皆勤手当の不支給は不合理か?~ハマキョウレックス事件差し戻し審判決~
2018年は,正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差が
不合理か否かが争われた裁判の判決が多く出た年でした。
労働契約法20条(法改正により
短時間労働者及び有期雇用労働者の
雇用管理の改善等に関する法律8条)には,
業務内容や責任の程度,
仕事内容と配置の変更の範囲,
その他の事情を考慮して,
正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差が
不合理であってはならないと規定されています。
具体的には,正社員と非正規雇用労働者が
ほぼ同じ仕事をしているのに,
ある手当が正社員にだけ支給されていて,
非正規雇用労働者には支給されていない場合に,
ある手当が非正規雇用労働者に支給されていないのは
不合理であるとして,裁判で争われるのです。
さて,今年6月に労働契約法20条について
重要な判断が下されたハマキョウレックス事件の最高裁において,
皆勤手当について,高裁でもう一度審理をするように,
差し戻されたのですが,この大阪高裁の判決が12月21日にありました。
6月の最高裁判決では,手当の趣旨や目的を個別に丁寧に検討して,
不合理か否かが判断され,大阪高裁でも同じように検討されました。
ハマキョウレックス事件の皆勤手当は,
会社が運送業務を円滑に進めるには実際に
出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから,
トラック運転手に皆勤を奨励する趣旨で支給されていました。
そして,正社員であっても,非正規雇用労働者であっても,
トラック運転手の主な業務は,配車担当者の指示に基づいて
配送業務を行うものであり,仕事内容や責任の程度において,
異なるとことはありません。
トラック運転手に皆勤してもらい,
トラックの配送業務をしてもらうという点において,
正社員と非正規雇用労働者には違いがないのです。
ハマキョウレックス事件では,
正社員と非正規雇用労働者との間には,
能力の開発と人材の育成,
活用に資することを目的とする等級・役職制度の有無や,
配転及び出向の可能性などの点で相違はありますが,
これらの相違は,皆勤手当の趣旨とは
合理的な関連性はないと判断されました。
そして,非正規雇用労働者に皆勤手当が不支給とされていることに
対する合理的な代償措置はなにもありませんでした。
その結果,皆勤手当の趣旨を踏まえると,
正社員と非正規雇用労働者との皆勤手当の支給における相違は,
不合理と認められ,労働契約法20条に違反しており,
皆勤手当2年8ヶ月分の合計32万円の
損害賠償請求が認められました。
正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差については,
賃金の手当の趣旨や目的を個別に丁寧に検討するという
方向性が定着しつつあります。
非正規雇用労働者は,正社員との待遇の格差に
疑問を思ったときには,労働契約法20条に違反しないか,
弁護士に相談することをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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