通勤手当の格差は不合理!
最近,労働契約法20条違反を争う裁判例が増えています。
本日は,正社員と非正規雇用労働者の通勤手当の格差
について争われた九水運輸商事事件を紹介します。
(福岡地裁小倉支部平成30年2月1日判決・
労働判例1178号5頁)
被告会社では,正社員とパート社員にわかれており,
集荷の段階から配達,検品までを行うのは正社員だけでしたが,
それ以外の仕事は,正社員もパート社員も同じでした。
被告会社では,正社員には通勤手当が1万円支給され,
パート社員には通勤手当が5千円支給されており,
5千円の差がもうけられていました。
原告らパート社員は,通勤手当に5千円の差が
もうけられていることについて,
労働契約法20条違反を主張して,裁判をおこしました。
労働契約法20条には,正社員と非正規雇用労働者の
労働条件の違いが,
「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,
当該職務の内容及び配置の変更の範囲
その他の事情を考慮して」,
不合理であってはならないと定められています。
被告会社が通勤手当をもうけた理由は,
少しでも手当が多い方が求人に有利であるというもので,
正社員とパート社員の通勤手当に格差が生じる
合理的な理由ではありません。
また,正社員もパート社員も仕事場へ自家用車で通勤しており,
パート社員の方が正社員よりも通勤時間や
通勤経路が短いということはなく,
被告会社が通勤手当の金額を決めるに当たり,
正社員の通勤経路を調査したこともありません。
被告会社において,通勤手当は,
労働者の通勤のための交通費を補填するものである
という性質からして,正社員とパート社員との間に,
通勤手当に5千円の格差を生じさせることは不合理であるとして,
労働契約法20条違反が認められ,
原告らが主張した毎月の通勤手当5千円の差額分
の損害賠償請求が認められました。
正社員も非正規雇用労働者も等しく会社に通勤しており,
一般的に通勤手当とは,通勤にかかる交通費の補填
という性質があることから,正社員と非正規雇用労働者との間に,
通勤手当について格差があると,
労働契約法20条違反が認められやすいです。
実際に,労働契約法20条違反が争われた
最近の裁判例をみてみると,通勤手当については,
労働者の主張が認められています。
さらに,先日成立した働き方改革関連法の中の
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
の9条において,非正規雇用労働者であることを理由として,
基本給,賞与その他の待遇について,
差別的取扱をしてはならないと改正されました。
今後は,この条文を根拠に,非正規雇用労働者は,
正社員との待遇の格差の是正を求めやすくなります。
非正規雇用労働者が通勤手当の格差に
疑問をいだいたのであれば,
専門家に相談することをおすすめします。
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