新型コロナウイルスに感染したバス運転手とツアーガイドは労災と認定されるのか
1 新型コロナウイルスの感染が拡大しています
中国湖北省武漢を中心に,新型コロナウイルスによる
肺炎が拡大しており,2020年2月3日現在で,
感染者の数は1万人を超え,中国における死者が300人を超えました。
日本では,武漢からのツアー客を乗せたバスの運転手と,
そのバスに同乗していたツアーガイドの女性が,
新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになっています。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3892005.htm?1580686339337
このバス運転手とツアーガイドは,武漢への渡航歴がなかったようです。
そのため,バスツアーの仕事をしていたときに,
新型コロナウイルスに感染したと言えそうです。
2 仕事中にウイルスに感染したら労災と認定されるのか
このように,仕事中にウイルスに感染した場合,
労災と認定されるのでしょうか。
まず,仕事が原因で疾病が発症した場合,
その疾病が労働基準法施行規則別表第1の2に記載されていれば,
仕事が原因で疾病が発症したといいやすくなります。
この別表第1の2の6号に
「細菌,ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病」
が記載されています。
基本的には,医師や看護師が患者の診察や治療の機会に
病原体を取り扱う仕事をしているため,
病原体に感染するリスクが高いことから,規定されています。
C型肝炎,エイズ,MRSA感染症については,
通達で労災の認定基準が定められています。
http://labor.tank.jp/hoken/nintei/kansensyou-ckanen-etc.html
この別表第1の2の6号には,医師や看護師が
病原体に感染する場合以外に,5として,
「これらの疾病に付随する疾病その他細菌,ウイルス等の病原体
にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」が規定されています。
バスツアーの仕事をしていて新型コロナウイルスに感染した場合,
この別表第1の2の6号の5に該当するとして,
労災と認定される可能性が高いと考えます。
3 業務遂行性と業務起因性
また,労災と認定されるためには,業務遂行性を前提に
業務起因性が認められる必要があります。
業務遂行性とは,労働者が労働契約に基づき
事業主の支配下にある状態をいい,
仕事をしているときに労災事故にまきこまれれば,
業務遂行性が認められます。
業務起因性とは,相当因果関係があることをいい,
業務に内在する危険が現実化したものによる,とも言われます。
ようするに,仕事が原因で,疾病を発症したといえればいいのです。
武漢から来たツアー客を乗せたバスを運転していたり,
ツアーガイドをしていれば,ツアー客の中に
新型コロナウイルスに感染している人がいれば,
バスの運転手やツアーガイドも
新型コロナウイルスに感染するといえそうです。
そのため,バスの運転手やツアーガイドの業務に内在する
危険が現実化したといえ,労災と認定される可能性があります。
労災と認定されれば,治療費は全額労災保険から支給されますし,
病気で仕事を休んでいる期間の給料の8割が支給されますので,
安心して,治療に専念することができるのです。
早急に,新型コロナウイルスの感染が終息に向かうことを祈っています。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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