残業代計算の基礎賃金に含まれる賃金とは?
労働者が未払残業代を請求する場合,
残業代を計算しなければなりません。
残業代の計算方法は,次のとおりです。
残業代=時間単価×残業した時間×割増率
このうち,時間単価は次のようにして計算します。
時間単価=月によって定められた賃金÷月平均所定労働時間
賃金にはどこまでが含まれるのか,
月平均所定労働時間をどうやって計算するのか,
残業した時間をどうやって特定するか,
割増率が時間外労働,深夜労働,休日労働で異なっていることから,
はっきり言って,残業代の計算は面倒です。
残業代の計算は面倒なのですが,
会社に対して残業代を請求するには,
これらのことに対応していかなければなりません。
本日は,残業代請求における時間単価を計算するための
基礎となる賃金にはどこまでが含まれるのかについて解説します。
これは,給料明細に記載されている賃金の各項目のうち,
どこまでが基礎賃金に含まれて,
どれが除外されるのかという問題です。
まず,労働基準法37条5項,労働基準法施行規則21条において,
基礎賃金から除外されるものが記載されています。
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金(結婚手当など)
⑦一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
個人的事情に応じて支払われ,
労働の内容や量との関連性が弱い賃金,
または,計算技術上算定が困難である賃金について,
基礎賃金から除外することにしているのです。
この7つの除外賃金に該当するか否かは,
その名称によらずに,実質的に判断されます。
例えば,⑤住宅手当ですが,基礎賃金から除外されるのは,
住宅に要する費用に応じて算定される手当のことです。
名称は住宅手当であっても,実際には,
住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの,
住宅以外の要素に応じて定率または定額で支給するとされているもの,
全員に一律に定額で支給されているものは除外されません。
昨日のブログで紹介したPMKメディカルラボ事件では,
住宅手当が除外賃金にあたるかも争われたのですが,
この事件の住宅手当は,労働者が親族から家賃補助を受けておらず,
自分名義で契約したアパートに居住している場合に,
労働者の住宅が存在する地域や最寄り駅からの距離に応じて
支給されていることから,住宅手当は除外賃金にあたるとされました。
また,PMKメディカルラボ事件では,業績給が
⑥臨時に支払われた賃金にあたるかについても争われました。
⑥臨時に支払われた賃金とは,
支給条件が確定されているのですが,
支給事由の発生が労働と直接関係のない個人的な事情により
まれに生ずる賃金をいいます。
PMKメディカルラボ事件の業績給は,
店舗ごとの売上目標を達成するという条件が成就した場合に
支給されていたので,支給事由の発生が不確実なものといえ,
⑥臨時に支払われた賃金といえ,除外賃金にあたるとされました。
PMKメディカルラボ事件では,住宅手当と業績給は
除外賃金にあたるとされましたが,手当の名称にとらわれずに,
手当の支給実績などを検討すると,実質的には除外賃金にあたらず,
基礎賃金にふくめられるときもあります。
そのため,労働者は,未払残業代を計算するときには,
給料明細に記載されている各手当がどのような支給基準に基づいて,
実際に支給されているのかをチェックするべきです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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