1 労災隠しの犯罪で逮捕のニュース
報道によりますと,石川県宝達志水町の家屋解体現場において,
日雇労働者がダンプカーの荷台から転落して
右鎖骨を折る全治6ヶ月の怪我を負ったにもかかわらず,
雇用主が労災事故のことを,労働基準監督署へ報告しなかった
という労災隠しの犯罪がありました。

雇用主が労災事故のことを労働基準監督署に報告しないだけでなく,
日雇労働者は,市役所には,労災事故ではなかったと虚偽の事実を伝えて,
生活保護の医療扶助を受給したようです。
その結果,関係者4人が労働安全衛生法違反と
詐欺の疑いで逮捕されました。
石川県で労災隠しの犯罪で逮捕までいくのは珍しいと思います。
本件事件では,報道によりますと,
労災事故にあった日雇労働者も労災隠しに加担しているようですが,
労働者は,労災隠しに加担してはいけません。
雇用主からの労災隠しに応じてしまうと,
労働者には色々なデメリットが生じてくるのです。
2 労災隠しは犯罪です
まず,労災事故が発生した場合,会社は,
労働基準監督署に対して,労働者死傷病報告書を提出して,
労災事故が発生したことを報告しなければなりません
(労働安全衛生法100条,労働安全衛生規則97条)。
会社がこの労働基準監督署への報告をしないことを,
労災隠しといい,労災隠しをした会社に対して,
50万円以下の罰金が科せられることがあります。

(厚生労働省のポスター)
会社は,労災事故を契機に労働基準監督署の調査を受けることで,
労働法令を守っていなかったことが発覚することをおそれたり,
労災保険料が増額されることをおそれたりして,
労災隠しをしてしまうことがあるのです。
3 労災隠しによる労働者のデメリット
会社が労災隠しをすると,労災事故にあった労働者は,
労災保険を利用できません。
労災保険を利用できれば,労働者は,治療費を負担することなく,
会社を休んでも給料の8割が休業補償給付として支給されるので,
安心して,治療に専念することができます。
また,労災事故にあった労働者が治療の結果,
後遺障害が残ったとしても,労災保険から障害補償給付が支給されます。
これに対して,労災隠しをされて,労災保険が利用できない場合,
治療費は自己負担となり,後遺障害が残っても補償はありません。
労災保険が利用できなくても,会社を休んだときには,
傷病手当金を受給できますが,
給料の3分の2が最長1年6ヶ月補償されるものの,
労災保険の休業補償給付の方が,補償が手厚いです。
また,労災隠しをされて,労働基準監督署が調査をしないまま,
証拠がなくなってしまい,後日,会社に対して,
損害賠償請求をしようとしても,証拠がないために,
損害賠償請求が認められないリスクがあります。
このように,労災隠しは,労働者にとって,
デメリットしかありませんので,会社が労災を隠そうとしても,
労働者は,毅然として,労働基準監督署に対して,
労災の申請をするべきなのです。
会社が労災申請に反対しても,
労働基準監督署にそのことを説明すれば,
労働者個人で労災申請できます。
本日もお読みいただきありがとうございます。