パワハラによるアイドルの自殺
松山市を拠点とする農業アイドル愛の葉Girls
のメンバーだった大本萌景さん(当時16歳)が自殺したのは,
過重労働やパワハラなどが原因であったとして,
遺族が所属していた会社Hプロジェクトなどに対して,
約9200万円の損害賠償請求訴訟を松山地裁に起こしました。
(弁護士ドットコムニュースより抜粋)
遺族が主張する過重労働は,
早いときには午前4時30分に集合し,
解散は翌日の午前2時ころになるなどの長時間の拘束,
平日もイベントに駆り出され,休みの日がほとんどなく,
学業よりも仕事を優先させられたなどというものです。
また,遺族が主張するパワハラは,
スタッフに脱退したい旨を伝えると,
LINEで「次また寝ぼけた事言い出したらマジでブン殴る」と返信され,
休日を希望すると「お前の感想はいらん」,
「その理由によって,今後事務所はお前の出演計画を考えにゃならん。
そこまで考えて物を言え」と返信されたとなどというものです。
過重労働については,大本さんが自殺前の6ヶ月間に,
どれだけの時間,労働していたかが重要なポイントになります。
アイドルの場合,タイムカードとかがなさそうですので,
どうやって労働時間を証明するのかが気になります。
大本さんは,当時16歳でしたので,過重労働が真実であれば,
会社は,労働基準法の年少者の保護規定に違反したことになります。
労働基準法60条で,15歳以上18歳未満の年少者については,
36協定による残業や休日労働が禁止されています。
ただし,1週間の労働時間が40時間をこえない限り,
1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合においては,
1日に労働時間を10時間まで延長することが可能となります。
また,労働基準法61条により,
満18歳に満たない年少者については,
午後10時から午前5時までの深夜の時間帯
に働かせることが禁止されています。
会社が労働基準法の年少者の保護規定を守っていなかったとすれば,
会社が労働者の生命や健康に配慮しなければならない義務
(安全配慮義務といいます)に違反していたといいやすくなると考えます。
また,パワハラについては,パワハラの事実を
どうやって証明するのかがハードルになります。
しかし,本件においては,LINEのメッセージが残っていたので,
パワハラの事実は証明できると遺族側は考えたのだと思います。
16歳の女子学生に対して,
上記のようなLINEのメッセージを送ることは
パワハラに該当すると考えられますが,
他のパワハラ事件では,どの程度までいけば,
違法なパワハラになるのかについて線引が難しいことが多いです。
そこで,現在,労働政策審議会において,
職場でのハラスメントを法律で禁止して,
パワハラ防止を企業に義務付ける法律を
制定するべきかが議論されています。
アイドルのパワハラによる自殺という痛ましい事件によって,
パワハラを防止する機運が高まっていますので,
パワハラ防止策の法制化をぜひ実現してもらいたいです。
こちらのURLにアクセスしていただくと,
パワハラ禁止の法律作成の電子署名のサイトがありますので,
ぜひ電子署名にご協力いただければ幸いです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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