マカフィーの労働審判から退職勧奨や退職強要の対処方法を検討する
1 マカフィーの労働審判
外資系セキュリティー大手のマカフィーにおいて、
退職強要をされたと主張する労働者が、
労働審判を申し立てて、調停が成立しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/08f0be34ab6a13b8b993be0d08541d023f5406c8
報道によりますと、申立人の労働者は、
「サインをしなければ解雇通知します」等と言われて、
その場で、退職確認書に署名することを迫られ、
2時間ほど退職強要されて、署名させられたようです。
会社は、労働者をそう簡単に解雇できないので、
労働者が自分から会社を辞めた形にもっていくために、
退職勧奨や、ひどいときには退職強要をしてきます。
本日は、退職勧奨や退職強要の対処方法について解説します。
2 退職勧奨や退職強要の対処方法
まず、会社が労働者に対して、
会社を辞めてほしいとお願いすることを退職勧奨といい、
退職勧奨が、退職を強要するように違法になされることを
退職強要といいます。
退職勧奨は、単なるお願いなので、
労働者は、退職勧奨に応じる義務はなく、
会社を辞めたくないのであれば、
辞めませんときっぱりと断ればいいのです。
退職勧奨を受けている労働者の代理人として、
弁護士が会社に対して、内容証明郵便で退職勧奨を辞めるように
通知を出すことで、退職勧奨が止まることもあります。
会社が労働者の自由な意思を尊重しつつ、
退職勧奨を行う限りでは、退職勧奨は、違法になりません。
もっとも、労働者が、退職勧奨に応じない態度を示しても、
退職勧奨が止まらないことはよくあります。
このような場合、労働者が退職勧奨に応じる意思がないことを
明確にしているのに、執拗に退職勧奨を繰り返したり、
多人数で取り囲んだり、威圧的な言動を繰り返すなどした場合には、
違法な退職勧奨、すなわち、退職強要となり、
労働者は、会社に対して、損害賠償請求できます。
労働者が、会社に対して、違法な退職強要があったとして、
損害賠償請求をするためには、会社からどのような態様で、
退職を強要されたのかを証明する必要があります。
退職強要の実態を証明するためには、録音が重要になります。
録音がなければ、会社は、退職強要をする言動はしていない
と主張してきて、言った言わないの水掛け論となり、
退職強要の実態を証明することができなくなってしまいます。
そのため、会社から、退職勧奨をされた場合には、
録音をするようにしましょう。
録音をする際に、会社に録音することの許可を得る必要はなく、
こっそり録音すればいいのです。
3 退職合意書に署名した場合の対処方法
次に、会社から退職強要をされて、
退職合意書にサインをしてしまったら、
どうすればいいのでしょうか。
その際には、会社から強迫を受けて、
自由な意思に基づかないで署名したことを主張して、
退職の意思表示の取り消しを求めます。
損害保険リサーチ事件の旭川地裁平成6年5月10日決定
(労働判例675号72頁)では、
会社側の、転勤に承諾しなけれ懲戒解雇するという発言によって、
労働者が退職の意思表示をしたことについて、
強迫に基づく意思表示であるとして、
その取消が認められました。
また、退職の意思表示が、自由な意思に基づくものと
認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在しない場合には、
退職の意思表示が無効になります。
とはいえ、退職の意思表示を強迫を理由に取り消したり、
自由な意思に基づかないとして無効とするには、
会社との退職のやりとりを証明する必要があり、
やはり、録音が必要になります。
まとめますと、退職勧奨や退職強要を受けても、
会社を辞めたくないなら、退職しませんと回答し、
会社とのやりとりを録音し、もし、退職の意思表示をしてしまったら、
会社からの強迫や、自由な意思に基づかないものであったと
主張立証できないかを検討することになります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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