会社におけるいじめ防止義務とは?

子供の世界でも大人の世界でも,残念ながら,

いじめというものはなかなかなくならないです。

 

 

都道府県の労働局で実施されている総合労働相談において,

平成30年度における職場におけるいじめや嫌がらせに関する相談が

全国で82,797件となり,増加の一途をたどっています。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000521619.pdf

 

 

職場におけるいじめや嫌がらせに関する

相談の増加は今後も続きそうです。

 

 

 

では,労働者が,職場でいじめにあった場合,

会社に対して,いじめを防止するための対策をとるように

要求することはできるのでしょうか。

 

 

本日は,使用者がとるべき職場いじめ防止義務について解説します。

 

 

まず,使用者は,労働者が労働するにあたり,

労働者の生命や身体の安全の確保をするように

配慮すべき義務を負っています(労働契約法5条)。

 

 

これを安全配慮義務といいます。

 

 

この安全配慮義務の具体的内容として,使用者には,

職場の上司や同僚からのいじめ行為を防止する,

いじめ防止義務を負っているといわれています。

 

 

このいじめ防止義務の具体的な内容について,

判断した裁判例を紹介します。

 

 

川崎市水道局(いじめ自殺)事件の

横浜地裁川崎支部平成14年6月27日判決

(労働判例833号61頁)です。

 

 

この事件では,上司が部下に対して,

「なんであんなのがここに来たんだよ。」,

「なんであんなのがA評価なんだよ。」などと嫌味をいい,

「経験のために風俗店に連れて行ってやれ。」などとからかい,

オウム真理教の麻原彰晃に似ているとして

「むくみ麻原」,「ハルマゲドンが来た」などと嘲笑していました。

 

 

 

また,団体旅行の際に,上司が部下に対して,

果物ナイフを示して「今日こそは刺してやる」

などと脅かすようなことを言いました。

 

 

このような酷いいじめが執拗に繰り返されて,部下は,

精神的に追い詰められ,欠勤しがちになり,その後,

精神分裂病を発症し,自殺してしまいました。

 

 

この部下の遺族が,いじめをした上司とその使用者である

川崎市に対して,損害賠償請求をしました。

 

 

裁判所は,川崎市の責任者には,いじめの有無を積極的に調査し,

速やかに善後策(防止策,加害者など関係者に対する適切な措置,

配転など)を講じるべきだったのに,これを怠り,

いじめを防止するための職場環境の調整をしなかったとして,

川崎市の安全配慮義務違反を認めて,

遺族の損害賠償請求を認めました。

 

 

この裁判例からは,使用者がとるべき職場のいじめ防止義務の

具体的な内容としては,

①いじめの事実の有無・内容についての迅速かつ積極的な調査,

②いじめの制止などの防止策,

③被害者への謝罪,

④異動などの加害者関係者に対する適切な措置

などが考えられます。

 

 

使用者が,職場のいじめを知ったにもかからわず,

上記の適切な措置をとらなかった場合,

いじめ防止義務に違反したとして,

損害賠償請求をされるリスクがあります。

 

 

会社ではいじめが生じないように,

職場環境を整備していく必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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