新型コロナウイルス感染拡大の影響で内定取消が認められるのか

1 新型コロナウイルス感染拡大を理由とする内定取消

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,

製造業の企業に入社する予定だった高校生の

内定が取り消されたようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3F5T40N3FULFA013.html

 

 

ハローワークは,企業から内定取消の相談があった場合,

休業補償の助成金を活用するなどして

内定を取り消さないように助言をしているようです。

 

 

本日は,新型コロナウイルスの影響で

内定取消が認められるのかについて,解説します。

 

 

 

2 内定で労働契約が成立する

 

 

まず,企業が採用予定者に対して,内定を通知することで,

入社予定日を就労の始まりとする解約留保権付の労働契約が成立します。

 

 

内定段階でも労働契約が成立しているので,

企業が自由に内定を取り消すことは許されません。

 

 

内定を取り消すことができるのは,

内定当時には知ることができなかった事実が後から判明して,

それによって,内定を取り消すことが

「客観的に合理的と認められ,社会通念上相当」

と認められるときに限られます。

 

 

具体的に内定取消ができるのは,重大な経歴詐称が発覚したり,

内定から就労開始日までに犯罪行為を行ったような場合です。

 

 

以上述べたのは,採用予定者側に問題があった場合です。

 

 

コロナウイルス感染拡大の影響による内定取消の場合,

採用予定者側には何も問題はありません。

 

 

3 整理解雇の4要件

 

 

このような場合の内定取消の場合には,

整理解雇の4要件を総合考慮して,

内定取消が有効かが判断されます。

 

 

整理解雇の4要件とは,

①人員削減の必要性があること,

②解雇回避努力を尽くしたこと,

③人選が合理的であること,

④説明・協議を尽くすなど,解雇手続が相当であること,です。

 

 

①人員削減の必要性については,経営状況が悪化し,

経費削減の必要性が認められても,

それが人員削減によって達成されなければならない程度に

達していない場合には,否定されます。

 

 

②解雇回避努力を尽くすとは,役員報酬カットを含む経費削減策や

希望退職を募集するなどをすることです。

 

 

③人選の合理性とは,どの労働者を解雇するかについては,

客観的に合理的な選定基準を設定して,

その基準に基づき公正に選定しなければならないことです。

 

 

④については,解雇に先立ち,会社は,労働者に対して,

整理解雇の必要性とその内容,人選基準について,

十分な説明を行い,誠意をもって協議しなければなりません。

 

 

整理解雇の4要件をもとに内定取消を無効と判断した

インフォミックス事件の東京地裁平成9年10月31日決定は

(労働判例726号37頁),この④の要件を重視しました。

 

 

すなわち,採用予定者に対して,必ずしも納得を得られるような

十分な説明をしたとはいえず,会社の対応は誠実性に欠けていたとして,

社会通念上相当といえず,内定取消は無効と判断したのです。

 

 

 

コロナウイルス感染拡大の影響による内定取消については,

ハローワークが助言しているように休業補償の助成金を活用するなどして,

②の要件の内定取消を回避する努力を尽くすことが必要になります。

 

 

そして,④の要件として,採用予定者に対して,

内定取消の必要性を誠実に説明して,

代替手段などを提案するなどして,

誠意を尽くす必要があります。

 

 

このような会社の誠意ある対応がないまま,

単にコロナウイルスの感染拡大の影響で経営が苦しいという理由だけでは,

内定取消は無効になる可能性があります。

 

 

とにかく,早くコロナウイルス感染拡大による

混乱が収束してほしいものです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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