時間外労働の上限規制2~36協定を締結しても超えてはならない上限~
昨日,公益社団法人全国労働基準関係団体連合会主催の
「トラブルのない明るい職場を目指す労働判例・政策セミナーin金沢」
の講師をさせていただきました。
3時間のセミナーだったので,準備も大変でしたし,
何よりも,3時間ずっと話すのが思いのほか大変でした。
声が枯れるし,喉も痛くなりました。
3時間のセミナーは大変でしたが,良い経験となりましたし,
何よりも,セミナーのために,
最新の裁判例や働き方改革関連法について,
たくさん勉強したので,知識が定着しました。
アウトプットを前提としたインプットをすることで,
自己成長できることを改めて実感しました。
さて,昨日に引き続き,時間外労働の上限規制の説明します。
36協定を締結しても,次の時間外労働の上限に違反した場合には,
刑事罰の対象となります。
1つ目は,1ヶ月の時間外労働(休日労働を含む)の時間数が
100時間未満を超えてはなりません(改正労働基準法36条6項2号)。
2つ目は,2ヶ月から6ヶ月の各平均時間外労働(休日労働を含む)
が80時間を超えてはなりません(改正労働基準法36条6項3号)。
時間外・休日労働の合計について,
当月を含めた直前の2ヶ月平均,3ヶ月平均,
4ヶ月平均,5ヶ月平均,6ヶ月平均の全てにおいて,
1ヶ月あたり80時間以下としなければならないのです。
例えば,12月に85時間,1月に70時間,2月に90時間
の時間外・休日労働をした場合,
12月と1月の1ヶ月当たりの平均は77.5時間,
1月と2月の1ヶ月当たりの平均は80時間となり,
80時間以下なのですが,
12月,1月,2月の1ヶ月当たりの平均は81.6時間となり,
80時間を超えるので,刑事罰の対象となります。
この2つの上限のいずれかに違反した場合,会社には,
懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金が科されます。
時間外労働の上限規制は,休日労働を含むか否かが
バラバラになっているため,非常にわかりにくいのですが,
とりあえずは,時間外労働と休日労働が1ヶ月100時間を超えるとき,
もしくは,2ヶ月から6ヶ月の各平均時間外労働と休日労働が
80時間を超えるときに,刑事罰が科せられるようになったことだけを,
まずはご理解ください。
さて,今回の労働基準法の改正により,
時間外労働の上限規制となる1ヶ月45時間までの限度時間や,
1ヶ月100時間未満の特別条項を36協定で
規定できることになりますが,留意すべき事項について,
指針が定められました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf
この指針には,次のことが記載されています。
労働時間の延長及び休日労働は
必要最小限にとどめられるべきであること。
会社は,36協定の範囲内で時間外労働をさせた場合であっても,
安全配慮義務を負っていること。
時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し,
業務の範囲を明確にすること。
特別条項により,1ヶ月45時間の限度時間を超えて
時間外労働をさせる場合であっても,
限度時間にできる限り近づけるように努めること。
ようするに,時間外労働は1ヶ月45時間までしか
させてはいけないのが原則であり,
その例外となる特別条項による1ヶ月45時間を超える
時間外労働は極力避けられなければならないのです。
会社としては,刑事罰を避けるために,
長時間労働をしている労働者がいる場合,
しっかりと労働時間を把握し,
1ヶ月ごとの時間外労働と
2ヶ月から6ヶ月の各平均時間外労働を記録し,
時間外労働の上限規制に違反していないかを
細かくチェックしていく必要があります。
その過程で,労働者の長時間労働が
是正されていくことを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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