未払残業代請求と一緒に請求する付加金とは?
未払残業代を請求する際に,付加金というものを一緒に請求します。
労働基準法114条により,裁判所は,
会社が残業代を支払っていないなど,
労働基準法で支払義務が課せられている一定の金員について,
その未払いがあるときに,労働者の請求により,
未払金と同一額の付加金の支払いを命じることができます。
すなわち,付加金とは,労働基準法で支払いが命じられている
金銭を支払わなかった会社に対して,
労働者の請求により裁判所が命じる
未払金と同一額の金銭のことをいいます。
なぜ,付加金の制度が設けられたのかといいますと,
労働者を保護するために,残業代の支払いをしない会社に対し
一種の制裁として経済的不利益を課すこととし,
その支払いを促すことで労働基準法の各規定の実効性を高めて,
会社による残業代の未払いによって
労働者に生じる損害の填補を図るためなのです。
このような制度趣旨のため,労働者が請求すれば,
裁判所が会社に対して,必ず付加金の支払いを命令するのではなく,
諸般の事情を考慮して,裁判所の裁量によって,
付加金の支払いを命じるか否かが判断されます。
それでは,どのような場合に付加金の支払いが命じられるのでしょうか。
それは,端的に言うと,会社の対応が悪質な場合です。
会社の対応が悪質であった具体例を紹介します。
以前,ブログで紹介した東京港運送事件
で付加金の支払いが認められたので,
どのような事情が付加金の支払いにおいて
考慮されるのかをみてみます。
(東京地裁平成29年5月19日判決・労働判例1184号37頁)
東京港運送事件では,次の事情が考慮されました。
①被告会社は,原告の労働条件をことさらに不明確な状態において,
最低賃金を下回る賃金を適用していたこと。
②原告の時間外労働が1ヶ月100時間を超える月があり,
残業代の支払いがないまま長時間労働が行われていたこと。
③原告は長時間労働による疲労の蓄積や睡眠不足により,
物損事故を起こしたところ,被告会社は,
原告から未払残業代の請求を受けると,
物損事故による168万円の損害賠償請求を原告に示唆して,
威嚇的といえる対応をしたこと。
このように,会社の労働基準法を守らない態度が明らかになったり,
労働者に対してひどい対応をした会社には,
付加金という制裁がなされるリスクがあります。
会社が未払残業代の事実を認めて,労働者に対して,
未払残業代を支払えば,付加金の支払いを命じられることはありません。
労働者としては,会社の対応の悪質性を主張して,
未払残業代請求と一緒に付加金の請求をしていきます。
付加金の請求で注意が必要な点は,
付加金は2年で自動的に消滅してしまうことです。
未払残業代請求は,会社に請求書を内容証明郵便で送付して,
6ヶ月以内に裁判手続を行えば,消滅時効を中断できるのですが,
付加金の場合,消滅時効のように中断をすることができないのです。
未払残業代請求をするときには,
忘れずに付加金の請求を一緒にしましょう。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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