労働者は高度プロフェッショナル制度の適用を事実上断れない
3日連続の投稿になってしまいますが,
労働者の健康を守るための労働時間法制が
根本からくつがえされてしまうほど重要な
法改正がなされようとしているので,
今日も高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)
の危険性について記載します。
お付き合いいただければ幸いです。
報道によれば,高プロを含む働き方改革関連法案は,
5月25日の衆院厚生労働委員会で採決される見通しです。
国会審議においては,高プロの危険性についての
野党の質問に対して,政府や与党が
真正面から答えることをせず,議論が深まっていません。
過労死が増えるという野党の批判に対して,
政府や与党は,高プロの対象者が
会社との交渉力のある高度専門業務に限られ,
高プロの導入には本人の同意が必要であることを根拠に,
批判をかわしています。
しかし,会社と労働者を比べれば,
圧倒的に会社が強い立場にあります。
現実の労働者は,会社から給料をもらえなければ,
生活ができなくなりますので,
事実上,会社の指示に従わなければならず,
弱い立場にあります。
そのような弱い立場にある労働者が,
会社から,「あなたには,今度から高プロという制度が適用されますので,
この書面にハンコをおしてください。」と言われたら,
事実上,断ることはできないはずです。
法律に,高プロの導入を断ったとしても,
不利益な取扱をしてはならないと記載されていても,
会社から同意をもとめられたときに,
断固として拒否できる労働者は
ほぼいないといってもいいでしょう。
さらに,高プロの法案審議の中で,
一度,労働者が高プロの適用に同意したとしても,
あとから撤回できるように修正されました。
しかし,これも同じように,
立場が弱い労働者が,雇い主である会社に対して,
一度,高プロの適用に同意したあとに,
「やっぱり高プロはやめてください」
とは,事実上,言えないと思います。
そもそも,高プロの同意を撤回できることを
労働者が知らないことが多いでしょうし,
同意を撤回した後に,
会社から何か不利益な扱いをうけるのではないか
と考えてしまうからです。
それくらい,今の会社と労働者の関係では,
会社が圧倒的に強くて,労働者が弱い立場にあります。
実際に,労働者が会社に対して
未払残業代や損害賠償請求をするのは,
会社をやめて,会社との関係がきれたあとがほとんどで,
会社に在職中に,そのようなことをする労働者は,極めて少ないです。
会社に在職しているときに,会社に請求をすると,
会社に居づらくなるからです。
そのため,労働者が高プロの適用を
拒否できるというのは,幻想にすぎません。
労働者は,高プロの適用に同意せざるをえなくなり,
その結果,残業代0円で24時間働かされてしまい,
最悪の場合,過労死してしまうのです。
高プロは,本当におそろしい制度ですので,廃案にすべきです。