複数の職場で働く労働者の労災について複数の職場の給付基礎日額が合算され、労働時間も通算されます
1 複数の職場で働く労働者の労災における給付基礎日額の合算
昨日のブログでは、今年9月に公表された
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、
副業の労働時間が長すぎて本業に支障がでたり、
副業の勤務先が本業と競業するライバル会社であったり、
といった場合以外には、原則として副業が認められることを記載しました。
この副業の原則解禁にあわせて、労災保険の分野においても
重要な改正がなされましたので、本日は、
複数の職場で働く労働者の労災保険給付について解説します。
まず、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)
において、労災保険における給付を計算する際に用いる
給付基礎日額については、複数事業で働く労働者を使用している事業
ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を
合算した額を基礎とすることになりました。
給付基礎日額とは、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間の
賃金の総支給額を日割り計算したものをいいます。
労災事故にあい、治療のために会社を休んでいる期間に
支給される休業補償給付や、
労災事故による負傷のために後遺障害が残った場合に
支給される障害補償給付については、
給付基礎日額をもとに支給額が計算されるのです。
今回の改正では、給付基礎日額を計算するにあたり、
複数の職場における給付基礎日額が合算されることになりましたので、
給付基礎日額の金額が増加することになりますので、
労災事故にあった労働者に支給される
労災保険からの給付が増加することになります。
この改正は労働者にとって有利です。
今後は、複数の職場で働いている労働者が労災事故にあった場合には、
労働基準監督署に対して、複数の職場で働いていることを申告して、
複数の職場における給付基礎日額を合算して
計算してもらうようにしてください。
2 精神障害の労災認定基準において複数の職場における労働時間が通算されます
次に、今年の8月21日に、精神障害の労災認定基準である
「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が改正され、
複数の職場における心理的負荷の強度について、
労働者に有利に改正されました。
仕事が原因でうつ病を発症して労災申請をする場合、
労働者が体験した出来事の心理的負荷が「強」と判断されれば、
労災と認定されます。
例えば、1ヶ月に100時間を超える時間外労働をして、
上司から厳しい叱責を受けた場合、総合評価の結果、
心理的負荷は「強」と認定されます。
精神障害の労災認定基準では、
1ヶ月100時間を超える時間外労働が認められれば、
労災と認定されやすくなります。
この1ヶ月100時間の時間外労働を判断するにあたり、
異なる事業における労働時間や労働日数は通算することが、
精神障害の労災認定基準に明記されました。
例えば、A社で1ヶ月70時間の時間外労働を行い、
B社で1ヶ月30時間の時間外労働を行った場合、
A社とB社の労働時間が通算されるので、
時間外労働は合計100時間となり、
労災認定されやすくなります。
今後、長時間労働が原因で、精神障害を発症した場合、
複数の職場で働いていたのであれば、労働基準監督署に対して、
複数の職場の労働時間を調査するようにはたらきかけるのがよいでしょう。
また、複数の職場における労働時間を立証できるように、
複数の職場のタイムカードをしっかり打刻したり、
スマホの労働時間管理アプリで労働時間を記録するようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。