解雇を労働審判で解決する2

昨日に引き続き,労働審判の解説をしていきます。

 

 

労働審判の申立をすると,裁判所が期日を決めます。

 

 

 

 

その期日の1週間前くらいに,会社が答弁書という,

労働審判申立書に対する反論を記載した文書を提出してきます。

 

 

期日までに,時間的な余裕があれば,

答弁書に対する反論を記載した準備書面を提出しますし,

準備書面を出せなくても,クライアントと打ち合わせをして,

答弁書に対する反論を検討します。

 

 

労働審判の期日当日には,クライアントも出席します

 

 

裁判官と労働審判員は,期日までに裁判記録を読んで,

疑問に思ったことや気になることを,当事者に直接質問してきます

 

 

通常の裁判手続でいう証人尋問が,

労働審判では第1回期日から行われるので,

裁判所側からの質問に的確に受け答えができるように

準備しておく必要があります。

 

 

ちなみに,通常の裁判の場合,証人尋問は,

訴訟の最後の方に行われます。

 

 

第1回期日では,裁判所側が当事者双方の言い分を聞き取り,

会社が労働者に対して,いくらくらいの金銭を支払うなら

調停が成立できるのかを模索します。

 

 

 

会社の解雇があまりに不当な事案であれば,

裁判所側が会社を強く説得してくれて

1回目の期日で調停が成立することもあります。

 

 

もっとも,1回目の期日は,当事者の言い分の確認をして,

2回目以降の期日から調停に向けての調整が行われることが多いです。

 

 

解雇された労働者としては,会社からいくらくらいの金銭をもらえれば,

解雇されたことを納得できるかを検討しておく必要があります。

 

 

依頼している弁護士に相談して,この事件であれば,

いくらくらいの金銭が妥当なのかを協議して,

どこまでなら譲れるかを検討します。

 

 

労働審判では,当事者双方が譲り合い,

調停を成立させて,早く紛争を解決することを目的にしています。

 

 

そのため,解雇が無効と判断されるか微妙な事案では,

労働者側が大きく譲歩しなければならないことがあります。

 

 

弁護士としては,解雇が無効になる見込みがどれくらいあるのか,

クライアントの次の就職先が決まっているか,

クライアントがどこまで争う意思があるのかを見極めながら,

クライアントの意向を尊重しつつ,

クライアントが取得できる金銭がいくらなら

調停を成立させるべきかを模索していきます。

 

 

長くなりましので,続きは明日以降に記載します。

解雇を労働審判で解決する

解雇の法律相談を受けていますと,

会社の解雇に納得していない方がほとんどです。

 

 

なぜ自分が解雇されたのかわからない,

会社が言っている解雇理由はおかしい,

などの不満を持っておられます。

 

 

 

解雇された労働者は,自分を解雇するような会社に

復職することを希望する方は少なく,会社に対して金銭請求をして,

一矢報いたいと希望される方が多いです。

 

 

そのような場合,利用する裁判手続が労働審判です。

 

 

労働審判とは,労働者個人と会社の労働紛争について,

裁判官と労使の専門委員で構成される労働審判委員会が,

事件の審理を行うとともに,

調停(話し合いによる紛争解決)を試み,

調停が成立しない場合には,

労働審判委員会が労働審判(通常の裁判における判決に相当するもの)

を出すという裁判制度です。

 

 

 

 

労働者が労働審判の申立をするには,

労働審判申立書を作成して,

裁判所に提出する必要があります。

 

 

この労働審判申立書には,

会社における労働条件,

解雇にいたる経緯,

解雇が無効である理由などを,

証拠をもとに詳細に記載します。

 

 

通常の裁判を起こすときに裁判所へ提出する訴状であれば,

A4で3~5ページくらいの分量ですが,

労働審判の場合は,3回で終わりますので,

最初の申立の段階で,労働者が主張するべき事実を全て出し切る

必要があり,申立書は10~20ページくらい

の分量になることが多いです。

 

 

労働審判が通常の裁判と異なる点として,回数制限があげられます。

 

 

通常の裁判は,裁判期日の回数に制限がないため,

裁判を起こしてから判決がでるまで約1年以上かかりますが,

労働審判は,3回以内の期日で結論がでますので,

申立をしてから約3ヶ月程度で決着がつきます。

 

 

そのため,労働審判は,通常の裁判よりも

早く解決できる場合が多いです。

 

 

また,通常の裁判は,裁判官だけが審理を行いますが,

労働審判は,裁判官1人に加えて,使用者側から1人,

労働者側から1人の労働審判員が審理に加わります。

 

 

裁判官ではない労働審判員が労働審判に参加するのは,

労働現場の実情について十分な知識と経験を有する人物を

審理に参加させることで,紛争の実情に即した

適正な解決を図るためです。

 

 

さらに,通常の裁判では,主張と証拠のやりとりを複数回の期日で行い,

ある程度の段階になると,和解という話し合いによる解決

がされる場合がありますが,労働審判では,第1回の期日から,

調停という話し合いの解決が実施されることがあります。

 

 

 

 

労働審判では,調停が成立することが多く,

会社が労働者に対して金銭を支払う旨の調停が成立すれば,

会社は,調停に従い,労働者に金銭を支払います。

 

 

調停には,判決と同じ効力があり,

会社が調停の内容を守らなかった場合,

労働者は,会社に対して,会社の預金を差し押さえる

などの強制執行をすることができるので,会社は,

強制執行をされたくないので,労働者に対して金銭を支払うのです。

 

 

このように,労働審判には,通常の裁判にはない

メリットがありますので,解雇を争う場合,

労働審判を利用することがよくあります。

 

 

長くなりましので,続きは明日以降記載します。

 

移動時間は労働時間なのか

未払残業代請求の事件では,ある時間が労働時間か否か

が争われることがよくあります。

 

 

ある時間が労働時間に該当すれば,会社は,その時間分の賃金を,

労働者に支払わなければならなくなります。

 

 

また,会社が労働時間ではないと主張していた時間が

労働時間になれば,労働者は,会社が想定していたよりも

長く働いていたことになり,残業していたことになるので,

未払残業代が発生するのです。

 

 

そこで,本日は,労働時間か否かが争いになる

移動時間について解説します。

 

 

まず,通勤時間について検討します。

 

 

 

 

そもそも,労働時間とは,労働契約に基づき,

労働者が会社に対して,労働を提供している時間です。

 

 

これに対し,通勤とは,労働者が会社に労働を提供する

前の準備行為と位置づけられています。

 

 

また,電車やバスの通勤であれば,通勤時間中は寝ていても,

本を読んでいても,スマホをしていても,労働者の自由です。

 

 

そのため,通勤時間は労働時間とはいえません。

 

 

会社へ通勤するのではなく,会社の外の仕事現場へ

直行直帰する場合の移動時間も,

通勤時間と同じで労働時間とはいえません。

 

 

次に,外回りの営業マンが営業先から営業先へ

移動する時間について検討します。

 

 

通常,営業マンは,営業先から営業先へ寄り道をせず,

まっすぐに移動するように指示されております。

 

 

そのため,営業先から営業先への移動は,

会社からの指揮命令下に置かれている時間

といえますので,労働時間となります。

 

 

最後に,出張中の移動時間について検討します。

 

 

 

 

出張中の移動時間も,就労場所へ移動するという,

労働を提供するための準備時間といえます。

 

 

また,電車で長距離移動しても,電車の中で,

寝ていようが,スマホをしていようが,

労働者の自由であることがほとんどです。

 

 

そのため,原則として,出張の移動時間も労働時間にはなりません

 

 

もっとも,移動時間中に,出張先の会議で使用する資料を

パソコンで作成していたり,出張の目的が物品を運ぶことであり,

移動中その物品を監視しなければならない場合には,

出張の移動時間であっても労働時間といえることがあります。

 

 

なお,出張先への移動が休日に行われたとしても,

休日労働として取り扱われないことになります。

 

 

このように,通勤時間や出張先への移動時間は

労働時間とはいえませんので,未払残業代を計算するときに,

何時から何時まで働いたのかを算出する際,注意する必要があります。

パワハラ事件における3つのハードル

パワハラの法律相談を受けていると,次の3点が問題となります。

 

 

①パワハラを証明する証拠があるか

(ボイスレコーダーなどでやりとりを録音していれば,

この問題はクリアできる可能性があります)。

 

 

②損害賠償請求が認められるほど酷いパワハラと判断されるのか

(どのような言動であれば,違法なパワハラといえるのか)。

 

 

③損害額が小さい(パワハラでうつ病になった場合ですと,

治療費,休業損害,慰謝料が損害となりますが,

損害賠償額があまり多くなりません)。

 

 

この3つのハードルがあるため,パワハラの法律相談を受けても,

「会社や上司に対して,損害賠償請求をしたほうがいいですよ」

とアドバイスしにくいのが現状です。

 

 

 

 

また,パワハラでうつ病になった場合,

労災申請をすることも検討しますが,損害賠償請求と同様に,

①パワハラを証明する証拠があるのかが問題となりますし,

労災と認定される件数が少ないのが現状です。

 

 

このようにパワハラの案件では,損害賠償請求まで行き着くのに

ハードルがありますが,パワハラの損害賠償請求が認められた

裁判例がありましたので,紹介します。

 

 

建築会社で働いていた労働者が上司からパワハラを受け,

うつ病を発症して働けなくなったとして,

パワハラをした上司と会社を訴えました

(名古屋地裁平成29年12月5日・判例時報2371号121頁)。

 

 

なお,この原告の労働者は,裁判を起こす前に,

労災の申請をして,うつ病発症前6ヶ月の間に,

「ひどい嫌がらせやいじめ,又は暴力を受けた」,

「達成困難なノルマを課された」という出来事があり,

心理的強度の負荷が「強」と判断されて,労災認定されました。

 

 

労災の認定があると,裁判でも,

パワハラがあったと認定されやすくなります。

 

 

裁判所が認定した上司のパワハラは次のとおりです。

 

 

 

 

・上司は原告に対し,社内の雰囲気が緩むとして,

他の社員と接触しないように定時よりも早く帰社して

タイムカードに打刻した上で夜の営業にいくように指示しましたが,

この指示に従った原告に対して,「なんでこんなに早く帰ってきたのか。

他の社員がまだがんばって外回りしているのに,何を考えているのだ」

と叱責しました。

 

 

・「お前は営業センスがないから退職を考えたほうがいい」

と言って退職勧奨しました。

 

 

・上司は,病気休暇あけの原告に対し,

「これだけ休んでおいて,新規顧客はないのか。

一度ケツをわった人間がのこのこ帰ってこられると思うなよ。

新規顧客をそろえなかった場合には,今度こそ引導を渡すからな」,

「支店長もおまえはガンだと言っている」と言って,

過酷なノルマをかして,侮辱しました。

 

 

・上司は,原告に対し,「支社に顔を出すな。

おまえみたいながんウイルスがいると会社の雰囲気が悪くなるし,

みんなにうつるから直行直帰で仕事をするように」

と言って,侮辱しました。

 

 

・上司は,原告に対し,「会社にいる必要はない。辞めてほしい。

使えない社員がいると分母が広がって目標達成できない」,

「お前,キモいねん。もういいからお願いだから辞めてくれ」

と言って,退職勧奨をしました。

 

 

判決文からは,原告が上司の言動をどうやって証明したのかは

よくわかりませんが,さすがにこんな酷いことを言われたのであれば,

違法なパワハラと認定されます。

 

 

さらに,会社は,パワハラの研修をしたり,

パワハラの抜き打ち調査をするなど一定の措置をとっていましたが,

それが奏功していなかったとして,

上司の選任や監督について相当の注意をしていないとして,

会社に対する責任が認められました。

 

 

上司のパワハラが認定されて,上司と会社に責任が認められたのですが,

慰謝料は100万円となりました。

 

 

パワハラの事件では,慰謝料100万円は高い方ですが,

交通事故の慰謝料は,後遺障害が一番低い14級でも

慰謝料110万円なので,交通事故と比較すると

慰謝料の金額が低いことがわかります。

 

 

パワハラの慰謝料の金額が高くなれば,

そんなに高額な慰謝料を支払いたくないから

パワハラをしないように気をつけようと考える人が多くなって,

パワハラの予防になるのではないかと思います。

 

 

今後は,パワハラ事件の慰謝料の金額が

増額されていくことを期待したいです。

外回りの営業マンの残業代請求

外回りの営業マンの場合,会社の外で仕事をしているので,

会社は,営業マンが外回りをしているときの

労働時間を算定することが難しいときがあります。

 

 

そのような場合,会社が,事業場外労働のみなし時間制という制度

を利用して,会社の外で行った仕事について,

一定の労働時間仕事したものとみなして,

残業代を支払わないようにしていることがあります。

 

 

例えば,営業マンが会社の外で9時間働いたとします。

 

 

 

 

通常であれば,この営業マンは,1日8時間を超えた

1時間分の残業代を会社に対して請求できます。

 

 

ところが,事業場外労働のみなし時間制が適用されれば,

営業マンが会社の外で働いた時間が9時間であっても,

所定労働時間(労働契約で定められている勤務時間)である

7時間45分働いたとみなされてしまい,

1日8時間以内の労働となり,

残業代を請求することができなくなります。

 

 

会社から,事業場外労働のみなし時間制だから,

残業代は一切支払う必要がないと言われた場合,

労働者は,残業代請求をあきらめなければならないのでしょうか。

 

 

結論をいうと,事業場外労働のみなし時間制が有効に適用される

ことは少なく,労働者は,残業代請求をあきらめなくてもよいのです。

 

 

事業場外労働のみなし時間制を適用するための要件の一つに,

労働時間を算定し難いとき

というものがあります(労働基準法38条の2第1項)。

 

 

会社の外で働いている労働者の労働時間を会社が把握・算定できる

のであれば,事業場外労働のみなし時間制は適用されないのです。

 

 

そして,「労働時間を算定し難いとき」とは,

「就労実態等の具体的事情をふまえ,社会通念に従い,

客観的にみて労働時間を把握することが困難であり,

使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合

とされています(東京高裁平成23年9月14日判決・

阪急トラベルサポート事件・労働判例1036号14頁)。

 

 

もうすこし具体的に検討すると,

会社の事前の具体的指示があったり,

労働者が日報を提出して,

事前または事後に業務予定の報告を会社にしていたり,

携帯電話や電子メールを利用して業務指示や

業務報告が行われていたならば,

労働時間を把握することが可能であり,

会社の具体的な指揮監督が及んでいるといえます。

 

 

このように,会社から,事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

これらの事情があれば,事業場外労働のみなし制は適用されなくなり,

実際に働いた時間で残業代を計算して

会社に請求すれば,認められることになります。

 

 

また,仮に,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

外回りの営業マンが仕事をするために必要とされる時間が

平均的に7時間45分ではなく,9時間であれば,

みなし労働時間は7時間45分ではなく9時間となり,

1日8時間を超える1時間分の残業代を請求できます。

 

 

さらに,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

休日労働と深夜労働については,通常どおり残業代を請求できます

 

 

現在では,通信技術が発達しており,会社は,

労働者が今どこにいるのかをリアルタイムに把握することができ,

思い立ったときに,指示を与え,報告を求めることができますので,

「労働時間を算定し難いとき」は少なくなっています。

 

 

 

そのため,会社から事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

認められることはあまりないと考えられますので,

労働者,あきらめずに残業代請求を検討してみてください。

タイムカードがなくても未払残業代請求をあきらめない

未払残業代の法律相談を受けていると,

タイムカードなどで労働時間の把握をしていない中小企業があり,

労働者も自分で労働時間の記録をつけておらず,

労働時間をどうやって証明するべきかについて悩む場面が多々あります。

 

 

 

 

厚生労働省は,

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

を定めており,会社は,労働時間を適正に管理するため,

労働者の労働日ごとの始業時刻・終業時刻を確認し,

これを記録することが義務付けられています

 

 

しかし,この労働時間把握義務が守られていないのが現状です。

 

 

また,自分の労働時間を,残業代計算アプリなどを利用して,

自分自身で記録している労働者も少ないのが現状です。

 

 

他方で,裁判では労働時間を証明する責任は労働者にあるので,

労働者は,労働日ごとに,何時から何時まで働いたのかを

特定して主張しなければならないので,

労働時間を証明するための証拠がない場合には,

どう対応すべきか頭を悩ませます。

 

 

この労働時間の証明において,

労働者に有利な判断をした裁判例を見つけたので,

紹介させていただきます。

 

 

その裁判例とは,大阪高裁平成17年12月1日判決・

ゴムノイナキ事件・労働判例933号69頁です。

 

 

この事件では,被告会社では,タイムカードなどを

用いた出退勤管理は行われていませんでした。

 

 

原告の妻は,原告の帰宅が遅いことから,

その体調を心配して,7ヶ月間ほど,

原告の帰宅時間を30分単位でノートに記載していました。

 

 

 

 

原告が退社後に飲み会に参加するなどの寄り道をした可能性があり,

また,原告が帰宅したときに妻が寝ていたときには,翌朝,

原告が妻に帰宅時間を伝えたのですが,それでは正確な記録とはいえず,

妻のノートの帰宅時間だけでは,

退社時刻を確定することはできませんでした。

 

 

ようするに,妻のノートは,

証拠としての価値は低いと判断されたのです。

 

 

自宅と会社の距離が近く,

退社時刻と帰宅時間との時間差が短いのであれば,

帰宅時間で退社時刻を確定することも可能だったのかもしれません。

 

 

しかし,裁判所は,タイムカードなどによる

出退勤管理をしていなかったのは被告会社の責任によるものであり,

これを原告に不利益に扱うべきではないと判断しました。

 

 

また,被告会社は,休日出勤や残業の許可願を提出せずに

残業している従業員がいたことをわかっていながら,

これを放置していました。

 

 

 

そのため,裁判所は,原告の具体的な終業時刻や

残業時間に行った仕事内容が明らかではないことをもって,

時間外労働の証明が全くされていないとして扱うべきではなく

全ての証拠を総合考慮して,ある程度概括的に時間外労働を推認し

原告は,平均して午後9時まで残業していたと判断して,

原告の未払残業代請求を認めたのです。

 

 

このように,タイムカードなどの労働時間を客観的に

記録した証拠がなかったとしても,

手持ちの証拠を総合考慮することで,

平均的な残業時間を計算すれば,

未払残業代請求が認められる可能性があります。

 

 

未払残業代請求事件では,諦めずに,知恵を絞って,

証拠をなんとか探し出して,

せめて平均的な残業時間を計算できるところまでもっていけば,

道が開けるかもしれません。

解雇を仮処分で解決するのはどういう場合か

会社から解雇されてしまった労働者は,

収入を確保する道を絶たれてしまい,生活が苦しくなります。

 

 

 

 

一刻も早く,解雇の問題を解決して,

収入を確保したいと考えるのが通常です。

 

 

そのようなときに考えられるのが,仮処分という裁判手続です。

 

 

解雇を裁判手続で解決する場合,大きく分けて3つの手続があります。

 

 

①通常の裁判,②労働審判,③仮処分の3つです。

 

 

本日は,このうちの③仮処分について説明します。

 

 

解雇を通常の裁判で解決しようとすると,

第一審の判決がでるまでに約1年くらいかかります。

 

 

判決がでるまで約1年も待っていたのでは,労働者の生活が困窮します。

 

 

そこで,第一審の判決がでるまで,会社に対して,

仮に賃金を支払えということを強制させる

賃金仮払の仮処分を申し立てることがあります。

 

 

賃金の仮払が認められれば,会社は,解雇した労働者に対して,

毎月一定額の賃金を支払わなければならなくなります。

 

 

 

 

この仮処分の手続は,申立から2~3カ月から6カ月程度で

結論を得られることが多く,通常の裁判に比べて手続が早く進みます。

 

 

また,仮処分手続の中で和解が成立することも多く,

仮の手続とはいえ,最終的な紛争解決も可能です。

 

 

もっとも,この仮処分では,通常の裁判と同じように,

解雇が無効であることのほかに,

保全の必要性という別のハードルを超えなければなりません。

 

 

保全の必要性とは,賃金が仮に支払われなければ,

労働者の生活が困窮する事情のことです。

 

 

通常,労働者は,賃金の仮払いを受ければ,

生活費につかってしまうので,最終的に,会社が裁判で勝っても,

仮払いした賃金が返還されることは困難になります。

 

 

そのため,賃金仮払の仮処分では,

この保全の必要性は厳格に審査されます。

 

 

保全の必要性については,

解雇された労働者が資産を保有しているか,

副業などの他の収入源があるか,

解雇後に他の会社に再就職したか,

配偶者が働いているか,

同居の親の年金収入はいくらか

などの事情が考慮されます。

 

 

預貯金が十分あったり,

解雇後に他の会社に就職していたり,

配偶者が働いていて十分な収入がある場合には,

保全の必要性がないと判断される可能性があります。

 

 

 

 

また,賃金の仮払いが認められたとしても,

解雇前の賃金全額が認められるとは限りません。

 

 

認められる仮払いの賃金の金額は,

標準生計費の範囲内に抑えられる傾向にあります。

 

 

ちなみに,人事院が発表した平成29年4月の

世帯人員4人の全国標準生計費は,21万9620円でした。

 

 

なお,仮処分には,賃金仮払以外にも,

労働契約上の地位を有することを仮に定める地位保全の仮処分

という手段もありますが,賃金の仮払いが認められれば,

それで足りるとして,なかなか認められないのが現状です。

 

 

このように,仮処分の場合,

保全の必要性というハードルがあり,解雇された労働者は,

別の会社に再就職することが多く,私は,

あまりこの手続を利用したことがありません。

 

 

よほど,緊急に賃金の仮払いをさせる必要がある場合や

迅速に解雇された会社に復帰したい場合

には仮処分を検討しますが,そうでないなら,

通常の裁判か労働審判を選ぶことが多いです。

アウトプット大全

精神科医の樺沢紫苑先生の最新作

学びを結果に変えるアウトプット大全

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

樺沢紫苑先生は,毎日You Tube,メルマガ,

ブログ,Facebookを更新し続ける,

まさにアウトプットの神のような存在です。

 

 

そんなアウトプットの神である樺沢紫苑先生が,

これまでの人生で習得されたアウトプットの全てを,

惜しげもなく公開している素晴らしい一冊です。

 

 

そもそも,なぜアウトプットする必要があるのでしょうか。

 

 

それは,アウトプットしないと,

インプットは記憶に残らないため,

自己成長できないからです。

 

 

人間は,インプットした情報を2週間で3回以上

アウトプットしないと長期間記憶することができないのです。

 

 

人間の脳にインプットされた情報は,

海馬というところに仮保存されますが,

その情報が何度か使われると,

脳はその情報を重要な情報と判断して

側頭葉で長期間記憶します。

 

 

 

 

私の経験上,アウトプットした情報は記憶に残っていますが,

アウトプットしなかった情報は,ことごとく忘れてしまいます。

 

 

アウトプットすることで情報が記憶に残り,

知識として定着し,自己成長していくのです。

 

 

アウトプットすることで,自己成長が加速し,

圧倒的な結果が出て,人生が楽しくなります。

 

 

この本では,話す,書く,行動するの3分野で合計80

ものアウトプットのノウハウが紹介されていますが,

その中から私が気づきを得た3つを紹介させていただきます。

 

 

まずは,「質問する」です。

 

 

自分自身に質問をすることで,脳は活性化し,

必要な情報を集めてくれます。

 

 

脳に対して,事前に単語登録をしておくと,

世の中にある膨大な情報の洪水の中から,

単語登録した情報を選択的に拾ってくれるのです。

 

 

これを,「選択的注意」といいます。

 

 

この選択的注意を発動させるための事前の

単語登録が「質問する」ということです。

 

 

本を読む前に,自分はこの本から何を学びたいのかを質問して,

紙に書いてから本を読むと,脳は,本の中から

質問に対する回答をみつけてくれるのです。

 

 

また,セミナーを聞く際にも,質問を考えながら

セミナーを聞くことで,セミナーに集中できまし,理解も深まります。

 

 

そして,セミナー終了後の質問タイムで,

講師が話したそうなこと,話したりなかったこと,

講師の話のテーマを深めることを質問をすれば,

講師も周囲の参加者も喜び,みんなから感謝されます。

 

 

次に,「ぼーっとする」です。

 

 

特になんの作業もしていないぼーっとした状態のとき,

脳内では,「デフォルトモード・ネットワーク」が活発に稼働しています。

 

 

デフォルトモード・ネットワークとは,

脳のスタンバイ状態のことで,脳内で,

自分のこれからをよりよいものにしていくための

準備を整えているのです。

 

 

あえてぼーっとすることで脳が活性化して,

ひらめきである「アハ!体験」が生まれるのです。

 

 

私は,いつもあくせくしながら仕事をしていることが多いので,

今後は意識してぼーっとして,脳を活性化していこうと思います。

 

 

最後は,「始める」です。

 

 

セミナーの資料を作成しなければならないのに,

作業量が膨大なため,おっくうになって,

なかなか作業に着手できないことがあります。

 

 

そんなときは,「まず作業を始める」ことです。

 

 

作業を始めてみると,だんだん気分が盛り上がってきて

やる気がでてきます。

 

 

脳には「側坐核」という部位があり,

この側坐核の神経細胞が活動すると,

海馬と側頭前野に信号を送り,やる気がでて,

脳の調子が上がってくるのです。

 

 

側坐核の神経細胞は,5分作業することで活動を始めます。

 

 

5分やってみればやる気スイッチが入るのです。

 

 

そして,最初から100点を目指して作業を始めるのではなく,

まずは30点を目指して作業を完成させて,

その後に訂正を加えて100点に近づけていきます。

 

 

そうすることで,作業が終わったという達成感と安心感がえられて,

訂正の過程でよりよいものが完成していくのです。

 

 

脳の仕組みを知ることで,自分が成長するためのスキルが学べます。

 

 

 

今後,私は,①インプットする際に自分自身に質問をし,

②意識してぼーっとする時間を作り,

③まずは30点を目指して5分作業を始めて,

自己成長していきます。

 

 

自己成長して,よりよい人生を歩みたいことを願う方にとって

必読の書だと思いましたので,紹介させていただきました。

懲戒解雇が有効になる要件とは

会社の携帯電話を利用して,従業員同士で上司のぐちや悪口を

ラインなどでやりとりしていたところ,会社に発覚し,

職場の秩序を乱しているとして普通解雇されてしまいました。

 

 

 

 

その後,会社から送られてきた離職票には,

懲戒解雇と記載されていました。

 

 

会社の就業規則には,懲戒解雇の規定はなく,

職場の秩序を乱した場合には普通解雇とする旨の記載があります。

 

 

このような場合,懲戒解雇は有効なのでしょうか。

 

 

結論からいうと,就業規則に懲戒解雇の規定がないのであれば,

懲戒解雇は無効となります

 

 

会社は,懲戒解雇された労働者を雇いたくないので,

労働者は,次の就職先を探すのは困難になります。

 

 

また,懲戒解雇の場合には,退職金を不支給にする,

または,減額することが就業規則で規定されていることが多く,

退職金を満額で取得することが困難になります。

 

 

このように,懲戒解雇は,最も重たい処分であるため,

懲戒解雇が有効か無効かは厳格に審査されます

 

 

 

 

そして,懲戒解雇が有効になるための要件として,

懲戒事由と懲戒の種類が就業規則に明記されており,

その就業規則が労働者に周知されていることがあげられます。

 

 

懲戒事由と懲戒の種類が就業規則に明記されていないと,

懲戒処分が労働契約の内容になっていないことになり,

会社は,労働者に対して,懲戒処分ができないのです。

 

 

また,就業規則に懲戒事由と懲戒の種類を明記しただけでは足りず,

その就業規則を,労働者がいつでも見られる場所に置いておいたり,

会社のサイトからダウンロードできる状態にしておくなどして,

労働者に周知しなければなりません(労働契約法7条)。

 

 

加えて,労働者が過去に懲戒処分されたことがないのに,

上司のぐちや悪口を言っただけで,

いきなり懲戒解雇されたのであれば,

懲戒解雇は処分として重すぎるので,

無効となる可能性があります。

 

 

懲戒解雇は,最も重い処分ですので,

労働者の非難されるべき行為が懲戒解雇に値する行為なのかが

厳格に審査されなければならないのです。

 

 

労働者の行為からすると,

停職や降格といった懲戒処分が相当で,

懲戒解雇が重すぎる場合は,懲戒解雇は無効になります。

 

 

懲戒解雇を争う場合,処分として重すぎるという理由で

懲戒解雇が無効になることが多く,労働者としては,

この点を裁判で強調して主張していくポイントになります。

 

 

さらに,他の人も同じように上司のぐちや悪口を言っていたのに,

自分だけ懲戒解雇されたのであれば,

平等取扱の原則に違反して,懲戒解雇が無効になる可能性があります。

 

 

このように,懲戒解雇は,厳格に審査されますので,

無効になる可能性もあります。

 

 

万が一,懲戒解雇されてしまったら,

一度,弁護士に相談することをおすすめします。