ひらかたパークの熱中症の労災事故から熱中症の労災認定を考える
大阪府枚方市にある遊園地ひたかたパークにおいて,
28歳の男性アルバイト職員が,
屋外のステージで着ぐるみ姿でダンスの練習をしていたところ,
練習後に熱中症で倒れて,救急搬送されましたが,
まもなく死亡したという労災事故が発生しました。
https://www.asahi.com/articles/ASM7Y5W78M7YPTIL02L.html
この男性アルバイト職員は,
昼間に着ぐるみを着て25分ほど園内で活動し,
その後,着ぐるみを脱いで,別の業務をこなし,
閉園後19時30分から,
屋外で着ぐるみを着てダンスの練習をしたようです。
この日の大阪府の最高気温は33.2度,
午後8時の気温は28.7度で,
湿度は68%だったようです。
男性が着ていた着ぐるみの重さは15㎏だったようです。
子供達が喜ぶとはいえ,炎天下の屋外で,
重くて風通しが悪い着ぐるみを着てダンスを踊るのは,
本当に過酷な仕事だと思います。
このように,仕事中に熱中症になった場合,
労災と認められるのでしょうか。
本日は,熱中症の労災について解説します。
労働基準法施行規則別表第一の二第2号8には,
「暑熱な場所における業務による熱中症」
が業務上の疾病として規定されています。
仕事が原因で熱中症が発症したといえるためには,
熱中症を発症したと医学的に認められて,
その熱中症の発症が業務に起因する
という要件を満たす必要があります。
まず,熱中症を発症したと医学的に認められるためには,
次の点が考慮されます。
①作業条件及び温湿度条件等の把握
②一般症状の視診(けいれん,意識障害等)及び体温の測定
③作業中に発生した頭蓋内出血,脳貧血,てんかん等
による意識障害等との鑑別診断
すなわち,作業環境や気温などのデータに加えて,
他の疾病ではなく,熱中症を発症していることが
外見や体温などからも診断できる必要があるわけです。
次に,熱中症の発症が業務に起因すると認められるためには,
次の点が考慮されます。
①業務上の突発的またはその発生状態を時間的,
場所的に明確にしうる原因が存在すること
②当該原因の性質,強度,これらが身体に作用した部位,
災害発生後発病までの時間的間隔などから
災害と疾病との間に因果関係が認められること
③業務に起因しない他の原因により発病したものでないこと
ようするに,真夏の午後の時間に炎天下の屋外で重労働をして,
比較的短時間で熱中症になり,特に持病をもっていなかった場合には,
仕事が原因で熱中症を発症したと認められることになります。
そして,労働者の従事する作業環境条件,作業態様,
労働時間,作業場の温湿度条件,服装,発症時期等を総合考慮して,
仕事が原因で熱中症を発症したのかが判断されます。
以上説明してきた,熱中症の労災の要件を検討するにあたり,
厚生労働省の「職場における熱中症の予防について」という通達と,
「職場にける熱中症予防対策マニュアル」
に記載されていることが参考になります。
長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!