裁量労働制の違法適用の社名公表制度
朝日新聞の報道によりますと,厚生労働省は,
裁量労働制を労働者に違法に適用した企業の社名を
公表する制度を新設する方針を固めたようです。
https://www.asahi.com/articles/ASLDZ059VLDYULFA009.html
なぜかといいますと,裁量労働制については
違法に適用されていることが多く,
長時間労働を助長しているという批判が多いため,
厚生労働省は,社名公表制度を新設することで,
企業の裁量労働制の違法適用を抑止しようとしているからです。
厚生労働省が,裁量労働制を違法適用している
企業の名前を公表し,マスコミで大々的に報道されれば,
あの会社は,長時間労働をさせられても,
残業代が支払われないブラック企業であるという
レッテルをはられてしまいます。
そうなれば,労働者を大切にしない企業であるとの
イメージが定着してしまい,若者が就職しなくなり,
人手不足に陥り,経営が悪化するリスクが高まります。
そのため,裁量労働制を違法適用している企業があれば,
厚生労働省は,しっかりと調査した上で,
注意喚起を含めて,どんどん公表するべきだと思います。
では,裁量労働制が違法に適用されるとは,
どのような場合なのでしょうか。
そもそも,裁量労働制とは,業務の性質上その遂行方法を
大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるものについて,
実労働時間とは関係なく,労使協定や労使委員会の決議
で定めた時間を労働時間としてみなす制度のことです。
ようするに,どれだけ働いても,事前に定められた時間しか
働いていないことになり,残業代が支払われないか,若しくは,
少ない金額の残業代に抑えられてしまう制度なのです。
このように,裁量労働制は,労働者にとって
不利益な制度であることから,労働基準法で
適用要件が厳格に定められているのです。
例えば,裁量労働制の対象となる業務は,
客観的にみて労働者の裁量性が認められる業務である
必要があるにもかかわらず,仕事の段取りや時間配分について,
会社からの指示が多く,労働者に裁量性がないのに,
裁量労働制が違法に適用されている場合があります。
その他にも,裁量労働制は労使協定を締結する
必要があるのですが,その労使協定の有効期限が切れていたり,
労使協定を締結した労働者が,
労働者の過半数代表者ではなかったために,
労使協定が無効である場合もあります。
このように,裁量労働制は,要件が厳しいので,
違法に適用されていることが多いと思います。
裁量労働制が違法に適用されていたのであれば,労働者は,
労働基準法で計算した残業代を請求することができます。
今回の,厚生労働省の社名公表の新制度ですが,
複数の事業場を持つ大企業が対象であり,
次の3つの要件を満たす必要があります。
①裁量労働制を適用する労働者のおおむね3分の2以上が,
制度を適用できない仕事をしていた
②違法適用した労働者のおおむね半数以上が,
違法な時間外労働をしていた
③そのうち1人以上が一ヶ月100時間以上の残業をしていた
社名公表のハードルがとても高く,
ほとんどの違法適用の会社は公表されない可能性が高いです。
裁量労働制の違法適用を抑止するためにも,
厚生労働省は,社名公表の要件を緩和し,
労働者に注意喚起するために,
積極的に社名を公表していってもらいたいと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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