海外出張中に新型コロナウイルスに感染して死亡した労働者について労災認定されました
1 海外出張中に新型コロナウイルスに感染した場合の労災認定
2020年7月17日,厚生労働省は,
海外出張中に新型コロナウイルスに感染した
卸売・小売業の企業の労働者が死亡したことについて,
労災と認定したようです。
https://www.asahi.com/articles/ASN7K62X5N7KULFA03B.html
新型コロナウイルスに感染して死亡した労働者が
労災認定されるのは初めてのようです。
まずは,海外出張中に新型コロナウイルスに感染した場合の
労災認定について解説します。
これについては,2020年2月3日に
厚生労働省から通達がでています。
この時期は,中国武漢で新型コロナウイルスが
猛威を振るっていた時期であり,武漢に海外出張して,
新型コロナウイルスに感染した場合を想定して
通達がだされたと考えられます。
この通達によりますと,新型コロナウイルス感染症が流行している
武漢などの地域に出張し,商談などの業務で
新型コロナウイルス感染者と接触し,
仕事以外では感染源や感染機会がなかった場合には,
労災と認定されます。
他方,新型コロナウイルス感染症が流行している
武漢などの地域に出張しても,
仕事以外のプライベートな旅行の最中に
新型コロナウイルス感染者と接触するなどして
感染したことが明らかであれば,
労災とは認定されません。
そのため,今回,新型コロナウイルスに感染後に死亡した被災労働者は,
海外渡航が禁止される前に,武漢などに出張して,
商談中に新型コロナウイルスに感染したのだと想像されます。
2 遺族補償年金
次に,新型コロナウイルスに感染後に死亡して労災と認定されれば,
労災保険から遺族に対して,遺族補償給付が支給されます。
遺族補償給付には,労災保険法で定める
一定の遺族に支給される遺族補償年金と,
遺族補償年金の対象となる遺族がいない場合などに
その他の遺族に支給される遺族補償一時金があります。
遺族補償年金の受給資格者は,被災労働者の死亡の当時
その収入によって生計を維持していた
配偶者,子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹で,
妻を除いて,年齢や障害の要件を満たした者となります。
そして,実際に遺族補償年金を受給できるのは,
受給資格者のうちの最先順位者です。
死亡した男性労働者に妻と18歳未満の子供が2人いれば,
妻が最先順位者となり,受給権者となります。
遺族補償年金の金額は,遺族の人数で決定され,
遺族の人数は,遺族補償年金の受給権者と
受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数で決まります。
先ほどの例ですと,妻と18歳未満の子供2人なので,
遺族の人数は3人になります。
遺族の人数が3人の場合,遺族補償年金の金額は,
給付基礎日額(被災労働者の労災事故発生前3ヶ月の賃金を
日割り計算したもの)の223日分となります。
遺族補償年金の他に,遺族特別支給金として300万円,
被災労働者が賞与の支給を受けていれば,
遺族特別年金が支給されます。
3 遺族補償一時金
遺族補償一時金は,被災労働者の死亡の当時に
遺族補償年金を受けることができる遺族がいないときに支給されます。
遺族補償一時金の金額は,給付基礎日額の1000日分です。
被災労働者が賞与の支給を受けていれば,
遺族特別一時金も支給されます。
このように,仕事中に新型コロナウイルスに感染した後死亡して,
労災と認定されれば,残された遺族には,
労災保険から遺族補償給付が支給されて,
今後の生活の支えになりますので,
労災申請をすることをおすすめします。
なお,厚生労働省は,医療従事者等の労働者が
新型コロナウイルスに感染して労災申請した件数が633件で,
支給決定された件数が125件と公表しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000627234.pdf
まだまだ,労災申請の件数は少ないので,
仕事中に新型コロナウイルスに感染した労働者が
労災保険を利用できることを,
多くの方に知ってもらいたいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!