会社内での不倫を理由に解雇されてしまうのか
1 会社内での不倫を理由とする解雇の問題
近藤真彦氏が25歳年下の女性社長と不倫をした
ということが話題になっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/12f2ac499088809a9efb3a3c5ba344be42859751
テレビのワイドショーをみていますと、
有名人の不倫に関する報道がよく流れてきます。
また、弁護士の仕事をしていますと、
妻または夫が不倫をしているので、
損害賠償請求をしたいという法律相談を受けることは多いです。
こういった不倫について、労働問題になることもあります。
会社内での不倫が発覚して、解雇されたという労働問題です。
本日は、会社内の不倫を理由に解雇されることが
認めらるのかについて検討します。
結論としては、よほどの特殊事情がない限り、
会社内の不倫を理由とする解雇は無効となります。
具体的な事例で見てみましょう。
2 会社内の不倫を理由とする解雇が無効とされた事例
まず、1つ目の事例は、繁機工設備事件の
旭川地裁平成元年12月27日判決です(労働判例554号17頁)。
この事件では、バツイチ子持ちの女性社員が、
妻子ある男性従業員と不倫関係になったことが、
「素行不良で職場の風紀・秩序を乱した」
という懲戒事由に該当するとして、懲戒解雇されました。
この事件の男女の恋愛関係は、会社内の従業員だけでなく、
取引先でも取り沙汰されるようになっていたようです。
とはいえ、「職場の風紀・秩序を乱した」とは、
会社の企業運営に具体的な影響を与えるものに限定されるとして、
裁判所は、この事件では、会社の企業運営に
具体的な影響を与えていないとして、懲戒解雇は無効としました。
会社内外で男女の恋愛関係が取り沙汰されるという程度では、
会社に何も影響がないので、
「職場の風紀・秩序を乱した」ことにならないわけです。
ましてや、不倫関係は、通常、隠密に行われることが多いので、
会社内外の人に気づかれることがほとんどなく、
ひょんなことで会社に発覚しても、
会社の企業運営に具体的な影響を与えていないので、
解雇できないことになります。
3 会社内の不倫を理由とする解雇が有効とされた事例
次に、2つ目の事例は、長野電鉄事件の
東京高裁昭和41年7月30日判決です(労働判例25号6頁)。
この事件は、妻子あるバス運転手が、
18歳の女子車掌と不倫をして、
その女子車掌を妊娠させてしまい、
女子車掌は、中絶手術をして、退職したことについて、
著しく風紀・秩序を乱したとして、解雇されました。
この事件では、次の事情が考慮されて、解雇が有効とされました。
①バス運転手と車掌は、長時間一緒に勤務し、
宿泊を共にする特殊な職場環境のため、
女子従業員に対する不安動揺が生じたこと。
②当該女子車掌が退職したこと。
③当時、この会社では、地元の中学校や高校から
求人を募集していたところ、地元の中学校や高校の関係職員に
会社従業員の風紀に対する不信感を与え、
会社の求人に支障を及ぼすことになったこと。
その結果、会社の業務の正常な運営を阻害して、
会社に損害を与えたとして、解雇が有効となりました。
もっとも、長野電鉄事件は、昭和41年の判決ですので、
当時の貞操観念も考慮されていたり、
上記のような特殊事情があることは少なくなってきているので、
長野電鉄事件のように、会社内の不倫を理由とする解雇が
有効になる余地は少ないと考えます。
プライベートな領域の男女関係に、
会社が解雇や懲戒というかたちで介入するのではなく、
会社は、当事者の問題であるとして、介入せず、
遠くから見守るのがよいのではないかと思います。
まとめますと、会社内の不倫を理由とする解雇は、
会社の風紀や秩序が具体的に乱された事実があり、
会社に損害が発生しているといった特殊事情がない限り、
無効となると考えられます。
本日もお読みいただきありがとうございます。