法律家の依頼者対応

1 泣き寝入りですかと言われたら

 

 

私が尊敬している弁護士である、京野哲也先生の最新刊「法律家の依頼者対応」を読みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京野先生は、司法研修所の元民事弁護教官でして、若手弁護士向けの、分かりやすい実務書を多数執筆されており、私は、実務で悩んだ時には、京野先生の本を読み、対応策を検討しています。

 

 

「法律家の依頼者対応」の本は、弁護士として、日々、依頼者とのコミュニケーションをとっている中で、よくある悩ましいシチュエーションごとに、どのように対応するのが効果的なのかが、とてもわかりやすく解説されています。

 

 

この本のすごいところは、依頼者とのコミュニケーションの場面で、「通常の対応例」と「工夫例」の2つのバリエーションを対比しながら、依頼者とのコミュニケーションのどこをどのように改善していけばよいのかが、一目でわかるところです。

 

 

それでは、私が、この本を読んで気づいたことを3つご紹介します。

 

 

1つ目は、依頼者から、「泣き寝入りですか」と言われた時のコミュニケーションです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁護士をしていると、相談者から、「泣き寝入りですか」と質問されることが多々あります。

 

 

相談の内容によっては、証拠がなくて、請求が認めれなかったり、トラブルの相手にお金がなくて、相手からお金を回収するのが難しかったり、請求できる金額が少なくて、弁護士に依頼すると損をしてしまう等、弁護士に依頼しても、問題解決につながらないことは、よくあります。

 

 

このような時、弁護士から、依頼を受けられない事情を説明した後に、相談者から、「泣き寝入りですか」と質問された場合、弁護士としては、どのように回答すべきか悩みます。

 

 

このような場面について、この本では、まず、「悩ましい問題ですね」、「私もあなたの立場になったら、同じような気持ちになりますよ」と受け止めることが記載されています。

 

 

その上で、相談者の視点を未来に向かわせるために、「これから少しでもマイナスを減らしたり、あるいはプラスに持っていく選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。」という質問をします。

 

 

相談者が「泣き寝入りですか」と質問してくるケースにおいて、相談者と議論しても、問題解決できず、むしろ、相談者により辛い思いをさせてしまうリスクがあるので、避けるべきです。

 

 

それよりも、まずは、相談者の言い分を受け止めます。

 

 

そして、相談者は、現在の問題点で思考や視野が狭くなっていますので、未来に視点を移行させることで、一緒に問題解決の糸口を考える姿勢をみせるのが効果的なのです。

 

 

法律相談では、例え、事件の依頼を受けなかったとしても、相談者の未来が少しでも明るくなるような手助けをしたいものです。

 

 

2 依頼者が隠していた事実が発覚したとき

 

 

2点目は、依頼者が隠していた事実が発覚した時のコミュニケーションです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼者が当初話していたことが、後から間違っていたということは、弁護士の実務ではよくあります。

 

 

人の記憶は変遷しますので、後から間違っていたなんてことはよくあるわけです。

 

 

でも、私は、ついつい、「あの時、こう言っていたではないですか。今さら、間違っていたと言われても困ります」と言って、依頼者を責めてしまいがちです。

 

 

これでは、依頼者が、正直に話しに話しにくくなるので、私は、自身の対応を反省しております。

 

 

このような場面では、正直に話してくれた依頼者に対して、感謝を示した上で、「どのようなところが本当のことを言いづらくしていたのでしょうか。今後の勉強のためにも、教えていただけないでしょうか。」と弁護士の聞き方の問題について、フィードバックをもらうように質問してみます。

 

 

このようなコミュニケーションにすることで、依頼者を責めることが避けられ、普段聞けないことを聞いて、弁護士のコミュニケーションの改善に役立てることができるので、一石二鳥になります。

 

 

依頼者を責めても、弁護士には何の得にもなりませんので、正直に話してくれた、依頼者に労いの言葉をかけた上で、今後の最善策を検討するのが、効果的ですね。

 

 

3 依頼をお断りするとき

 

 

3点目は、依頼をお断りする場合でのコミュニケーションです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この本には、依頼をお断りする場合として、次の7つが記載されています。

 

 

①裁判所において立証できない見通し

 

 

②法的な対応が困難

 

 

③相談者が依頼者に依頼するメリットがない

 

 

④その意向に沿うならば処理方針について意見が一致しない

 

 

⑤多忙で担当できない

 

 

⑥その把握できた問題について弁護士の能力・経験が不足する

 

 

⑦利益相反のおそれ

 

 

私の場合、①~④で、依頼をお断りすることがあります。

 

 

①~④の場合において、依頼をお断りするときに、弁護士のポリシーを伝えると、相談者に、断られたのはしかたがないと思ってもらいやすくなります。

 

 

確かに、私のポリシーですと言われたら、相手は、何も言えなくなりますし、言い方としても、それほどきつくありません。

 

 

私の場合、「私は、弁護士に依頼しても、依頼者が損をするような場合には、依頼を受けないポリシーなのです」と伝えるのが効果的だと考えました。

 

 

また、「弁護士も人それぞれですから、他の弁護士の意見を聞いてみてはいかがでしょうか」と質問するのも効果的です。

 

 

相談者に別の弁護士への法律相談という選択肢を提供することで、法律相談を終えたほうが、幾分か、相談者の不満は軽減されると思います。

 

 

今は、インターネットで、弁護士を簡単に見つけることができるので、「他の弁護士の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。」という質問は、使いやすいと思います。

 

 

弁護士が法律相談で悩む場面について、効果的な対応方法がわかりやすく記載されているので、若手から中堅の弁護士にとてもおすすめの一冊です。

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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