新型コロナウイルスの感染拡大を理由とする整理解雇が認められるか
1 新型コロナウイルスを理由とする整理解雇が増えそうです
厚生労働省は,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,
全国で888人が解雇や雇止めされる
見通しがあることを明らかにしました。
https://www.asahi.com/articles/ASN3W6H4HN3WULFA01G.html
解雇や雇止めが多くなりそうなのは,
観光客の減少が経営を直撃する観光業のようです。
今後,日本における新型コロナウイルスの感染拡大が増えていけば,
解雇や雇止めも増えていくことが予想されます。
それでは,正社員が会社から新型コロナウイルスの影響で
経営が厳しいので解雇すると言われてしまった場合,労働者は,
どうすればいいのでしょうか。
本日は,新型コロナウイルス感染拡大と整理解雇について解説します。
2 整理解雇の4要件
会社の経営上の必要性に基づき行われる解雇を整理解雇といいます。
会社の経営状況の悪化に基づき,人件費削減のために行われるのが
整理解雇の典型例であり,今回の新型コロナウイルスの感染拡大の
影響による会社の業績悪化を理由とする解雇は,まさに整理解雇です。
整理解雇は,労働者に責任のない会社側の事情に基づくものなので,
労働者側を保護する必要性が高いため,会社は,
次の整理解雇の4要件を全て満たさなければ,
整理解雇は無効になります。
①人員削減の必要性があること
②解雇回避努力を尽くしたこと
③人選が合理的であること
④説明・協議を尽くすなど,解雇手続が相当であること
新型コロナウイルスを理由とする整理解雇の場合,
①と②の要件が特に重要になると考えます。
①人員削減の必要性ですが,経営状況が悪化して,
経費削減の必要性が認められても,
それが人員削減によって達成されなければならない程度に
達していない場合や,人員削減以外の経費削減によって
達成できる程度のものである場合には,
人員削減の必要性は否定されます。
すなわち,新型コロナウイルスの影響で一時的に客がいなくなったや,
仕事が少なくなって売上が減ったという程度の理由では,
①人員削減の必要性は認められないことになります。
3 雇用調整助成金
また,②解雇回避努力ですが,新型コロナウイルスについて,
雇用調整助成金制度の要件が緩和されて,
会社が支払った休業手当の一部の助成が容易になっているので,
整理解雇の前に,労働者を休業させて,
休業手当を支払うなどの解雇回避措置をとっていない場合には
,解雇回避努力を尽くしていないと判断されると考えます。
雇用調整助成金とは,経済上の理由により
事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が,労働者に対して,
一時的に休業,教育訓練または出向を行い,
労働者の雇用の維持を図った場合に,
休業手当,賃金などの一部を助成するものです。
例えば,取引先が新型コロナウイルスの影響を受けて
事業活動を縮小した結果,受注量が減ったために
事業活動が縮小した場合や,行政からの営業自粛要請を受けて,
自主的に休業を行い,事業活動が縮小した場合などに利用できます。
この雇用調整助成金を活用せずに,いきなり整理解雇をしたのでは,
会社は,②解雇回避努力を尽くしていないとして,
整理解雇が無効になると考えます。
そのため,新型コロナウイルスの影響による整理解雇といえども,
簡単にできるものではなく,労働者としては,あきらめずに,
整理解雇を無効として職場復帰したり,
一定の金銭の支払を受けて退職するなどの解決方法がありますので,
弁護士に相談するようにしてください。
なお,石川県では,4月6日月曜日10時から15時までの時間帯に,
新型コロナウイルス労働問題ホットラインを実施します(日本労働弁護団主催)。
この日時に076-221-4111に電話していただければ,
弁護士が新型コロナウイルスに関する労働者側の労働問題について,
電話でアドバイスします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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