その上で,会社都合退職として処理すべきところを,

自己都合退職によるものとして退職金を計算し,

離職票を作成するなどの事務手続を行ったとうい限度で,

会社に過失があったとして,会社の行為は不法行為にあたるとされました。

 

 

結果として,労働者には,退職金の差額116万円と

雇用保険の基本手当の差額159万12000円

の請求が認められたのです。

 

 

このように,一身上の都合により退職するという

退職届を会社に提出していたとしても,

退職に至る経緯を検討すれば,会社都合退職になる可能性があり,

そうなれば,会社都合退職と自己都合退職における退職金と

雇用保険の基本手当の差額を請求できる可能性があるのです。

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社の承諾がないと退職金を請求できないのか?

パワハラを受けたり,長時間労働が原因で,

これ以上会社で働くことはしんどいと思い,

退職届を提出して,会社を退職しました。

 

 

 

 

会社を退職した後,退職金を請求したところ,

会社から,退職金規定には,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないと記載されているので,

退職金を支払わないと言われたとします。

 

 

労働者としては,会社に対して,きちんと理由を説明して,

退職届を提出しており,会社の承諾をもらって退職しないと

退職金をもらえないのでは,パワハラを受けたり,

長時間労働を強いられる職場に拘束させられてしまうので,

納得できません。

 

 

退職金規定に,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないという記載がある場合,

会社から退職について承諾していないと言われたら,

労働者は,退職金を請求できないのでしょうか。

 

 

 

 

まず,会社に退職金規定があり,

退職金の支給基準が明確に定められている場合,

労働者は,会社に対して,退職金を請求することができます。

 

 

逆に言えば,会社に退職金規定などの退職金の根拠となる規定が

なにもない場合には,労働者は,会社に対して,

退職金を請求することはできません。

 

 

退職金規定に退職金の支払時期が定められていない場合,

会社は,労働者の退職金の請求から7日以内に

退職金を支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。

 

 

会社が労働者の請求から7日以内に退職金を支払わない場合,

労働者は,退職金の請求から7日経過後に,

会社に対し,遅延損害金を請求できます。

 

 

次に,正社員の労働者は,退職届を提出して2週間経過すれば,

いつでも辞めれますし,2週間について,

年次有給休暇を取得すれば,会社に出勤することなく,

会社を辞めることができるのです。

 

 

すなわち,労働者には退職の自由が認められているのです。

 

 

そうであれば,会社が退職を承諾しない限り,

労働者が退職金を全く受領できないという制度では,

労働者は,労働契約の継続を望まないのであれば,

退職金受給を全て断念しなければらないということになり,

退職金の受給を望むのであれば,不本意にも労働契約を

継続しなければならないという不合理な結果になります。

 

 

 

そのため,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないという規定は,

労働者の退職の自由を不当に制限しており,無効となります

(東花園事件・東京地裁昭和52年12月21日判決・

労働判例290号35頁参照)。

 

 

よって,労働者は,会社から,会社の承諾なく退職しているので

退職金を支払わないと言われても,ひるむことなく,

会社に対して,退職金の全額と遅延損害金を請求するべきです。

 

 

退職金を請求する際には,会社の退職金規定を入手して,

計算根拠や,不支給や減額の条項があるかを

チェックするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。