中退共の退職金減額認識申請を会社からされた場合の対処法
1 中退共の制度概要
中小企業退職金共済(以下、「中退共」といいます)について、次のような質問をいただきました。
会社の人間関係が嫌になり、自己都合退職をしました。
会社で中退共に加入していたので、退職後に、中退共に対して、退職金の請求をしました。
すると、会社は、私の在職中の問題行動を理由に、退職金減額認定申請をしたため、厚生労働省で審査をすることになり、しばらくの間、退職金が入金されません。
確かに、私には、在職中に問題行動はありましたが、退職金を減額されることはしていません。
このように、会社が、中退共の退職金減額認定申請をしてきた場合、どうすればいいのでしょうか?
結論から先にいいますと、労働者の問題行動が、中退共の退職金減額の認定基準に該当しなければ、退職金は減額されません。
今回は、①中退共の制度概要、②退職金減額認定申請、③対処法の順番で、中退共の退職金減額について、わかりやく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
まずは、①中退共の制度概要について解説します。
中退共とは、中小企業を対象とした、社外積立型の退職金制度です。
中退共の制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下、「機構」といいます)によって、運営されています。
中退共に加入することを希望する会社は、機構との間で、退職金共済契約を締結し、掛金を機構に納付します。
ちなみに、掛金は非課税で、全額を会社が負担します。
労働者が退職した場合、労働者は、機構に対して、退職金の請求をして、機構から、直接、退職金の支払いを受けます。
通常、労働者の退職金の請求から、4週間程度で、機構から、労働者の預金口座に直接退職金が支払われます。
2 中退共の退職金減額認定申請
次に、②退職金減額認定申請について解説します。
退職する労働者に問題行動があり、会社がその労働者に対して、中退共からの退職金を支払わせたくないと考えた場合、会社は、退職金減額認定申請をすることがあります。
会社が、機構に対して、退職金減額認定申請をして、厚生労働大臣が退職金減額の認定をした場合、労働者の退職金は減額されて、支給されることになります。
なお、会社の退職金減額認定申請が認められて、労働者への退職金が減額されたとしても、会社には、減額された退職金が返還されることはありません。
会社の退職金減額認定申請が認められるためには、労働者が、次の⑴~⑶のどれかに該当する必要があります。
⑴ 窃取、横領、傷害その他刑罰法規に触れる行為により、当該企業に重大な損害を加え、その名誉若しくは信用を著しくき損し、又は職場規律を著しく乱したこと
⑵ 秘密の漏えいその他の行為により職務上の義務に著しく違反したこと
⑶ 正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したこと又は雇用契約に関し著しく信義に反する行為があつたこと
労働者の問題行動が、この⑴~⑶のどれかに該当すれば、中退共から支給される退職金が減額されるリスクがあります。
ちなみに、会社は、労働者が退職した日の翌日から起算して20日以内に、退職金減額認定申請書を厚生労働省に送付する必要があります。
3 退職金減額認定申請の対処法
最後に、③退職金減額認定申請の対処法について解説します。
会社が、退職金減額認定申請をした場合、厚生労働省から、労働者のもとに、照会文が届きます。
その照会文に記載されている、会社が主張している、退職金の減額の理由となる、労働者の問題行動をよく確認します。
会社が主張している問題行動の事実関係をよく確認して、事実と異なる記載があるかをチェックします。
事実と異なる記載があれば、労働者が把握している事実を主張して、会社が主張している事実が誤っていることを、厚生労働省に理解してもらう必要があります。
そして、会社が主張している事実が正しかったとしても、上記⑴~⑶に該当しないという主張をします。
例えば、労働者の問題行動は、刑罰法規に触れる行為ではなく、会社に対して、重大な損害を与えていない、というように、労働者の問題行動は、それほど悪質ではなかったと主張します。
すなわち、労働者の問題行動の評価を争うのです。
このように、事実レベルと評価レベルの2つで、労働者の問題行動は、⑴~⑶の退職金減額の認定基準に該当しないと主張すべきです。
仮に、労働者に問題行動があったとしても、⑴~⑶の退職金減額の認定基準に該当しないことはありえますので、きちんと、自分の主張を、厚生労働省に伝えるべきです。
もっとも、厚生労働省にどのように回答すればよいのか迷うことがありますので、その際には、弁護士に法律相談をすることをおすすめします。
今回の記事をまとめますと、会社が中退共の退職金減額認定申請をしてきた場合には、労働者の問題行動は、⑴~⑶の退職金減額の認定基準に該当しないことを、厚生労働省に回答するべきなのです。
また、You Tubeでも、労働問題に関する役立つ動画を投稿しているので、ご参照ください。
https://www.youtube.com/@user-oe2oi7pt2p
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。