労災の時効
共同通信社の報道によりますと,埼玉県警の元職員が,
腰痛を理由とする地方公務員災害補償基金への請求書類を
県警本部に提出したところ,県警本部の担当職員が,
基金へ書類を送らず,請求が認められないことのみを伝えて,
不備の内容や修正点を示さずに返還したことについて,
公務災害の認定の判断を受ける権利を侵害したとして,
約3万円の損害賠償請求が認められたようです。
公務災害の請求を妨害されたことで
損害賠償請求が認められるのは珍しいです。
このように,労災の請求を妨害されてしまうと,
労災保険給付を受ける権利が時効で消滅するリスクがあります。
また,職場におけるパワハラやいじめによって,
うつ病などの精神疾患を発症し,何もする気力が起きず,
ようやく労災の請求をしようと思ったときには,
時効になっていたということもあります。
そこで,本日は,労災の時効について説明します。
まず,労災の認定がされれば,病院の治療費は,
労災保険から支給されます。
これを,療養給付といいます。
療養給付については,病院に対して治療費を支払った日の翌日
から時効が進行して2年で時効が完成します。
次に,仕事中にけがをして会社を休むことになった場合,
労災の認定がされれば,労災保険から,給料の概ね8割の金額が
休業給付として支給されます。
休業給付については,休業のため賃金を受けない日ごとにその翌日
から時効が進行して,2年で時効が完成します。
仕事を休んだ日ごとに時効が進行しますので,
2017年3月26日から休業のため賃金を受け取っていない場合,
2019年3月26日の時点で,2年前の2017年3月26日分
の休業給付は時効で消滅しますが,2017年3月27日以降の
休業給付はまだ時効で消滅していないので,
2019年3月26日に労災の申請をして労災の認定がされれば,
2017年3月27日以降の休業給付を受けられることになります。
労災申請が遅くなると,日が経つごとに,
休業給付を受ける権利が時効で消滅していきますので,
早急に労災申請をするべきなのです。
仕事中にけがをして治療を続けてきたものの,
これ以上治療を継続しても,
症状がよくならない状態となり(症状固定といいます),
労働者に後遺障害が残った場合,
労災保険から,障害給付を受けられます。
障害給付については,症状固定日の翌日から
時効が進行し,5年で時効が完成します。
仕事中の事故で労働者が死亡した場合,労災保険から,
労働者の遺族に対して,遺族給付と葬祭料が支給されます。
労働者が死亡した日の翌日から時効が進行し,
遺族給付については,5年で時効が完成し,
葬祭料については,2年で時効が完成します。
このように,時効が完成すると,
労災保険から給付を受けられなくなりますので,
なるべく早く労災の請求をするべきなのです。
会社には,労災請求にあたって,
労働者に協力する義務を負っていますので,
労災請求を妨害することはあってはならないのです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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