会社内における壮絶ないじめや嫌がらせ
今から8年ほど前に,榮倉奈々主演のフジテレビのドラマ
「泣かないと決めた日」が話題になっていました。
主人公のOL榮倉奈々が,会社内で壮絶ないじめの
体験にあうというドラマです。
8年前の私は,弁護士になる前の司法修習生でしたので,
まだ労働事件の現場を知らなかったために,このドラマを見て,
本当にこんなにひどいいじめが会社で行われているのだろうか
と疑問に思っていました。
しかし,弁護士になって,労働事件の法律相談を受けていると,
会社で隔離されている,
同僚から陰湿な悪口を言われている
などのいじめやパワハラの法律相談が多いことを痛感しました。
本日は,いじめや嫌がらせが労災と認定された
国・京都下労基署長(富士通)事件を紹介します
(大阪地裁平成22年6月23日判決・労働判例1019号75頁)。
この事件の原告は,2年以上にわたり,
複数の女性社員から,次のような執拗ないじめや嫌がらせを
受けていたと認定されました。
①同僚の女性社員からパソコン操作について質問を受け,
教えた際,同女から御礼としてケーキをもらったことについて,
女性社員4名から「あほちゃう」,
「あれケーキ食べたいから手伝ったんやで」
などと執拗な陰口を受けた。
②原告に対するいじめの中心人物を含む女性社員4名から
勤務時間中にIPメッセンジャーを使用して毎日のように
同期らに原告に対する悪口を送信された。
③コピー作業をしていた際,女性社員2名から目の前で
「私らと同じコピーの仕事をしていて,高い給料をもらっている」
などと言われた。
④加害者の席が異動により原告の席の近くになった際,
加害者を含む女性社員3名から
「これから本格的にいじめてやる」などと言われた。
⑤女性社員1名から,原告の目の前で他の社員に対して,
「幸薄い顔して」,「オオカミ少年とみんなが言っている」
などと悪口を言われた。
これらのいじめや嫌がらせは,
集団でなされたものであって,
長期間継続してされたものであり,
その陰湿さや執拗さの程度において,
常軌を逸した悪質なひどいいじめや嫌がらせ
であると判断されました。
さらに,原告が上司にいじめや嫌がらせの相談をしても,
会社は何らかの防止策をとったわけではなく,
原告は失望感を深めました。
その結果,いじめや嫌がらせと原告の精神障害発症との間に
因果関係が認められるとして,労災が認められました。
いじめや嫌がらせは,録音をしていないと証明が難しいのですが,
本件事件では,原告が医師やカウンセラーに
いじめや嫌がらせのことを話していたので,
カルテなどにいじめや嫌がらせのことが詳細に記載されていて,
立証がうまくいったのだと思います。
会社で,いじめや嫌がらせを受けた場合,
まずは録音する等の記録に残し,
精神的にしんどいときには,無理せず,
年次有給休暇を使って会社を休み,
心療内科へ通院するようにしましょう。
その後,労災の申請をしたり,
いじめの加害者や会社に対して,
損害賠償請求を検討したいときには,
弁護士に相談するようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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