研修中にけがをしたら・・・
人が通行している道路において大声で
自己紹介や今後の抱負を発表させられる,
度胸をつけるだめだと称してナンパをさせられる。
ブラック企業は,新入社員を,なんでも言うことを聞く,
会社にとって都合のいい人間に育て上げるために,
新人研修で社員を洗脳していきます。
研修講師が,新入社員を罵倒し,
人格を否定することを発言して,
新入社員を追い込み,会社の言うことを
聞くように洗脳していくのです。
このような新人研修はブラック研修と呼ばれ,
若者がブラック研修によって体調を崩し,
精神疾患を発症することが問題視されています。
それでは,このようなブラックな新人研修中に,
新入社員がけがをした場合,会社に対して,
どのような請求をすることができるのでしょうか。
本日は,新人研修中に負傷した新入社員が会社に
損害賠償請求をしたサニックス事件を紹介します
(広島地裁福山支部平成30年2月22日判決・
労働判例1183号29頁)。
この事件では,新人研修のカリキュラムの一つである
24kmを制限時間5時間で完歩する歩行訓練の際に,
48歳で身長171㎝,体重101.3kgの
男性の新入社員が右足と左足を負傷しました。
新入社員の男性は,労災申請し,
右足関節の機能障害(関節の動きが制限されること等です)
が右足関節離断性骨軟骨炎によるもので,
後遺障害等級10級10号に該当し,
左下肢の神経障害(痛みやしびれが生じること等です)
が後遺障害等級12級10号に該当すると判断されました。
労災が認定されると,国から,治療費の補償,
休業補償(けがで休んでいた期間の給料の補填),
後遺障害の補償(後遺障害残ったことの補償)
が受けられます。
しかし,労災では,休業補償は給料の8割
までしか補償されませんし,慰謝料の支払もされません。
そこで,労災ではけがをした労働者の損害の補償
として不足している部分について,労働者は,
会社に対して,損害賠償請求をします。
会社には,労働者の生命や健康を危険から
保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)
を負っているので,労働者が労災で負傷した場合には,
会社が安全配慮義務を怠った可能性があるのです。
本件事件では,新入社員の男性が歩行訓練中に転倒して,
右足関節を痛めて,歩行訓練の中断や病院受診を求めても,
会社は,これを拒絶して歩行訓練を継続させました。
これが原因となって,新入社員の男性が
後遺障害が残る負傷をしたのですから,
会社の安全配慮義務違反が認められました。
また,労災事故の被害者に持病があり,
それが損害発生の原因になっている場合に,
損害額を減額することを素因減額といいます。
本件事件では,新入社員の男性に
軽度の変形性関節症があったのですが,
研修の前には何も症状がなく,軽度であったことから,
会社が主張した素因減額は認められませんでした。
結果として,合計1592万1515円の損害賠償が認められました。
このように,会社の研修中にけがをした場合,
まずは,労災請求をし,労災の認定を受けてから,
会社に対して,損害賠償請求をしていきます。
労働者が負傷するようなブラック研修が
実施されないようになっていってもらいたいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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