1 イッセイ・ミヤケによる内定取消
アパレル大手のイッセイ・ミヤケが
2021年入社予定の学生の内定を取り消したようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8e81f270f1fdadac9bf9121ccf36544d1dbea4de
新型コロナウイルスの感染拡大による
大幅な売上減少を理由とするものです。
新型コロナウイルスに関連して,内定取消の企業名が
大きく報道されたのは初めてなのかもしれません。
本日は,内定取消について解説します。

2 内定によって労働契約が成立する
まず,企業が就職希望者に対して,
内定を出すことで,労働契約が成立します。
この労働契約には,就労開始予定日までに
内定取消事由が生じた場合には,
労働契約を解約できるという留保権が付されています。
そのため,学生が卒業できなかったり,
犯罪をしたなどの場合には,企業は,
内定を取り消すことができます。
もっとも,新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化の場合,
内定者には何も落ち度がありません。
3 業績悪化を理由とする内定取消の有効要件
このような場合には,整理解雇と同じように,
整理解雇の4要件(4要素)を総合判断して,
内定取消が有効になるのかが検討されます。
具体的には,①現在の企業の経営上,
内定取消をしなければならない必要性があること,
②企業が内定取消を回避する努力を行ったこと,
③内定取消対象者の人選が適正であること,
④企業が内定取消対象者と誠意をもって協議したこと,
の4要件(4要素)を総合判断します。
そのため,単に経営悪化だけを理由にした内定取消は,
②~④の要件を満たさない限り,無効となります。
特に,②行政や金融機関が提供している
雇用維持のための支援策を利用したか
といった内定取消回避のために尽くすべき努力をしたかが
厳格に判断されることになります。
加えて,政府は,今年3月13日に,
「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた
2020年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動及び
2019年度卒業・修了予定者等の内定者への
特段の配慮に関する要請について」
と題する文書を発出して,より一層,
内定取消をしないように求めています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/2020nendosotu/20200313_hairyo_yousei.pdf
具体的には,①採用内定の取消しを防止するため,
最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること,
②やむを得ない事情により採用内定の取消し又は
採用・入職時期の延期を行う場合には,
対象者の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに,
対象者からの補償等の要求には誠意を持って対応すること,
が記載されています。
報道によりますと,イッセイ・ミヤケでは,
6月から社内でリストラを検討したようで,
内定取消回避の努力をしているようですが,
3月4月に内定を出して,7月で内定を取消しているので,
これだけ短期間で内定者を採用できなくなるほどに
経営が悪化したのか疑問です。

仮に,それほどまでに経営が悪化したとしても,
それを予見できなかった責任は企業側にあるので,
内定取消回避のためのあらゆる手段を講じたのか疑問であり,
イッセイ・ミヤケの内定取消は無効になる可能性はあります。
とはいえ,イッセイ・ミヤケから内定取消をされた学生が,
内定取消は無効であるとして,
労働契約上の地位にあることの確認を求めて,認められても,
内定取消をした企業に就職したところで明るい未来はないと考えます。
そこで悔しいですが,内定取消された学生は,
すぐに就職活動を再開して,新しい企業に内定をもらい,
その後に,就職活動にかかった経費や
内定取消された慰謝料などを請求していくのが,
自分の身を守る策として最善だと考えます。
イッセイ・ミヤケには,内定取消をした責任をよく理解してもらい,
内定取消対象者に対して,誠意ある対応をしてもらいたいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。