解雇なのか自己都合退職なのか
昨日,解雇だと思っていたら,離職票の離職理由には,
退職勧奨による退職と記載されており,
会社に対して,離職理由の訂正を求めたところ,
会社が離職理由を解雇に訂正してくれたケースを紹介しました。
このケースでは,無事,離職理由を訂正してくれて,
会社が解雇であることを認めてくれたのでよかったですが,
会社が解雇であることを認めず,
退職勧奨に応じて相談者が自己都合退職したと主張してきた場合は,
相談者は,どう対応できるのでしょうか。
これは,労働者が会社を辞めたのが,
解雇なのか,自己都合退職なのか,
という事実認定の問題となります。
すなわち,労働者が会社を辞めるに際し,
会社側からどのようなことを言われて,
労働者は,それに対してどのような言動をしたのか,
ということを証拠に基づいて,証明して,
事実を認定していくことになるのです。
それでは,このように解雇か自己都合退職かという
事実認定が争われた裁判例である,ベストFAM事件を紹介します
(東京地裁平成26年1月17日判決・労働判例1092号98頁)。
この事件は,採用から1ヶ月半が経過しても,
新規契約を成立できなかった原告に対して,被告会社の社長が
「成績があがらないからやめてくれ」と告げられて,
原告が退職したというものです。
被告会社は,解雇ではなく自己都合退職であると主張して争いました。
なぜ,被告会社が,自己都合退職であると主張したのかといいますと,
解雇と判断されれば,営業成績が向上するように
指導したりした形跡がないので,解雇は無効と判断されて,
解雇時点以降の未払い賃金を支払わなければならなくなってしまうので,
それを避けたかったからだと思います。
しかし,裁判所は,次の事実を認定して,解雇と判断しました。
まず,原告の労働者は,退職した後にすぐにハローワークへ行き,
解雇されたのに離職票を送ってきていないことを相談しました。
次に,原告の労働者は,労働基準監督署へ行き,
解雇に関する申告書に,社長から,
1ヶ月半たっても成績が上がらないならやめてくれと言われて,
それって解雇ということですかと聞いたら,社長は,
そうだと回答したことを記載して提出しました。
そして,原告の労働者は,労働局のあっせんの申立をし,
その申請書に,「社長に呼び出され,即日退職を執拗に迫られました。
理由は1ヶ月以上経っているのに1件も上がっていないとのことでした。」,
「そこで私は,自己都合での退職の意思がないので
最後に『それは解雇という意味ですか?』と尋ねると
『そうです』と明快な回答が返ってきました。
それで,即日解雇された,という認識を持ちました。」と記載しました。
このように,原告は,一貫して,即日解雇されたことと,
営業成績が不良という解雇理由を主張していたのです。
さらに,解雇時の年齢が58歳であり,再就職が困難な年齢であり,
なるべく長く被告会社で働くことを希望しており,
入社後1ヶ月半で自分から退職する合理的な理由はありませんでした。
以上の事実を認定して,解雇であったと認められて,
解雇は理由がないとして無効となりました。
解雇された場合,会社は,解雇とは言っていないので
自己都合退職であると争ってくる可能性がありますので
,労働者は,一貫した態度で,不当解雇であると
主張し続ける必要があります。
このような争点を未然に防ぐためにも,
会社との解雇のやりとりをボイスレコーダーに録音しておくと,
立証が簡単になるので,おすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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