上司の叱責はどのような場合に違法なパワハラとなるのか?

パワハラに関する法律相談を受けますと,

次のことに頭を悩まされます。

 

 

どのような言動が違法なパワハラと認定されるのか。

 

 

先日,閣議決定された,パワハラを禁止する法案では,

パワハラの定義を,「職場において行われる優越的な関係を背景とした

言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること」としています。

 

 

 

 

法律である以上,文言がある程度抽象的にならざるをえず,

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」とは,

具体的にどのような言動が,これにあたるのかについて,

ケースバイケースで判断していくしかないのです。

 

 

「給料泥棒」など人格を否定する暴言は,

違法なパワハラにあたることで問題ないのですが,

部下のミスに対して上司が厳しく叱責した場合に,

違法なパワハラにあたるかは,判断に悩むことが多いです。

 

 

本日は,上司の部下に対する叱責が違法なパワハラにあたるかが

争われたゆうちょ銀行パワハラ自殺事件を紹介します

(徳島地裁平成30年7月9日判決・労働判例1194号49頁)。

 

 

この事件では,労働者が上司からパワハラを受けて自殺したとして,

遺族が会社に対して,損害賠償請求をしました。

 

 

裁判所は,自殺した労働者は,上司から日常的に強い口調で

叱責を繰り返し受けており,名前を呼び捨てで呼ばれるなど

されていたことから,部下に対する指導として

相当性には疑問があるとしました。

 

 

しかし,部下の書類作成のミスを指摘して改善を求めることは

会社のルールとされており,上司としての業務であり,

実際,自殺した労働者は頻繁に書類作成のミスをしていたことから,

日常的に叱責が継続したのであり,上司が何ら理由なく,

自殺した労働者を叱責したことはないと判断されました。

 

 

 

 

また,上司の叱責の具体的な発言内容は,

自殺した労働者の人格的非難に及ぶものではなかったと判断されました。

 

 

そのため,本件事件では,上司の叱責が

違法なパワハラとは認定されませんでした。

 

 

何の理由もないのに部下を叱責したり,

「バカ」,「アホ」,「まぬけ」などの人格を否定する発言があった場合には,

違法なパワハラと認定されやすいのですが,

労働者にミスがあり,それが原因で叱責され,

人格を否定する発言がないのであれば,

上司の叱責は,必要かつ相当な範囲内と評価されて,

違法なパワハラとはならないと考えられます。

 

 

もっとも,会社には,労働者が生命や身体の安全を確保しつつ,

働くことができるように配慮する義務を負っています。

 

 

これを安全配慮義務違反といいます。

 

 

もう少し具体的にすると,会社は,

労働者の業務を管理するに際し,

業務遂行に伴う疲労や心理的負荷が過度に蓄積して

その心身の健康を損なうことがないように

注意すべき義務があるということです。

 

 

本件事件では,自殺した労働者は,

わずか数ヶ月で異動の希望をして,

その後も継続して異動を希望しており,

2年間で体重が15キロも減少するほど,

体調不良の状態が明らかであり,

体調不良や自殺願望の原因が上司との

人間関係に原因があることは容易に

想定できたと判断されました。

 

 

そして,会社は,自殺した労働者の執務状態を改善し,

心身に過度の負担が生じないように異動を含めて

検討すべきであったにもかかわらず,

担当業務を軽減させただけで,

他に何の対応もしなかったとして,

安全配慮義務違反が認められました。

 

 

 

 

ここでのポイントは,自殺した労働者は,

外部通報や内部告発をしていなかったのですが,

会社には,自殺した労働者が何らかの

人間関係のトラブルを抱えていたことを

容易にわかったはずであるとして,

安全配慮義務違反を認めたことです。

 

 

労働者が会社内部の相談担当部署に相談にいっていなくても,

異動の希望を出していたり,客観的に体調不良がわかれば,

会社には,労働者が人間関係でトラブルを抱えていたと

予見が可能であったと判断される余地があるということです。

 

 

どのような場合に,違法なパワハラと評価されるのか,

違法なパワハラがなかったとしても,

会社に安全配慮義務違反が認められるかについて,

検討するにあたり参考になる裁判例ですので,紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業時間の罰則付き上限規制が始まります2

昨日に引き続き,残業時間の罰則付き上限規制について解説します。

 

 

昨日の復習になりますが,1日8時間を超えて

労働時間を延長する場合,36協定による原則的な

時間外労働の限度時間は1ヶ月45時間,

1年に360時間までとなっています。

 

 

そして,例外として,「通常予見することのできない業務量の

大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」

には,1年のうち6ヶ月に限り,1ヶ月45時間,

1年360時間を超えて残業させることが可能ですが,

1ヶ月の時間外労働と休日労働の合計が100時間を超えると,

会社に,6ヶ月以下の罰金若しくは30万円以下罰金が科せられます。

 

 

 

 

あくまで原則として残業の上限は1ヶ月45時間なので,

36協定には,臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合を

できる限り具体的に定める必要があり,

「業務上やむを得ない場合」などの抽象的な文言では,

恒常的な長時間労働をまねくおそれがあることから,

このような表現は避けるべきです。

 

 

また,限度時間を超えて労働させられる上限時間についても,

1ヶ月100時間に近づけるのではなく,

1ヶ月45時間に限りなく近づける必要があります。

 

 

そのため,労働者は,今後,36協定が改定される際に,

1ヶ月45時間を超えて働かされる場合はどのような時か,

1ヶ月45時間を超える上限時間は何時間かについて,

チェックして,なるべく原則どおり1ヶ月45時間となるように

会社にはたらきかけるようにしましょう。

 

 

さて,この残業時間の罰則付き上限時間が

適用されない業種があります。

 

 

それは,専門的,科学的な知識,技術を有する者が

従事する新技術,新商品等の研究開発業務です。

 

 

 

そのため,新技術・新商品等の研究開発業務については,

残業時間の上限規制がなく,事実上,

長時間労働が是認されてしまいます。

 

 

また,他にも,残業時間の罰則付き上限規制の

適用が猶予される業種があります。

 

 

建設事業については,5年間,

残業時間の罰則付き上限規制の適用が猶予されます。

 

 

もっとも,災害時の復旧及び復興の事業については,

1ヶ月100時間未満,2~6ヶ月平均で80時間以内の

上限規制は適用されません。

 

 

自動車の運転業務については,5年間,

残業時間の罰則付き上限規制の適用が猶予され,

5年後に1年間960時間以内の上限規制が導入される予定です。

 

 

医師については,5年間,

残業時間の罰則付き上限規制が猶予されました。

 

 

医師の残業時間規制については,先日,

報告書が発表されましたので,

別の機会にブログで紹介します。

 

 

実は,4月1日から施行された残業時間の罰則付き上限規制は,

中小企業については,適用が1年間猶予されていて,

来年の4月1日から導入されます。

 

 

ここでいう中小企業とは,資本金の額又は出資の総額が3億円以下

(小売業又はサービス業については5千万円以下,

卸売業については1億円以下),及び,

常時使用する労働者の数が300人以下

(小売業については50人以下,

卸売業又はサービス業については100人以下)の会社のことです。

 

 

そのため,多くの中小企業では,

来年4月1日から残業時間の罰則付き上限規制が導入されます。

 

 

しかし,大企業であっても,ここまで説明してきた

残業時間の上限時間を守れているのか疑問です。

 

 

 

 

日立製作所の小会社日立プラントサービスでは

1ヶ月の時間外労働が100時間を超えていたのに,

残業代が未払であったとして,

富山労働基準監督署から是正勧告を受けていました。

 

 

日産自動車では,管理監督者の労働者に対して

350万円余りの未払残業代を支払うよう命じた判決がでました。

 

 

KDDIでは,1ヶ月90時間を超える時間外労働をした

労働者の過労自殺がきっかけで,

労働基準監督署から是正勧告を受けて,

社内調査をした結果,4600人の労働者に対して,

合計6億7千万円の未払残業代があったようです。

 

 

このように著名な大企業であっても,

労働基準法を守っていなかったのです。

 

 

残業時間の罰則付き上限規制が導入されると,会社は,

労働者の労働時間をしっかりと管理し,

適切に残業代を支払わないと,

手痛いしっぺ返しをくらうおそれがあります。

 

 

また,1ヶ月45時間を超える固定残業代も違法になる可能性がでてきます。

 

 

4月1日から導入された残業時間の罰則付き上限規制を契機に,

長時間労働が是正されていくことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業時間の罰則付き上限規制が始まります

2019年4月1日,新元号「令和」が発表され,

日本全体が新時代の幕開けを予感させる高揚感に包まれました。

 

 

 

 

季節は春で,新生活がスタートすることもあり,

昨日はわくわくする気分になりました

(石川県では雪が降りましたが・・・)。

 

 

新元号の発表と共に,昨日,重要な法令が施行されました。

 

 

昨年6月に成立した働き方改革関連法のうち

残業時間の罰則付き上限規制が,昨日施行されました。

 

 

本日は,残業時間の罰則付き上限規制について解説します。

 

 

まず,昨日よりも以前は,残業時間に上限はないに等しかったのです。

 

 

労働基準法32条では,1日8時間,1週間で40時間を超えて

労働させてはならないと規定されていますが,

36協定が締結されていれば,労働時間を延長し,

休日労働をさせることができます。

 

 

平成10年12月28日労働省告示第154号の基準において,

1ヶ月の時間外労働の限度を45時間,

1年の時間外労働の限度を360時間とすることが

定められていたのですが,この限度時間を超えて

労働時間を延長しなければならない特別の事情

(臨時的なものに限ります)が生じたときには,

限度時間を超えて時間外労働をさせてもよいことになっていました。

 

 

そして,特別の事情がなくても,1ヶ月45時間を超える

時間外労働が常態化しており,臨時的ではない恒常的な業務を

残業でこなしている実情があり,この基準がほとんど

守られていませんでした。

 

 

 

 

また,特別の事情の場合に限度時間を超えて

時間外労働をさせる場合の上限が定められておらず,

残業時間は青天井となっていたのです。

 

 

その結果,長時間労働が是正されないまま,

過労死や過労自殺に至る悲惨な事件があとを絶たず,

電通の過労自殺事件が大々的に報道され,

青天井の残業時間に規制をかけなければならない

ということになり,残業時間の罰則付き上限規制が導入されたのです。

 

 

長時間労働は,健康の確保だけでなく,

仕事と家庭生活の両立を困難にし,少子化の原因や,

女性のキャリア形成を阻む原因,

男性の過程参加を阻む原因となっており,

これを是正することで,ワークライフバランスを改善させ,

女性が仕事に就きやすくなることを目的としているのです。

 

 

 

 

具体的には,労働基準法36条が改正されて,

36協定による原則的な時間外労働の限度時間は

1ヶ月45時間,1年に360時間までと定められました

 

 

これは,上記の告示の基準を法律に格上げしたものです。

 

 

 

確認しておきたいのは,あくまで残業時間の限度は

1ヶ月で45時間,1年で360時間が原則であるということです。

 

 

もっとも,原則には例外があるものでして,

改正労働基準法36条5項において,

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い

臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合

において,次の例外が認められます。

 

 

①1ヶ月の時間外労働と休日労働の

合計の時間数の上限を100時間未満とする

 ②連続する2ヶ月,3ヶ月,4ヶ月,5月及び6ヶ月の

それぞれについて,1ヶ月当たりの時間外労働と休日労働の

合計の時間数の上限を80時間以内とする

 ③1年の時間外労働の時間数の上限を720時間以内とする

 

 

そして,①と②の基準を超過すると,

会社に対して6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

が科せられることになります。

 

 

 

 

また,1ヶ月45時間を超えて時間外労働をさせることができる

月数は,1年について6ヶ月以内とすることも

労働基準法に定められました(改正労働基準法36条5項)。

 

 

気をつけなければならないのは,

③の基準には,休日労働が規制の対象外となっており,

違反しても罰則がないことです。

 

 

そのため,ブラック企業が,休日労働を増やして規制を免れる

危険がありますので,労働者は,休日労働によって,

過労がたまらないように気をつける必要があります。

 

 

③の基準に休日労働を含めた上で,罰則で規制した方が,

わかりやすいのですが,なぜ,このように区別したのかはなぞです。

 

 

罰則が科される上限時間が100時間という

過労死ラインに設定されていたり,

③の基準に休日労働が含まれていないなど,

不十分な点もありますが,残業について初めて

罰則付きで規制されることになりますので,今後は,

長時間労働が是正されていく方向に進んでいくことになると思います。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラを巡る内紛を理由とする懲戒解雇

先日,ブログで紹介しましたが,パワハラを防止するための法律案

が閣議決定され,今後,会社は,パワハラを防止するための

措置を講じる必要がでてきます。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903257760.html

 

 

そのため,会社は,労働者からパワハラの相談を受けて,

調査をした結果,パワハラの事実があると判断すれば,

パワハラをした労働者に対して懲戒処分を

科すことを検討することになります。

 

 

しかし,この懲戒処分を適切に科さないと,

懲戒処分を受けた労働者から,懲戒処分の無効を主張されて,

裁判に発展していくこともあります。

 

 

本日は,パワハラを巡る内紛を理由になされた,

幼稚園の園長に対する懲戒解雇の効力が争われた,

学校法人名古屋カトリック学園事件を紹介します

(名古屋地裁岡崎支部平成30年3月13日判決・

労働判例1191号64頁)。

 

 

原告の園長は,ある職員に対して,送迎バスの添乗時に

保護者や園児に不遜な態度をとるなど,

振る舞いや勤務態度を問題視していました。

 

 

 

 

他方,ある職員は,原告の園長に対して,

幼稚園の運営が強引で独善的であるとか,

職員に対する原告の言葉の暴力がひどすぎると感じ,

原告に対して,批判的・反抗的な態度を示して,

原告と対立していました。

 

 

そのような対立状況の中,ある職員は,

幼稚園の経営者に対して,原告の園長から,

「給料泥棒」などの暴言を浴びせられたので,

園長を交代させてほしいという嘆願書を提出しました。

 

 

幼稚園の経営者は,原告を呼び出し,

嘆願書について説明を求め,原告に対して,

事態を収拾するように説得し,原告は,

これに応じて,職員に謝罪しました。

 

 

しかし,その後も原告の振る舞いが変わらないとして,

再度,園長交代の嘆願書が提出され,幼稚園の経営者は,

原告が嘆願書に記載された言動をしたと判断して,

原告を懲戒解雇しました。

 

 

 

 

懲戒解雇の理由は,

①幼稚園又は他の職員の名誉又は信用を傷つけること,

②いたずらに感情に走り,他の者を誹謗したり,排斥すること,

③職務の遂行が越権専断的となること,

に該当するということです。

 

 

裁判所は,①と②の懲戒理由について,被告は,

職員の嘆願書を根拠に,嘆願書記載の原告の言動があった

と判断しましたが,それを裏付ける客観的な証拠がないことから,

たやすく嘆願書記載の原告の言動があったとは認定できないとしました。

 

 

また,③の懲戒理由について,原告が職員に謝罪をして

事態の収拾が図られていたとして,

情状が極めて重いとはいえないとしました。

 

 

その結果,原告には,懲戒解雇に該当する行為をしたとはいえず,

懲戒解雇は無効となりました。

 

 

そして,原告の雇用期間があと2年間残っていたことから,

2年分の未払賃金の請求が認められました。

 

 

他方,原告は,懲戒解雇による精神的苦痛を被ったとして,

慰謝料の損害賠償請求をしていましたが,

裁判所は,解雇が無効であると判断されて,

未払賃金の支払いを受けることができるようになるので,

なお償われない精神的苦痛が残るとは認められないとして,

慰謝料請求は認められませんでした。

 

 

解雇事件において,未払賃金請求と一緒に

慰謝料の損害賠償請求をしても,

なかなか認められないのが現状です。

 

 

本件事件では,被告が,原告の園長のパワハラの有無を,

丁寧に調査せずに,一方当事者の主張のみを理由に

懲戒解雇をしてしまったがゆえに,裁判になって,

懲戒該当理由がなかったと判断されました。

 

 

今後,パワハラを巡る労使紛争が増加していくことが予想されますが,

会社は,パワハラの事実があったかなかったかについては,

入念に調査した上で,懲戒処分をくだしていく必要があります。

 

 

 

 

特に,懲戒解雇をする場合には,より慎重な調査が求められます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働条件を変更するための合意とは2~山梨県民信用組合事件~

会社から,賃金や退職金などの重要な労働条件を,

労働者にとって不利益に変更することに合意を求められた場合,

労働者はどうすればいいのでしょうか。

 

 

労働契約法8条により,労働条件を変更するためには,

労働者と会社の合意が必要になりますので,

労働条件の変更に納得できないのであれば,

労働者は,合意しなければいいのです。

 

 

しかし,会社から合意を求められて,これを拒否し続けると,

会社から冷遇されるのではないかと恐れてしまい,

労働者が合意しないというのは,なかなか大変なことです。

 

 

 

また,会社から,きちんとした説明がなく,

なんとなく合意してしまうというケースもあると思います。

 

 

労働者が自分に不利益な労働条件の変更に合意してしまった場合,

この合意を争うことはできないのでしょうか。

 

 

本日は,合意による労働条件の変更が争われた,

山梨県民信用組合事件を紹介します

(最高裁平成28年2月19日判決・労働判例1136号6頁)。

 

 

この事件では,信用組合の合併に際して,

退職金が大幅に削減されたのですが,労働者は,

退職金の大幅な削減に合意したのかが争点となりました。

 

 

事案が複雑なので,簡単に説明しますと,

信用組合の合併により,退職金の総額を従前の2分の1以下として,

さらに,退職金総額から厚生年金給付額及び企業年金還付額が

控除されることとなり,結果として退職金額が

0円となってしまったのです。

 

 

 

 

通常であれば,退職金が0円になるのであれば,

労働者は,そのような不利益な変更に合意しないのですが,

本件事件では,会社側から,退職金の変更に合意しないと,

合併を実現することができないなどと説明を受けていたため,

原告ら労働者は,同意書に署名押印してしまいました。

 

 

その後,原告ら労働者は,合併前の退職金規程に基づく

退職金の支払いを求めて裁判を起こしました。

 

 

最高裁は,労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合,

労働者が変更を受け入れる行為をしていても,

労働者が会社から使用されて指揮命令に服すべき立場に置かれており,

自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることから,

直ちに労働者の合意があったとみるのではなく,

労働者の合意については慎重に判断するべきであるとしました。

 

 

そして,「当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,

労働者により当該行為がされるに至った経緯及び態様,

当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,

当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,

判断されるべき」としました。

 

 

ようするに,労働者は,会社に比べて立場が弱く,

情報量が少ないので,労働者が自分にとって

不利益な労働条件の変更に合意していても,

その合意が有効となるかは,

慎重に判断されるということです。

 

 

 

本件事件では,合併による退職金の変更により,

自己都合退職の場合には退職金が0円になる可能性が高くなる

といった具体的な不利益の内容や程度について,

会社からの情報提供や説明が不十分であったとして,

最高裁は,高裁に審理を差し戻しました。

 

 

賃金や退職金が労働者に不利益に変更される場合で,

会社から,どれだけの金額が削減されるのかといった説明が

なされないまま,労働者が,不利益な労働条件の変更に合意しても,

その合意は成立していないと判断される可能性があります。

 

 

そのため,労働条件の不利益変更に合意してしまっても,

納得できない場合には,会社からの説明の状況や不利益の大きさ

を検討して,まだ争うことができるかを見極める必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

年次有給休暇付与の義務化が始まります

朝日新聞に,ベンチャー企業のユニークな休暇制度

が紹介されていましたので,シェアさせていただきます。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM3N656QM3NPLFA00Z.html

 

 

京都市にある農業ベンチャーの「坂ノ途中」では,

知り合いの農家を手伝ったり,農産物の販売イベントに参加するための

「ゴーグリーン休暇」を導入するようです。

 

 

 

 

東京のコンサルティング会社の「レリック」は,

1つの事業を成し遂げた時にとる「プロジェクトお疲れ様休暇」,

読書や課外活動にあてる「インプット休暇」,

家族や友人との懇親に使う「リレーションケア休暇」

など9種類の休暇を導入するようです。

 

 

大阪市のソフトウェア開発会社の「ロックオン」は,

年に1度9日間の連休をとり,休暇中は仕事関係の連絡を禁止する

「山ごもり休暇」を社員に義務付けているようです。

 

 

 

「坂ノ途中」と「レリック」の休暇は,

年次有給休暇とはならないようですが,会社としては,

有給の取得を増やすきっかけや,

休みをポジティブにとってもらう仕掛けとして導入するようです。

 

 

会社としては,独自の休暇制度や高い有給取得率の実績は,

労働者を採用するにあたってアピールポイントになるようです。

 

 

私も含めて日本人は,休むことがあまり上手ではない

と思われますので,このような休暇を導入する企業が増えていけば,

休みやすい環境が整えられて,上手に休むことができる

のではないかと期待したいです。

 

 

このように,ユニークな休暇が注目されているのは,

明後日4月1日から施行される新しい

年次有給休暇制度の影響なのでしょう。

 

 

昨年成立した働き方改革関連法により,2019年4月1日から,

会社には,年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者に対して,

年次有給休暇のうち5日については,

基準日から1年以内の期間に付与することが義務付けられました。

 

 

 

基準日から1年以内に,会社が労働者に対して,

5日の年次有給休暇を取得させなかった場合,

会社には,30万円の罰金が課せられます。

 

 

この罰則は,1人1人の労働者に対する

年次有給休暇付与義務違反ごとに課せられるので,会社は,

労働者1人1人の年次有給休暇の取得状況を

管理していく必要があります。

 

 

なぜ,このような法改正がされたのかといいますと,

年次有給休暇の取得率が低迷しており,

正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず,

また,年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については

長時間労働の比率が高い実態にあることを踏まえて,

年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進む

仕組みを導入する必要があったからなのです。

 

 

労働者が自分から時季を指定して,

年次有給休暇を5日以上取得してくれれば,

会社は,年次有給休暇付与義務違反とはならないのですが,

労働者が自分から年次有給休暇を取得しないのであれば,

会社から,時季を指定して,労働者に対して,

5日以上年次有給休暇を取得させなければなりません。

 

 

会社が,時季を指定して,年次有給休暇を付与する場合,

その時季について,当該労働者の意見を聴かなければならず,

できる限り,労働者の希望に沿った時季指定となるように,

聴取した労働者の意見を尊重するように努める必要があります。

 

 

また,会社は,時季,日数,基準日を労働者ごとに明らかにした

年次有給休暇管理簿」を作成して,3年間保存しなければなりません。

 

 

このように,4月1日以降は,労働者から自発的に

5日以上年次有給休暇を取得してもらった方が,

会社の年次有給休暇の管理の手間が軽減されて,

会社に喜ばれますので,遠慮なく

年次有給休暇を取得していってもらいたいです。

 

 

 

 

これまでは,忙しい職場に遠慮して,

年次有給休暇がとりにくかったかもしれませんが,

今後は,会社から年次有給休暇をとるように

急かされる可能性がありますので,年次有給休暇を

取得しやすい雰囲気になっていくことを期待したいです。

 

 

ダラダラ働くよりも,しっかり休むことで,

メリハリがついて,仕事の生産性が向上しますので,

労働者は,ぜひ年次有給休暇を有効に活用していってください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

無期転換後の解雇通告

朝日新聞の報道によれば,日立製作所が,

5年を超えて有期労働契約を締結して働き,

無期労働契約への転換を求めた女性労働者に対して,

解雇を通告したようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM3Q5FYDM3QULFA01X.html

 

 

本日は,この無期転換後の解雇通告の問題について解説します。

 

 

 

 

まず,有期労働契約とは,契約社員,嘱託社員,派遣社員

といった非正規雇用労働者のように,契約期間が

6ヶ月や1年などに区切られている労働契約のことです。

 

 

契約期間が満了になると原則として,

労働契約は終了し,労働者には,仕事がなくなります。

 

 

会社が労働契約を更新しれくれれば,

引き続き働き続けることができますが,

更新するか否かは,会社の意向によりますので,

雇用が不安定なのです。

 

 

これに対して,無期労働契約は,正社員のように,

契約期間の区切りがないので,会社から解雇されない限り,

労働者は,働き続けることができるのです。

 

 

そして,非正規雇用労働者は,正社員と比べて,

待遇が低く,雇用が不安定であることから,

これを是正するために,労働契約法18条で,

無期転換ルールが定められたのです。

 

 

無期転換ルールとは,有期労働契約が2回以上,

通算5年を超えて更新された場合には,

非正規雇用労働者の申し込みによって,

無期労働契約へ転換させる制度です。

 

 

ちなみに,「ムキテンカンの歌」というユーチューブ動画があります。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=ZzDSmipMylk

 

 

 

現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に,

非正規雇用労働者が,会社に対して,無期転換の申し込みをすれば,

有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約に転換されます。

 

 

無期転換の申し込みは,口頭でもできますが,

会社から聞いていないと言われるリスクがありますので,

文書で申し込みをするようにしましょう。

 

 

5年の通算契約期間ですが,途中に育児休業期間や休職期間

があった場合でも,通算契約期間にカウントされます。

 

 

無期転換後ですが,労働条件については,

契約期間が有期から無期に変わるだけで,

その他の労働条件は,従前の有期労働契約のままとなります。

 

 

 

 

もっとも,無期転換の際に,会社との間で,

賃金を正社員並に近づけるような「別段の定め」を締結できれば,

有期労働契約の労働条件を改善することが可能となります。

 

 

無期転換後であれば,労働契約の契約期間はなくなりますので,

労働者は,解雇されない限り,働き続けることができるのですが,

日立製作所は,無期転換後に解雇をしてきたのです。

 

 

会社が労働者を解雇するためには,

客観的合理的理由があり,

社会通念上相当でなければできません。

 

 

ようするに,会社側に解雇を正当化できるよほどの根拠があり,

解雇以外に他に手段がなかったといえない限り,

解雇は無効になるのです。

 

 

よほどのことがない限り,解雇できないのですから,

日立製作所の無期転換後の解雇は,

無期転換を回避するための解雇であると批判されています。

 

 

実際に,解雇する理由があったか否かは,

最終的には裁判で決着することになるのですが,

無期転換後にすぐに解雇したのであれば,

無期転換逃れのための解雇ではないかと疑いたくなります。

 

 

無期転換後の解雇が安易に認められたのでは,

非正規雇用労働者の雇用を安定させるという

無期転換ルールの趣旨がないがしろにされてしまいます。

 

 

日立製作所の事件については,団体交渉において,

無期転換後の解雇が撤回されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働条件を変更するための合意とは?

昨日に引き続き,労働条件を変更するための

合意について説明します。

 

 

本日は,合意による労働条件の変更が争われた

宮の森カントリー倶楽部事件を紹介します

(東京高裁平成20年3月25日判決・労働判例959号61頁)。

 

 

この事件では,被告会社が,ゴルフ場でキャディ

として働いていた労働者に対して,

正社員から雇用期間を1年間とする契約社員となること,

賃金について,基本給及び諸手当の大半が廃止されて,

ラウンドに出る場合に支払われるラウンド手当を中心とした

賃金に変更され,退職金が廃止され,

生理休暇が無給になることの説明を口頭でしました。

 

 

 

この説明の際,社長が事前に作成したメモに基づき

数分間の説明をして,その後,

部長による個別面談が行われましたが,

資料が交付されることはありませんでした。

 

 

キャディが,毎月の賃金がいくらになるのか,

雇用期間の1年が経過したら労働契約はどうなるのか,

といった質問をしても明確な回答がありませんでした。

 

 

その後,原告のキャディ達は,キャディ契約書を提出しましたが,

労働条件が不利益に変更されることに合意していないとして,

従前の労働条件の地位を確認するための裁判を起こしました。

 

 

労働契約法8条により,労働条件を変更するには,

労働者と使用者の合意が必要になりますので,

原告のキャディ達と被告会社との間で,

労働条件を変更することの合意が成立したかが争点となりました。

 

 

 

 

会社からの説明は,正社員から雇用期間1年の契約社員に変更すること,

賃金体系の変更による賃金の減額,退職金の廃止,

生理休暇の無給化など内容が多岐にわたっており,

数分間の社長の説明や個別面談での口頭説明によって,

その全体と詳細を理解して記憶に留めることは到底不可能です。

 

 

また,キャディ契約書には,賃金については

会社との契約金額とするという程度の記載しかなく,

いくらの金額となるのか不明な記載となっており,

原告らキャディが賃金がいくらになるのか質問しても

明確な回答がされておらず,キャディ契約書の提出が

契約締結を意味するという説明もありませんでした。

 

 

そのため,裁判所は,以上の事実を考慮して,

原告らキャディと被告会社との間に,

労働条件を変更する合意が成立したとは

認められないと判断しました。

 

 

次に,労働者と使用者による労働条件の変更について

合意がなくても,就業規則を合理的に変更して,

労働条件を変更することが可能です。

 

 

もっとも,就業規則の変更によって,労働条件を変更するには,

①労働者の受ける不利益の程度,

②労働条件の変更の必要性,

③変更後の就業規則の内容の相当性,

④労働組合等との交渉の状況等

が総合考慮されます(労働契約法10条)。

 

 

 

 

本件事件では,賃金規定が変更されていましたが,

①賃金減額率が約27%であり,年収300万円台の

原告らキャディの家計への影響が大きく,

退職金制度の廃止は将来的には実質的な賃金切り下げと評価でき,

②ゴルフ場の経営は赤字であったものの,

企業グループ全体の存立に影響を与えるほど差し迫った必要性はなく,

③原告らキャディらの労働条件を不利益に変更するための

代替措置はとられておらず,

④労働者に対して,十分な説明がなされていないとして,

賃金規定の変更は不合理であると判断されました。

 

 

そのため,原告らキャディについて,

従前の労働条件の地位が認められたのです。

 

 

このように,裁判所は,労働者にとって不利益に

労働条件を変更することについての

会社との合意を慎重に判断しています。

 

 

そのため,会社から,不利益な労働条件の変更を

提示されたとしても,納得できないなら,

合意をしないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

使用者は労働者の勤務時間を一方的に変更できるのか?

ある日,アルバイト労働者が,雇用主から,

勤務時間を1時間削減すると言われたとします。

 

 

労働契約書には,平日の勤務時間が9時から17時で

1時間の休憩時間ありと記載されていますが,

これが10時から17時に変更になると言われました。

 

 

 

 

月給制の正社員の場合,勤務時間が1時間削減されても,

もらえる給料の金額が変わらないのであれば,

少ない労働時間で同じ給料がもらえることになり,

時間単価があがり,メリットになります。

 

 

しかし,アルバイト労働者の場合,時給制であるため,

勤務時間が1時間削減されると,その分時給が削減されるので,

給料が減ってしまいます。

 

 

さらに,アルバイト労働者は,年収が低いので,

給料が減らされてしまえば,

生活が困窮することになってしまいます。

 

 

労働契約書に定めれている勤務時間を一方的に変更されることに

納得のいかないアルバイト労働者は,

勤務時間を1時間削減することに反対したのですが,

最後は,雇用主から,決まったことですと言われて

押し切られてしまいました。

 

 

 

 

このような場合,1時間の勤務時間が

削除されてしまうのでしょうか。

 

 

本日は,労働条件の変更についての合意について解説します。

 

 

労働契約法8条には,次のことが記載されています。

 

 

労働者及び使用者は,その合意により,

労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

 

この条文を反対解釈すれば,労働者と使用者の合意がない限り,

労働条件を変更することができないことになります。

 

 

そのため,アルバイト労働者と雇用主が,

勤務時間を1時間削減することに合意すれば,

勤務時間を1時間削減することができるのですが,

アルバイト労働者が,勤務時間を1時間削減することに

合意していないので,雇用主が一方的に

勤務時間を1時間削減することはできないのです。

 

 

次に,労働契約書に,「本契約で定める勤務日,休日,勤務時間は,

業績,経済情勢などにより雇用主の判断により変更することがある。」

という条項があった場合,雇用主は,アルバイト労働者の合意なく,

勤務時間を1時間削減できるのでしょうか。

 

 

労働契約法3条1項には,「労働契約は,

労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し,

又は変更すべきものとする。」と規定されており,

このような事前の包括的な変更の合意は,

対等の立場で合意されたとはいえないので,

労働者が反対しているのであれば,

このような事前の包括的な合意に基づいて,

雇用主が一方的に労働条件を変更することはできません。

 

 

さらに,賃金や退職金といった重要な労働条件の変更についての

合意については,労働者の自由な意思に基づいてされたものと

認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要となります

(山梨県民信用組合事件・最高裁平成28年2月19日判決)。

 

 

アルバイト労働者が勤務時間を1時間削減されれば

賃金を削減されることにつながるので,

アルバイト労働者の合意については,

慎重に判断されることになります。

 

 

 

 

このように,雇用主は,労働者の合意なく,

一方的に労働条件を変更することはできないので,

労働条件の変更に納得のいかない労働者は,

安易に合意しないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労災の時効

共同通信社の報道によりますと,埼玉県警の元職員が,

腰痛を理由とする地方公務員災害補償基金への請求書類を

県警本部に提出したところ,県警本部の担当職員が,

基金へ書類を送らず,請求が認められないことのみを伝えて,

不備の内容や修正点を示さずに返還したことについて,

公務災害の認定の判断を受ける権利を侵害したとして,

約3万円の損害賠償請求が認められたようです。

 

 

公務災害の請求を妨害されたことで

損害賠償請求が認められるのは珍しいです。

 

 

 

このように,労災の請求を妨害されてしまうと,

労災保険給付を受ける権利が時効で消滅するリスクがあります。

 

 

また,職場におけるパワハラやいじめによって,

うつ病などの精神疾患を発症し,何もする気力が起きず,

ようやく労災の請求をしようと思ったときには,

時効になっていたということもあります。

 

 

そこで,本日は,労災の時効について説明します。

 

 

まず,労災の認定がされれば,病院の治療費は,

労災保険から支給されます。

 

 

これを,療養給付といいます。

 

 

 

 

療養給付については,病院に対して治療費を支払った日の翌日

から時効が進行して2年で時効が完成します。

 

 

次に,仕事中にけがをして会社を休むことになった場合,

労災の認定がされれば,労災保険から,給料の概ね8割の金額が

休業給付として支給されます。

 

 

休業給付については,休業のため賃金を受けない日ごとにその翌日

から時効が進行して,2年で時効が完成します。

 

 

仕事を休んだ日ごとに時効が進行しますので,

2017年3月26日から休業のため賃金を受け取っていない場合,

2019年3月26日の時点で,2年前の2017年3月26日分

の休業給付は時効で消滅しますが,2017年3月27日以降の

休業給付はまだ時効で消滅していないので,

2019年3月26日に労災の申請をして労災の認定がされれば,

2017年3月27日以降の休業給付を受けられることになります。

 

 

労災申請が遅くなると,日が経つごとに,

休業給付を受ける権利が時効で消滅していきますので,

早急に労災申請をするべきなのです。

 

 

仕事中にけがをして治療を続けてきたものの,

これ以上治療を継続しても,

症状がよくならない状態となり(症状固定といいます),

労働者に後遺障害が残った場合,

労災保険から,障害給付を受けられます。

 

 

障害給付については,症状固定日の翌日から

時効が進行し,5年で時効が完成します。

 

 

仕事中の事故で労働者が死亡した場合,労災保険から,

労働者の遺族に対して,遺族給付と葬祭料が支給されます。

 

 

労働者が死亡した日の翌日から時効が進行し,

遺族給付については,5年で時効が完成し,

葬祭料については,2年で時効が完成します。

 

 

このように,時効が完成すると,

労災保険から給付を受けられなくなりますので,

なるべく早く労災の請求をするべきなのです。

 

 

 

会社には,労災請求にあたって,

労働者に協力する義務を負っていますので,

労災請求を妨害することはあってはならないのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。