高度プロフェッショナル制度に反対する理由
報道によれば,与党は,5月23日に,
働き方改革関連法案を衆院厚生労働委員会で
強行採決する見通しのようです。
十分な国会審議がなされていないまま,
「過労死促進法案」,「残業代ゼロ法案」
と批判されている高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)
が成立してしまうのは,非常に腹立たしいことです。
そこで,改めて,高プロの危険性について解説します。
労働基準法には,労働者が働き過ぎによって
健康を害することがないように,会社に対して,
労働時間の規制をしています。
具体的には,
①1日8時間,1週間で40時間を
超えて働かせてはならないこと(労働基準法32条),
②労働時間が8時間を超える場合には
1時間の休憩を与えなければならないこと(労働基準法34条),
③毎週少なくとも1回の休日を
与えなければならないこと(労働基準法35条),
④1日8時間を超えて残業させた場合には,
25%増の割増賃金を支払わなければならないこと(労働基準法36条),
といった労働時間の規制が定められています。
それでは,高プロが成立するとどうなるのでしょうか。
高プロが適用される労働者には,
これらの労働時間の規制が適用されなくなります。
すなわち,残業代ゼロで24時間働かせても合法になってしまうのです。
高プロを推進する人は,
成果を出せば早く帰れるようになる
というメリットを主張しています。
しかし,高プロが適用されたからといって,
早く帰れるようになる保障は全くありません。
ある仕事が終われば,また次の仕事がふってくるので,
いつまでたっても仕事が終わらず,
逆に帰宅時間が遅くなることが予想されます。
また,高プロは年収1075万円以上の労働者が対象なので,
自分には関係ないと考える労働者がいるかもしれません。
しかし,高プロは,多くの労働者にとって関係があるのです。
今議論されている高プロの対象者は,
年収1075万円以上の労働者ですが,
高プロの成立後,知らいないうちに,
年収要件が引き下げられてしまい,
対象労働者が拡大していくことが予想されます。
経団連は,かつて年収400万円以上の労働者を対象とすべきと提言していました。年収400万円以上の労働者が対象になるのであれば,多くの労働者が,残業代ゼロで長時間労働を強いられるリスクがあるのです。
小さく産んで大きく育てるのが,規制緩和の常套手段であることを肝に銘じておく必要があります。
労働者は,高プロを他人事としてとらえるのではなく,明日は我が身と考えるべきです。
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