勤務成績不良を理由とする解雇を争うポイント
1 今後は解雇が増える見込みです
2020年6月26日時点における,厚生労働省の
「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」
という資料によりますと,解雇などをされそうな見込みのある労働者数は,
全国で28,173人のようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644688.pdf
石川県では,439人が解雇などをされそうな見込みのある労働者数
として挙げられています。
首都圏を中心に再び感染者が増加傾向にありますが,
新型コロナウイルスの感染拡大が一応は収まった段階においても,
停滞した経済がすぐに活性化するわけではなく,
経営が悪化した企業は,人件費を削減するために,
解雇や雇止めをしてくることが予想されます。
新型コロナウイルスの感染拡大時期には,
休業手当の支払や賃金の減額の法律相談が多かったのですが,
今後は,解雇や雇止めの法律相談が増えてきそうです。
経営状況が悪化してきたことから,
これを機にもともと経営者にとって気に入らなかった
労働者を解雇するような動きもあります。
例えば,経営状況が悪化してきたものの,
リストラをしなければならないほどまでには悪化していないので,
問題のある労働者を解雇するような場合です。
2 勤務成績不良を理由とする解雇
勤務成績が悪いことや協調性がないことを理由として解雇するのです。
このような解雇が無効となるのかを検討するにあたり,
参考になる裁判例を紹介します。
アルバック販売事件の神戸地裁姫路支部平成31年3月18日判決
(労働判例1211号81頁)です。
この事件は,争点がたくさんあるのですが,
解雇についの判断部分を紹介します。
この事件では,原告の労働者の勤務態度や勤務成績が不良
という解雇理由が問題となったところ,
裁判所は,次のように判断しました。
単に労働者の勤務成績や勤務態度が不良であるという範疇を超えて,
その程度が著しく劣悪であり,会社が改善を促したにもかかわらず,
改善がないといえるか,会社の業務全体にとって相当な支障
となっているかなどの点を総合考慮して判断するとしたのです。
この事件では,原告の労働者は,
取引先との間でトラブルがあったものの,
取引が破談になったり,会社が取引先を失うなどの
会社に大きな損害が発生したわけではありませんでした。
また,原告の労働者は,トラブルについて,
謝罪をしたり,トラブルの原因を報告し,
同じ原因によるトラブルを起こしていませんでした。
そのため,裁判所は,勤務態度や勤務成績を理由とする解雇について,
客観的合理的理由がないと判断しました。
さらに,被告の会社が主張している解雇理由が
2年前や1年半前の出来事で古く,
次に取引先とトラブルを起こせば,
解雇を予定していることなどを原告の労働者に
明確に示す注意や指導をしておらず,
解雇よりも軽い懲戒処分などの
他の手段を検討していませんでした。
そのため,被告会社は,解雇までの間に踏むべき
段取りを踏んでいないとして,
社会通念上相当でないと判断されました。
結果として,解雇は無効と判断されたのです。
このように,勤務成績が不良であることを理由とする解雇は,
会社に損害が生じていなかったり,
次に問題を起こしたら解雇するという
イエローカードを告知していなかったり,
古い出来事を持ち出した場合には,
無効になる可能性があります。
解雇されてもあきらめずに,自分の主張を貫くことで,
会社に対する金銭請求が認められることがありますので,
解雇された場合には,弁護士に相談することをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。