退職金を請求するときのポイント
先日,会社から退職金の支払いがないという法律相談を受けました。
労働者が会社にとって不都合なタイミングで退職したり,
会社と労働者と間でトラブルがある場合に,
会社が退職金を支払わないことがあります。
本日は,会社に対して,退職金を請求するには
どうすればいいかについて解説します。
まず,労働者が退職したからといって,
当然に会社に対して退職金を請求できるものではありません。
就業規則,労働契約,労働協約などで退職金を支給することや,
退職金の支給基準が定められていて,
会社に支払い義務のあるものは賃金と認められて,
賃金についての労働基準法の保護を受けることができるのです。
労働基準法には,労働者に対して退職金請求権
を認める直接的な条文がないので,
退職金請求権が認められるためには,
就業規則,労働契約,労働協約などの根拠が必要になります。
そのため,労働者が会社に対して,退職金を請求するためには,
会社の就業規則などに退職金に関する定めがあるかを
チェックする必要があります。
就業規則とは別に,退職金規程を作成している会社もありますので,
会社を辞める前に,会社に対して,退職金規程などの
退職金の根拠となる資料の開示を求めます。
会社を辞めた後に,労働者個人が,会社に対して
退職金規程の開示を求めても,会社が任意に応じない
可能性もありますので,可能な限り,会社を辞める前に,
退職金規程などの資料をコピーしておくのがいいです。
会社から退職金規程の開示を受けたなら,
退職金規程に記載されている退職金の支給基準に従い,
退職金の計算をします。
一般的には,退職金の算定基礎賃金に
勤続年数別の支給率をかけて算定されることが多いです。
退職金の計算をする際には,給料のうちのどの部分までが
退職金の算定基礎賃金に含まれるのかが,
退職金規程に記載されていることが多いので,
給料明細をなくさずにとっておき,
給料明細から退職金の算定基礎賃金を計算します。
勤続年数別の支給率については,
労働者が自分の意思で会社を退職する自己都合退職の場合には,
普通解雇や整理解雇といった会社都合退職の場合に比べて,
支給率が低く設定されていることが多いです。
大幅な給料カットを通告されて,労働者が
「一身上の都合により」などと記載した退職届
を会社に提出した場合には,
自己都合退職なのか会社都合退職なのかが争われることがあります。
次に,退職金を計算できたとして,労働者は,
いつ退職金を請求できるのでしょうか。
退職金規程などに退職金の支払時期が定められている場合には,
その支払時期に請求することになります。
退職金規程に支払時期が記載されていない場合には,
会社は,労働者の請求があってから7日以内に
退職金を支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。
退職金規程に定められている支払時期や,
労働者の請求があってから7日以内に退職金が支払われなかった場合,
会社は,年6%の遅延損害金を負担しなければなりません。
労働者としては,早目に退職金の請求をしておけば,
遅延損害金を請求できる可能性があります。
また,退職金請求権の消滅時効は5年なので,
退職してから5年が経過していないのであれば,
退職金を請求できる可能性があります。
まとめますと,退職金の根拠規程を調査して,
早目に会社に対して退職金を請求することが重要となります。
本日もお読みいただきありがとうございます。