ラオスで水力発電所の建設工事に従事していた
大林組の男性社員がくも膜下出血で死亡したのは,
長時間労働が原因であるとして,
三田労働基準監督署が労災認定しました。
https://www.asahi.com/articles/ASM3W56NCM3WULFA02D.html
過労死した男性は,メコン川支流の川に建設するダムや
水力発電所の工事の管理者をつとめていたようで,
死亡する1ヶ月前の時間外労働は約187時間,
最長で1ヶ月239時間の時間外労働をし,
50日連続勤務のときもあったようです。

海外で働くと,言葉が通じないうえに,文化が異なることで
ストレスがかかりますし,体調を崩した時に,
適切な医療を受けられるのか不安なことが多いです。
それでは,海外勤務で労働災害に巻き込まれた場合,
労働者には日本の労災保険が適用されるのでしょうか。
この点,海外での労働が,「海外出張」か「海外派遣」かによって,
日本の労災保険法が適用されるのかが分かれます。
海外出張とは,単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず,
国内の事業場に所属し,その事業場の使用者の
指揮に従って勤務することをいいます。
具体的には,海外における,①商談,
②技術・仕様などの打ち合わせ,
③市場調査・会議・視察・見学,
④アフターサービス,
⑤現地での突発的なトラブルの対処,
⑥技術習得などのために海外に赴く場合
などが海外出張となります。

海外出張の場合,出張中に発生した労働災害には
国内と同様に労災保険法が適用されます。
そのため,海外で発生した労働災害について,
業務遂行性(労働者が労働契約に基づいて会社の支配下にある状態)と
業務起因性(仕事が原因で負傷したこと)が認められれば,
業務上の労働災害として,労災保険の給付が受けられます。
他方,海外派遣とは,海外の事業場に所属して,
その事業場の使用者の指揮に従って勤務することをいいます。
具体的には,①海外関連会社(現地法人,合弁会社,提携先企業)
へ出向する場合,②海外支店,営業所へ転勤する場合,
③海外で行う据付工事・建設工事に従事する場合
(統括責任者,工事監督者,一般作業員などとして派遣される場合)
などは海外派遣となります。
海外派遣の場合,日本の労災保険法は適用されず,
海外派遣先の国の災害補償制度が適用されます。
しかし,海外には災害補償制度が確立していない国があったり,
災害補償制度が確立していても,補償水準は国によって差があります。
そのため,海外派遣の労働者の保護を図るために,
労災保険法には,海外派遣者の特別加入制度があります。

海外で仕事を開始する2週間ほど前に,
申請書を労働基準監督署を経由して労働局へ提出し,
労働局長が承認をすれば,海外派遣の労働者に,
日本の労災保険が適用されます。
また,すでに赴任している海外派遣の労働者に対しても,
特別加入制度を利用できますが,
日本の労災保険が適用されるのは,
労働局長の承認があった日以降となります。
海外に転勤になった場合には,
もしものことに備えて,
海外派遣者の特別加入制度に加入申請することを
忘れないようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。