解雇された後に別の会社で働いても問題はないのか?

解雇された労働者は,以前の勤務先から

給料がもらえなくなるので,生活が苦しくなります。

 

 

雇用保険の基本手当を受給できれば,

しばらくの間はしのげますが,

ずっと無職のままでいるのは辛いですし,

勤務していた期間が短いと雇用保険の基本手当を

受給できない場合もあります。

 

 

 

 

そのため,解雇された労働者は,次の仕事をみつけて,

新しい職場で給料をもらいながら,

以前の勤務先に対して,解雇を争うことになります。

 

 

この場合,以前の勤務先から,別会社に就職したということは,

解雇を承認したことになるなどという主張がされることがあります。

 

 

本日は,解雇されて別会社へ就職した場合にも,

解雇された以前の勤務先に対して,

未払賃金を請求できるのかについて解説します。

 

 

そもそも,労働者は,働くことによって,

会社に対して,賃金を請求することができます。

 

 

これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。

 

 

そのため,労働者が働いていない場合には,

原則として,会社に対して,賃金を請求できません。

 

 

労働者が解雇された場合,解雇後に労働者は,

働いていないので,賃金を請求できるのかが問題となります。

 

 

解雇が有効の場合には,ノーワーク・ノーペイの原則に従い,

労働者は,賃金を請求できませんが,

解雇が無効の場合,労働者は,無効な解雇によって

会社から働くことを拒否されたこととなり,

会社の「責めに帰すべき事由」によって,

労働者が働けなかったわけなので,

民法536条2項本文を根拠に,労働者は,

会社に対して,賃金を請求できるのです。

 

 

 

民法536条2項本文を根拠に,労働者が会社に対して,

未払賃金を請求する場合,労働者には,

働く意思と能力が必要となります。

 

 

解雇された労働者には,働く能力があることがほとんどですので,

働く意思があることを表示することが重要になります。

 

 

そこで,解雇を争う場合,労働者は,会社に対して,

「解雇は無効なので,働かせてください。」

という内容の通知書を作成して,

配達証明付内容証明郵便で会社に送付します。

 

 

これで,会社に対して働く意思があることを

表示したことになりますので,

民法536条2項本文に基づいて,

未払賃金を請求できます。

 

 

会社に対して働く意思があることを表示しておけば,

他の会社で働いて給料をもらったとしても,

解雇した以前の勤務先に対して未払賃金を請求できるのです。

 

 

この点について,聖パウロ学園事件の

大阪高裁平成12年1月25日判決(労働判例794号7号)

が参考になります。

 

 

この事件では,解雇されていた期間中に喫茶店を営業していた

労働者の賃金請求権が認められました。

 

 

その理由としては,「使用者の責めに帰すべき事由により

解雇された労働者は,収入を得る途が閉ざされることになり,

不当であることは明らか」だからなのです。

 

 

このように,単に労働者が解雇後に

他の会社で働いていたというだけでは,

労働者が働く意思を失ったとは認められず,

解雇した会社に対して,未払賃金を請求できるのです。

 

 

そのため,解雇された労働者は,働く意思を表示しておけば,

収入を得るために,解雇後に他の会社で働いても問題ないことになります。

 

 

もっとも,他の会社で働いて得た収入については,

中間収入として未払賃金から控除されるという別の問題がありますが,

この問題については,明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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