退職強要の対処法
会社から辞めてくれないかと言われることを退職勧奨といいます。
こちらのブログ記事に記載していますが,労働者は,
退職勧奨に応じる必要はなく,会社を辞めたくないのであれば,
はっきりと断ればいいのです。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201812107196.html
ところが,労働者が退職勧奨を受けても,退職に応じない場合,
会社は,あの手この手で労働者を退職に追い込んでくることがあります。
例えば,数人で当該労働者を取り囲んで,
退職届を書くまではその場を離れることができないような状況で
退職届を書かせたり,当該労働者の人格を否定する暴言をはいたり,
当該労働者を無視して,職場に居づらくして退職に追い込む
といった手口があります。
このように,労働者が退職を拒否しているのに,
むりやり辞めさせようとすることを退職強要といいます。
退職強要とは,手段・方法が社会通念上相当ではない
違法な退職勧奨のことなのです。
それでは,労働者は,会社から退職強要をされた場合,
どのように対処するべきなのでしょうか。
まずは,会社からされたことを正確に記録しましょう。
会社からどのようなことをされたのかがわからなければ,
手段・方法が社会通念上相当か否かについて判断ができないからです。
記録をする方法で最も効果的なのが録音です。
退職強要の場合,たいてい,雇用主や上司が当該労働者に対して,
人格を否定するようなひどいことを発言しています。
そのひどい発言が録音されていれば,
こんなこと言ったらだめだよね,というように,
社会通念上相当か否かを判断しやすくなり,
会社に対して慰謝料の損害賠償請求をするかについて,
決断しやすくなります。
逆に,録音がなかった場合,労働者が,
人格を否定するような発言をされたと主張したとしても,
会社側は,そんなことは言っていませんとしらを切る
ことが往々にしてあります。
そうなると,言った言わないという状況となり,
労働者が圧倒的に不利になります。
なぜかといいますと,労働者が退職強要を受けたことを理由に,
会社に対して損害賠償請求をする場合,
人格を否定するような発言をされたことについて,
労働者が証明しなければならないからです。
どういうことかといいますと,民事裁判では,当事者が,
自分に有利な主張をして,その主張を裏付ける証拠を提出し,
裁判所は,当事者の主張と証拠を検討して,
どのような事実があったのかを認定して,判決をくだします。
当事者から,主張と証拠が出されたけれども,
裁判所としては,原告と被告の主張を聞いても,
どのような事実があったのか判断できないことがあります。
例えば,原告の労働者は,上司から人格を否定する暴言をはかれた
と主張し,被告の会社は,上司は人格を否定する暴言をはいていない
と主張し,証人尋問でも,そのような証言がされて,
録音などの記録がない場合,裁判所は,上司が原告の労働者に対して,
人格を否定する暴言をはいたか否かとについて判断ができません。
このような状況を,真偽不明といいます。
とはいっても,裁判で,どちらかわかりませんという判決を書いても,
トラブルは解決しないので,裁判所は,上司が原告の労働者に対して,
人格を否定する暴言をはいたのか,はいていないのかについて,
判断しなければなりません。
このときの判断が,裁判官の個人的な価値基準に基づいて
決められたのでは,裁判の公平さが保てないことになるので,
統一的な判断基準が確立されています。
この判断基準が立証責任(証明責任ともいいます)というもので,
裁判所は,立証責任を負っている当事者の主張を
認めないという判断をするのです。
立証責任は,その事実が認められると,
自分に有利な効果が発生する側が負うことになります。
先の例でいうと,上司が原告の労働者に対して,
人格を否定する暴言をはいたという事実が認められると,
原告の労働者は,慰謝料の損害賠償請求が認めれられるという
有利な効果が発生するので,原告の労働者に立証責任があるのです。
そのため,録音などの記録がなく,真偽不明となれば,
立証責任を負っている原告の労働者が敗訴することになるので,
録音などの記録を証拠として,上司が原告の労働者に対して,
人格を否定する暴言をしたという事実を証明する必要があるのです。
このように,立証責任という観点から,
録音などの記録が重要になるのです。
裁判は,証拠が全てと言っても過言ではないと思います。
長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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