定年退職後に再雇用された労働者の賃金格差は不合理なのか?

6月1日にあった重要な2つの最高裁判決のうちの

1つである長沢運輸事件について説明します。

 

 

昨日紹介したハマキョウレックス事件の原告らは,

定年退職するの非正規雇用の労働者でしたが,

長沢運輸事件の原告らは,

定年退職に再雇用された非正規雇用の労働者でした。

 

 

長沢運輸では,定年退職後に再雇用された非正規雇用の労働者を

嘱託社員と呼んでおり,嘱託社員の年収は定年退職前の79%程度となります。

 

 

 

正社員と嘱託社員との間に,

仕事の内容や責任の程度に違いはありませんでした。

 

 

また,ハマキョウレックスとは異なり,

長沢運輸では,嘱託社員であっても転勤の可能性がありました。

 

 

そこで,長沢運輸の嘱託社員らは,正社員には支給されている

能率給,職務給,精勤手当,住宅手当,家族手当,役付手当,賞与が,

嘱託社員に支給されないのは,不合理であるとして,

労働契約法20条に違反していると主張しました。

 

 

労働契約法20条では,正社員と非正規雇用の労働者の労働条件の違いが,

「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと定められています。

 

 

長沢運輸事件の最高裁判決では,

その他の事情」に,

非正規雇用の労働者が定年退職後に再雇用された者である

という事情が考慮されると判断されました。

 

 

どういうことかといいますと,

定年退職後に再雇用された労働者は,

長期間雇用されることは前提となっておらず,

定年退職するまでの間に賃金の支給を受けており,

一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けれることを考慮すれば,

正社員との賃金に差があったとしても,

割と寛大にみてもらえることになります。

 

 

嘱託社員は,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けられますし,

老齢厚生年金の支給が開始されるまでの間,

2万円の調整給が支給されていることから,

能率給,職務給,住宅手当,家族手当,賞与については,

正社員にのみ支給されて,嘱託社員に支給されなくても

不合理ではないと判断されました。

 

 

他方,精勤手当については,

従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤する

ことを奨励するために支給されるものであり,

正社員と嘱託社員との間に皆勤を奨励する必要性に違いはないので,

精勤手当を正社員にのみ支給し,

嘱託社員に支給しないことは不合理であると判断されました。

 

 

手当の実質的な中身が慎重に吟味されていますが,

役付手当がなぜ不合理ではないのかが,

判決文を読んでいて腑に落ちませんでした。

 

 

定年退職後に再雇用された労働者の場合,

正社員との労働条件の差について不合理とはいいにくくなりましたが,

賃金の格差が大きく拡大していたり,

手当の支給の有無の説明がよくわからない場合には,

定年退職後に再雇用された労働者であっても,

労働契約法20条違反が認められる余地があると考えます。

 

 

いずれにせよ,ハマキョウレックス事件と

長沢運輸事件の最高裁判決は,

企業の賃金体系に多大な影響を与えます。

非正規雇用の待遇差が不合理になる場合

6月1日に最高裁で,非正規雇用の労働条件についての

重要な判決が2件あったので,報告します。

 

 

ハマキョウレックス事件と長沢運輸事件です。

 

 

2つの事件とも,非正規雇用の運転手が,

正社員に支給されている手当が,

非正規雇用の労働者に支給されていないのは「不合理」であると主張して,

正社員に支給されている手当分の請求をしました。

 

 

 

労働契約法20条では,

正社員と非正規雇用の労働者の労働条件の違いが,

「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと定められています。

 

 

2つの事件とも,裁判をおこした原告らは運転手であり,

正社員であっても,非正規雇用の労働者であっても,

おこなっている仕事の内容は変わりません。

 

 

そこで,原告らは,仕事内容が変わらないのに,

ある手当が正社員にだけ支給されて,

非正規雇用の労働者には支給されないのは,

不合理であるとして,

労働契約法20条に違反すると主張したのです。

 

 

ハマキョウレックス事件では,

住宅手当については不合理ではないと判断されましたが,

住宅手当以外の手当については不合理であると判断されて,

原告らの主張が認められました。

 

 

ハマキョウレックスでは,正社員には,

全国規模の広域異動の可能性がありますが,

非正規雇用の労働者には,転勤がありません。

 

 

正社員は,転勤が予定されているので,

非正規雇用の労働者と比較して住宅に要する費用が多額になるので,

正社員にのみ住宅手当が支給されて,

非正規雇用の労働者に住宅手当が支給されなくても不合理ではないと判断されました。

 

 

他方,

①実際に出勤する運転手を一定数確保することを目的として支給される皆勤手当,

②優良ドライバーの育成などを目的として支給される無事故手当,

③支給対象となる特殊な作業の内容が具体的に定まっていない作業手当,

④従業員の食事にかかる補助として支給される給食手当

については,正社員のみに支給されて,非正規雇用の労働者に

支給されないことは不合理であると判断されました。

 

 

手当がどのような意図で支給されているのか,

手当の実質的な中身は何なのか

を厳密に分析していくことが重要になります。

 

 

漫然と,正社員にだけ支給されていて,

非正規雇用の労働者に支給されていない手当があれば,

不合理と判断される可能性があります。

 

 

非正規雇用の労働者は,

正社員には支給されているけど,

非正規雇用の労働者に支給されていない手当があれば,

その手当についての説明が,

就業規則や賃金規定にどのように記載されているのかをチェックしてみましょう。

 

 

就業規則や賃金規定を読んでも,

その手当が,正社員には支給されているけど,

非正規雇用の労働者に支給されていない理由がよくわからない場合は,

労働契約法20条違反を疑ってみるべきです。

脳の性差を理解すれば夫婦愛和を実現できる

6月2日に「男女問題と夫婦愛和」

という演題で講話をする機会をいただきました。

 

 

この講話の準備のために,

人工知能研究者である黒川伊保子氏の

女の機嫌の直し方

という本を読み直し,

夫婦が仲良く生活していくためには,

お互いの脳の違いを理解しておくことが重要であると再確認しました。

 

 

 

 

男性と女性の脳には性差があります。

 

 

人間の脳は,

思考,論理,言語を司る左脳と,

知覚,感性,創造を司る右脳に分かれており,

左脳と右脳を連携させる脳梁という神経線維の束があります。

 

 

 

 

男性脳では,脳梁が小さく,女性脳では,脳梁が大きいのです。

 

 

この脳梁の大小によって,脳の性差が生じるようです。

 

 

 

 

女性は,右脳で感じたことが左脳でどんどん言葉になって

意識にあがってくるので,話しながら答えをみつけます。

 

 

また,女性脳は,怖い,ひどい,つらいなどのストレスを伴う感情が起こると,

そのストレス信号が男性脳の何十倍も強く働き,何百倍も長く残りますが,

共感してもらうことで,余剰なストレス信号を沈静化させます。

 

 

そのため,女性は,共感してもらえると,

コミュニケーションがスムーズになります。

 

 

他方,男性脳は,女性脳に比べて脳梁が小さいので,

左脳と右脳の連携がそれほど密ではないため,

左脳で論理的に思考しやすいです。

 

 

男性は,相手が状況を語りだしたら,

その対話の意図を探り,

すばやく解決すべき問題点を洗い出そうとします。

 

 

このように,女性は,いろいろ対話をして

共感しながら問題解決をはかるのですが(プロセス指向共感型),

男性は,話を聞いてすぐに問題解決をする対話をします

ゴール指向問題解決型)。

 

 

脳の性差によって,男女の対話スタイルが異なるので,

どうしても男性と女性の会話はすれ違い,

夫婦ケンカが勃発してしまいます。

 

 

例えば私の場合,妻から,

「子供の夜泣きがひどいので睡眠不足なの」

と話をふられた際,すぐに

「子供が昼寝しているときに,一緒に寝れば,体力が回復すると思うよ」

とアドバイスしました。

 

 

私としては,適切なアドバイスをしたつもりでしたが,妻は,

「そういうことを聞いているんじゃないの」

と不機嫌になりました。

 

 

私は親切にアドバイスをしたのに,

不機嫌になる妻のことをその時は理解できませんでしたが,

この本を読んで,私の対応は間違いであったと気づきました。

 

 

正しい対応は,

「睡眠不足で大変だよね。いつも夜に子供の世話をしてくれてありがとう」

と妻に共感することだったのです。

 

 

このように共感して対話をすれば,妻は,

睡眠不足の解決策を,自分で勝手に思いついていたはずなのです。

 

 

弁護士として,離婚や不貞行為の法律相談を聞いていると,

夫婦の会話のすれ違いが積もり積もって,

やがて離婚や不貞行為という男女問題へ発展していくのだと感じています。

 

 

男女の脳の性差を理解して,

相手がどのような対話をすれば理解してもらえるのかを知れば

,男女問題は減少し,円満な夫婦が増えていくのではないかと思います。

 

 

夫婦は,思い通りにいかないからこそ面白いのかもしれませんね。

外出ランチで脳内物質を活性化

昨日に引き続き,精神科医の樺沢紫苑先生の

神・時間術」をもとに,外出ランチのメリットについて記載します。

 

 

 

 

昨日のブログで,外出ランチをすると

セロトニンが活性化することを記載しました。

 

 

実は,外出ランチをすると,

セロトニン以外の脳内物質も活性化するのです。

 

 

樺沢紫苑先生がおっしゃるには,

職場から飲食店に場所を変えることによって,

場所ニューロンが活性化するのです。

 

 

場所ニューロンとは,海馬に存在する,場所を司る細胞で,

もともと自分がどこにいるのかを忘れないように記憶するための細胞です。

 

 

 

海馬とは,記憶の一時保管庫です。

 

 

場所ニューロンが活性化すると,

海馬が活性化します。

 

 

海馬が活性化することで,記憶力が高まり,

学習機能が強化され,勉強や仕事がはかどるのです。

 

 

行ったことがないとこへ行くほど,

場所ニューロンがより活性化するので,ランチの際には,

行ったことのないお店を開拓した方が,

場所ニューロンを活性化させることができます。

 

 

さらに,行ったことのないお店や,

いつもと違うメニューを注文すると,

アセチルコリンという脳内物質が活性化します。

 

 

アセチルコリンは,創造性やひらめきに効果のある脳内物質です。

 

 

アセチルコリンが活性化すれば,

仕事のアイディアがうまれて,

クリエイティブな仕事がはかどります。

 

 

いつも行っているお店もいいのですが,

新しいお店を開拓したり,

いつも行っているお店で,

お気に入りのメニューを注文するよりも,

ときには,違ったメニューに挑戦することで,

脳内物質を活性化させて,

仕事の効率がアップさせることができます。

 

 

また,新しいお店を開拓すれば,

自分の中にある飲食店のデータベースが増強されていきます。

 

 

すると,食事会や懇親会の幹事を任されたり,

友人と「どこに食べに行こうか」と悩んでも,

すぐにおすすめのお店を,

自分のデータベースから検索して提示することができます。

 

 

相手に自分のおすすめのお店を紹介して,

相手が気に入ってくれれば,

その相手との人間関係がよくなります。

 

 

また,ここのお店は,このメニューがおすすめです

と紹介できれば,相手からの信頼感がアップします。

 

 

そのためには,定番メニュー以外のメニューにも挑戦して,

自分なりのお店のおすすめを把握しておくといいかもしれません。

 

 

このように,外出ランチで,新しいお店を開拓し,

新しいメニューに挑戦することで,

場所ニューロンとアセチルコリンを活性化させれば,

午後からの仕事がはかどりますし,

自分の飲食店のデータベースが更新されて一石二鳥です。

 

 

やはり,外出ランチはおすすめです。

外出ランチのすすめ

私が実戦している仕事術が,

ビジネスマンの役に立つかもしれないと思い,

紹介させていただきます。

 

 

弁護士は,クライアントと打ち合わせをし,

裁判所に提出する文書を作成し,

相手方と交渉し,

雑多な事務作業もしています。

 

 

また,事務所の経営のための仕事,

所属している弁護士会の仕事,

弁護団の仕事など,

さまざまな仕事をしています。

 

 

さらに,飲み会やイベントも多いです。

 

 

一方で,私には,1歳4ヶ月の長女がいますので,

子育てや家事もしなければなりません。

 

 

そのため,私は,いかにして短い時間で仕事の成果をあげるのか,

という労働生産性を向上させることをよく考えています。

 

 

自分の労働生産性を向上させるために,

さまざまなビジネス書を読んで,

この仕事術は役立ちそうだと思ったものを実践してきました。

 

 

私がオリジナルに考えたものは少なく,

あまり目新しいものではないかもしれませんが,

少しでも読者の方々にお役に立てれば幸いです。

 

 

まずは,昼休みの時間術について紹介させていただきます。

 

 

皆様は,昼休みをどのように過ごしていますか?

 

 

社内で愛妻弁当を食べる人,

仕事が忙しいのでコンビニ弁当を食べながら仕事をする人,

美味しいランチのお店を探しに出かける人,

などさまざまな過ごし方があります。

 

 

 

私は,時間があれば,なるべく,事務所から自転車に乗って,

美味しいランチのお店を探しにでかけています。

 

 

これには理由があります。

事務所から少し離れた飲食店へ自転車に乗って行くので,

「リズム運動」ができます。

晴れていれば,「日光を浴びる」ことができます。

そして,食事をよく噛んで食べます(「咀嚼」します)。

 

 

この「リズム運動」,

「日光を浴びる」,

「咀嚼」の3つの行動をすることで,

セロトニン」という脳内物質を活性化させることができるのです。

 

 

「セロトニン」とは,

癒やし,リラックス,平常心

などに関する脳内物質です。

 

 

セロトニンが低下すると,仕事の意欲が低下します。

 

 

朝から昼までデスクワークをしていると,

セロトニンが低下してきて,

仕事のモチベーションが低下しているのです。

 

 

そこで,外出ランチをすることで,

「リズム運動」,「日光を浴びる」,「咀嚼」ができて,

セロトニンを活性化することができます。

 

 

セロトニンを活性化させることで,

爽やかな気分になり,午後からの仕事がはかどるのです。

 

 

外出ランチで,集中力をリセットして,

午後の仕事の集中力を回復させることで,

仕事の効率をあげることができます。

 

 

この外出ランチ・リセット術は,

精神科医の樺沢紫苑先生の「神・時間術」で紹介されていたものです。

 

 

 

忙しいと,ついついコンビニ弁当を食べながら

仕事を続けてしまいますが,

「忙しいビジネスマンほど外食ランチに出かけるべきなのです」。

 

 

午後の仕事の効率をあげるためにも,外出ランチはおすすめです。

 

会社を辞めさせてもらえないときの対処法

残業代が支払われないのに,

毎日長時間労働をさせられている。

 

 

上司からは,ノルマを達成しろ

と毎日怒鳴られている。

 

 

心も体も限界で,今すぐ会社を辞めたい。

そう思い,上司に「退職したい」と伝えたら,

上司は次のように言ってきました。

 

 

「お前を教育するのに,会社はどれだけの金をかけたと思っているのか。

お前の代わりの新人を探すために,また金がかかる。

それに,お前はノルマを達成していない。

会社を辞めたければ,会社の損害を賠償してからにしろ」

 

 

 

 

このように,損害賠償請求をちらつかせて,

労働者を辞めさせないように仕向けるブラック企業の手口があります。

 

 

ブラック企業は,

使えないと思った労働者を容赦なく辞めさせますが,

使えると思った労働者をこきつかうために辞めさせないのです。

 

 

それでは,このような場合,

労働者は,退職できないのでしょうか。

 

 

結論は,労働者は,

2週間前までに退職する意思を会社に伝えれば

自由に退職できます(民法627条)。

 

 

半年以上,継続勤務している労働者であれば,

有給休暇を消化すれば,退職日が2週間以上先になることが多いと思います。

 

 

有給休暇が残っているのであれば,

有給休暇を消化してしまえば,

会社に出勤することなく,

有給休暇分の賃金を請求できます。

 

 

とくに,ブラック企業の場合,

労働者に有給休暇をとらせていないことがほとんどですので,

今すぐにでもブラック企業を辞めたい労働者は,

すぐに退職届を提出して,有給休暇を消化して,

翌日から出勤しなければいいのです。

 

 

また,会社が労働者に損害賠償請求をすると主張していたとしても,

以前ブログに記載しましたが,労働者の些細なミスが原因で,

会社の損害賠償請求が認められることは,ほとんどありません。

 

 

そのため,冒頭の事例のように,

労働者の教育費や新たな人材の採用費用は,

当然に会社が負担すべきものですし,

ノルマ未達成で会社に損害が生じるわけではありませんので,

これらの理由で,会社が労働者に損害賠償請求をすることはできません。

 

 

会社が労働者に損害賠償請求をすると主張していても,

実際にそれが認められることは,めったにありませんので,

労働者は,会社の脅しに屈しないで,会社を辞めるべきです。

 

 

会社を辞めるときには,

トラブルを未然に防止するために,

退職届を会社に提出しましょう。

 

 

有給休暇を消化する場合には,

「私は,○年○月○日から○月○日まで有給休暇を取得し,○日付で退職します。」

と記載し,日付と名前を書いて提出すれば,大丈夫です。

退職理由を書く必要はありません

 

 

退職届のコピーを手元に保管し,

会社に退職届が届いたことがわかるように,

配達証明郵便などを利用してください。

 

 

会社がしんどくなったら,無理せずに,

勇気をもって,会社を辞めることも一つの選択肢です。

自分のことを大切にしてください。

妻は他人?

さわぐちけいすけ氏の

「妻は他人~だから夫婦は面白い~」

という,夫婦関係を円満にするひけつが記載された本(マンガ)

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

夫婦円満のひけつは,

本のタイトルにある「妻は他人」であることを

絶対に忘れないことにあるようです。

 

 

夫婦は,知らず知らずのうちに,

「相手は妻(夫)だから○○を要求する権利がある」

という考えにおちいりがちですが,この考えが危険です。

 

 

他人に対して,一方的に〇〇を要求しても,

他人は,自分の都合があるので,

〇〇を要求されても対応できず,

自分の立場を考えない上から目線

のようなものの言い方に,かちんときます。

 

 

ようは,自分の都合ばかりを考えて,

相手の立場を理解せずに,何かを要求すると,

相手は不快になり,関係が悪化するリスクがあるのです。

 

 

例えば,私の場合,仕事が忙しいので,

育休中の妻に対して,「もう少し掃除してよ」

と言ってしまい,妻とけんかをしたことがあります。

 

 

 

 

この言葉の前提に,

妻は育休中で時間に余裕があるので,

妻が掃除をするのが当然であるという

誤った考えがありました。

 

 

この言葉に対して,妻が怒りました。

 

 

育休中の妻は,四六時中,幼い子供の世話をしており,

また,子供の寝付きが悪いので,睡眠不足で,疲労困憊だったのです。

 

 

子育てで疲れているので,

家事の負担を減らして,

ゆっくり休みたい。

これが妻の本音です。

 

 

子育ては,仕事以上に大変です。

私は,そのことに思いがいたらずに,

育児で疲れている妻に「もう少し掃除してよ。」と言ってしまい,

夫婦ケンカになってしまったのです。

 

 

ここで,「妻は他人」という考え方をすれば,

他人に対して,掃除してよと言えるはずがなく,

自分で掃除をすればいいという発想にいたります。

 

 

そして,妻に対して,掃除を要求することなく,

自分から掃除を始めると,妻が掃除を手伝ってくれて,

効率よく掃除をすることができました。

 

 

夫婦とは,育ってきた環境が全く異なる男女が,

長年共同生活を継続する気の長いプロジェクトです。

 

 

育ってきた環境が互いに異なるので,

当然,価値観も異なり,

夫婦は,時にすれ違い,

ケンカに発展します。

 

 

ケンカに発展する前に,妻または夫は,

相手が自分の価値観とは異なる他人なのだから,

礼節を重んじて,丁寧に接する必要があると考えれば,

相手に対して,寛容になり,丁寧な対応ができるようになり,

無用な夫婦ケンカを回避できると思います。

 

 

日々,離婚や不倫といった男女問題に関わる弁護士の立場から,

「妻(または夫)は他人。だから夫婦は面白い」

という発想で過ごせば,男女問題で悩む人が少なくなるかもしれないと思い,

この本を紹介させていただきます。

セクハラの対処法

東京都狛江市の市長が,女性職員へ

セクハラをしたとして,辞職することになりました。

 

 

市長の具体的なセクハラ行為は,

宴会でお尻を触った,

エレベーター内で腰を引き寄せられて体を密着させた,

といったものです。

 

 

狛江市のセクハラにつては,

被害にあった女性職員らが,

実名入りの抗議文を提出して発覚しました。

 

 

被害者が実名で公表するからには,

セクハラの事実を証明できるだけの証拠

があったのだろうと思います。

 

 

また,財務省のセクハラ事件では,

記者が事務次官から,

「胸触っていい?」,

「手縛っていい?」

と言われたことが,音声データとして

保存されていたからこそ,

ここまで大きな問題になったと思います。

 

 

音声データがなければ,

財務省からの圧力がかかり,

事務次官が「はめられている」

と判断されていたリスクがあります。

 

 

そもそも,セクハラとは,

相手方の意に反する性的言動であり,

性的言動をした本人がどういう意図だったかはさておき,

相手方が不快に感じたかどうかが重要になります。

 

 

 

 

そして,セクハラとは,

権限をもっている男性が,

立場の弱い女性に対して,

その優越的地位を利用して行われる点に特徴があります。

 

 

立場の弱い女性は,

立場の強い男性からの性的言動に対して,

抵抗しにくいという構造的な問題があります。

 

 

財務省や狛江市のセクハラ行為は,

女性であれば,そのような言動をされれば,

当然不快に感じますし,

事務次官と記者,

市長と職員

という力関係の構造が背景にあります。

 

 

それでは,女性がセクハラの被害にあった場合,

どのように対処するべきでしょうか。

 

 

最も重要なことは,

セクハラの事実を証明するための証拠を確保することです。

 

 

セクハラは密室で行われるため,

証拠が残りにくいという問題があります。

 

 

証拠がなければ,

加害者に「そんな言動はしていない」

という言い逃れを許してしまうことになります。

 

 

そのような言い逃れを許さないためにも,

セクハラの言動があった場合,

スマホやボイスレコーダーで録音をしましょう。

 

 

録音があれば,加害者は,

「そんな言動はしていない」と言えなくなります。

 

 

録音できない場合は,

セクハラの事実をその場で詳細にメモしておくことも有効です。

 

 

そして,証拠を確保した上で,

セクハラにあったことを,

会社のセクハラの相談窓口や外部の相談窓口へ相談にいって公表し,

また,セクハラをやめるように加害者へはっきりと伝えるといいです。

 

 

 

 

加害者は,セクハラをしているとは思っていないことがあるので,

何もしないとセクハラがますますエスカレートするリスクがあります。

 

 

そのため,その言動はセクハラである

とはっきりと伝えることは効果的です。

 

 

もっとも,加害者に直接伝えるのが難しい場合もありますので,

信頼できる人に相談して,対策を一緒に検討してもらうといいでしょう。

働き方改革関連法案の強行採決に反対します

昨日,衆院厚生労働委員会において,

働き方改革関連法案が強行採決されてしまいました。

 

 

 

 

これまで何回かブログで記載してきましたが,

働き方改革関連法案のうち,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)は,

対象労働者の労働時間の規制を撤廃して,

残業代0円で24時間働かせても合法になるという危険な制度です。

 

 

そのため,野党は,高プロは過労死を助長するとして,

撤回を求めてきましたが,残念ながら,

昨日,強行採決されてしまったのです。

 

 

野党の健全な批判に耳を傾けずに,

数の力で採決を強行する与党のやり方は,

あまりにも横柄であり,

国会が言論の府として正常に機能していないように思えて,残念です。

 

 

今日は,これまでのブログに記載していなかった

高プロの問題点について解説します。

 

 

政府・与党は,高プロは,働いた時間ではなく成果で賃金を決める

成果型賃金制度であると主張しています。

 

 

しかし,これは誤りです。

高プロを導入する要件の中に,賃金制度に関する要素はなく,

成果型賃金にすることが義務付けられていません。

 

 

多くの企業では,月額賃金がほぼ固定された月給制がとられており,

高プロが導入されても,月給制の賃金制度が変わる保障はありません。

 

 

そのため,月給制のまま高プロが導入されれば,

たとえ,労働者が成果をあげたとしても,給料があがる保障はなく,

月額賃金が固定されたまま,残業代0円で24時間働かされる危険性があるのです。

 

 

また,高プロの法案には,

労働者の健康を確保するための措置を会社に義務付けていますが,

長時間労働の歯止めにならない実効性に欠けるものになっています。

 

 

高プロの法案では,

4週間のうち4日休日を与えなければならないのですが,

4週間で4日休日を与えさえすれば,

24時間連続勤務であっても許されることになります。

 

 

 

 

これでは,長時間労働の歯止めにはなりません。

 

 

高プロの法案では,会社が実施すべきとされている

労働者の健康を確保するための措置として,4つあげられており,

その中から1つを実施すればよいことになります。

 

 

おそらく,会社は,4つの中から最も負担の軽い,

「一定の場合に健康診断を実施する」ことになると思います。

 

 

しかし,健康診断を実施するだけでは,

長時間労働の歯止めになりません。

 

 

このように,高プロの法案では,

長時間労働の歯止めになる対策がなされていないので,

残業代0円で24時間働かされて,労働者の健康が害される危険があり,

やはり,野党の批判のとおり,過労死を助長するのです。

 

 

私は,高プロを含む働き方改革関連法案の強行採決に反対します。

 

日大アメフト部事件からブラック企業を考える

連日,日大アメフト部の悪質タックルの報道をみていて,

日大アメフト部では,ブラック企業と同じことが行われたのだなと感じました。

 

 

 

 

悪質タックルをした選手は,

実戦練習からはずされており,コーチから,

相手を1プレー目で潰せば試合にだしてやるぞ

と言われたようです。

 

 

部活動をする選手にとって,

レギュラーとして試合で活躍するのが,

重要な自己実現になります。

 

 

しかし,選手には,試合にでれるか否かの決定権はありません。

試合に誰を出場させるかを決めるのは監督やコーチです。

 

 

選手が試合に出るためには,

監督やコーチの言うことに従うしかないのです。

 

 

上下関係が厳しく,

しごきが日常となっているような

閉鎖された部活動では,

監督やコーチが絶対的な権力者として君臨して,

下の選手たちは,監督やコーチに逆らうことができない

支配構造が確立されていると考えられます。

 

 

このような支配構造にいると,

選手は,監督やコーチに洗脳されて,

正常な判断ができなくなります。

 

 

だからこそ,日大アメフト部の選手は,

監督やコーチに追い込まれて,逆らうことができずに,

悪質タックルをせざるをえなかったのでしょう。

 

 

日大アメフト部の支配構造は,ブラック企業とよくにています

 

 

ブラック企業は,上司への絶対服従を求め,

指導と称して,不要な暴力や過剰な叱責が日常的に行われて,

いらなくなった労働者を辞めさせるために,戦略的なパワハラが行われます。

 

 

 

 

労働者が自分から辞めていけば,解雇ではないため,

あとから裁判で争う場合,パワハラの証拠がなければ,

損害賠償請求が困難になります。

 

 

解雇の場合は,

労働基準法で厳しい規制があるので,

労働者に有利になります。

 

 

ブラック企業は,解雇による法的紛争のリスク

を回避するために,戦略的にパワハラを行い,

労働者が自分から辞めていく状況に追い込むのです。

 

 

社会経験が浅い若者は,

社会は厳しいと聞いて育ったので,

会社とはこういうものだと思ってしまうと,

ブラック企業に洗脳されて,

パワハラをされても抵抗せず,

どんどん精神的に追い込まれて,

やがてうつ病を発症してしまいます。

 

 

ブラック企業では,

社長や上司の命令は絶対で,

労働者は,パワハラを受けて,

使い潰されていくのです。

 

 

私は,日大アメフト部の事件をみていて,

若者がブラック企業で使い潰されてしまうのは,

学生時代の部活動で,ブラック企業のような支配構造

に順応しているからではないかと思いました。

 

 

部活動がブラックだから,

若者は,ブラック企業へ就職しても,

違和感を覚えることなく,

自然にブラック企業の支配構造に組み入れられてしまう。

 

 

ブラック企業を根絶するためには,

ブラックな部活動を改善する必要があります。

 

 

部活動では,選手を支配するのではなく,

個人として尊重し,

選手が自己成長できる場である必要があります。

 

 

日大アメフト部の事件を契機に,

ブラックな部活動が改善されて,

おかしいことにはおかしいと言える若者

が増えていって欲しいと思います。