自己都合退職の失業手当の給付制限が2ヶ月に短縮されます
1 雇用保険の失業手当
労働者が会社を退職したときには、
雇用保険から基本手当を受給することができます。
この基本手当は、一般的に失業手当と言われています。
この失業手当について、今年の10月1日から
重要な改正がありましたので、紹介します。
まず、失業手当は、離職理由に関係なく、
労働者が離職後最初にハローワークに求職の申し込みをした
日以後において、失業している日が通算7日に満たない間は
支給されません。
ようするに、失業した労働者がハローワークに失業手当の申請をして、
1週間が経たないと失業手当は支給されないのです。
これを待機期間といいます。
この待機期間については、今回は改正されていません。
2 失業手当の給付制限
次に、解雇などの会社都合による退職の場合には、
待機期間が経過すれば、失業手当が支給されるのですが、
自分から会社を辞めた自己都合退職の場合には、正当な理由がない限り、
待機期間が終了した後に、さらに3ヶ月間の給付制限がかかります。
この3ヶ月間の給付制限が、今年の10月1日から、
2ヶ月間に短縮されました。
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/LL020617-H01.pdf
これまでは、1週間の待機期間に加えて、
3ヶ月間の給付制限の期間を待たないと
失業手当を受給できなかったのですが、これが2ヶ月間に短縮されて、
失業手当を受給しやすくなるので、労働者にとって有利な改正です。
もともと、給付制限は、安易な退職を防ぐために設定されたのですが、
転職が多くなり、失業手当の給付をこれまでよりも早く始めて、
安心して再就職活動や資格取得をできるように環境を整備する目的で、
給付制限の期間が短縮されたのです。
3 自己都合退職における正当な理由とは
ところで、給付制限がかかるのは、
正当な理由がなく自己都合退職した場合であって、
正当な理由がある自己都合退職の場合には、給付制限がかかりません。
この正当な理由とは、以下の理由が挙げられています。
①事業所の倒産
②大量・相当数の人員整理
③適用事業所の廃止
④採用条件と労働条件の著しい相違
⑤賃金の未払い、遅払いの継続
⑥賃金額の低下
⑦過重な時間外労働、
生命身体に関し障害が生じるおそれのある法令違反に対する不改善
⑧労働者の職種転換に対して、
事業主が当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていない
⑨上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせ
⑩退職勧奨、希望退職の募集
⑪全日休業による休業手当の3ヶ月以上の継続的支払い
⑫事業主の事業内容の法令違反
⑬被保険者の身体的条件の減退
⑭妊娠、出産、育児等により退職し、
受給期間延長措置を90日以上受けた
⑮家庭の事情の急変
⑯配偶者等との別居生活の継続の困難
⑰一定の理由による通勤不可能または困難
実務でよく問題になるのが、⑨のいわゆるパワハラを受けて、
会社にいるのが嫌になって自己都合退職する場合です。
上記①~⑰の正当な理由があるかについては、
ハローワークが認定しますので、
会社がパワハラはなかったと主張した場合、
労働者がパワハラの事実があったことを証明できなければ、
正当な理由がなかっとされて、給付制限がかかってしまうのです。
パワハラについては、録音がないとパワハラの事実を
証明するのが困難ですので、パワハラを苦に自己都合退職をしても、
正当な理由がないとして、
給付制限がかかってしまうということがあるのです。
証拠がないために、失業手当について
給付制限がかかるのは酷な話なので、今回の改正で、
給付制限が1ヶ月短縮されたのは、よかったと考えます。
なお、給付制限が2ヶ月になるのは、
離職から5年間のうち2回までなので、3回目になると、
給付制限は3ヶ月になるので、気をつける必要があります。
自己都合退職の場合であっても、
上記①~⑰の正当な理由がある場合には、
給付制限がかかりませんので、
給付制限がかからないかについては、
ハローワークに相談することをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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