会社から出向を打診された場合の対処法
1 ANAにおける出向
新型コロナウイルスの影響で海外に移動する人が激減した影響で、
ANAホールディングスの業績が悪化したことを受けて、
ANAホールディングスは、人件費削減策として、
外部の企業に社員を出向させるようです。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201028-OYT1T50276/
出向の対象となるのは客室乗務員などで、
高い接客スキルを持った人材であるとして、
大手の企業や地方自治体が出向の受け入れ先として、
手を挙げているようです。
世界でコロナ禍がおさまるまでは、
業績の回復が難しいANA(出向元)、
出向という形で雇用が保障される労働者、
高い接客スキルを持った人材を受け入れられる出向先、
というように、三方よしの対応策といえそうです。
とはいえ、出向となると労働者は、
勤務先が変わるので、不安が強いかもしれません。
そこで、本日は、出向についての法律関係について解説します。
2 出向の法律関係
まず、出向とは、労働者が雇用先の企業(出向元)における
従業員たる地位を維持したままで、別の企業(出向先)で
相当期間にわたって、その別の企業で働くことをいいます。
銀行では、ある程度の年齢になると出向させられるという話を聞きます。
次に、会社は、どのような場合に、労働者に対して、
出向を命じることができるのでしょうか。
会社が労働者に対して、有効に出向命令を出すためには、
出向の対象者となる労働者との間で個別の合意が成立しているか、
就業規則などにおいて、出向先の労働条件・処遇、
出向期間、復帰条件に関する規定が整備され、
その内容も労働者に著しい不利益を被らせるものでないこと
が必要となります。
すなわち、就業規則で、「出向を命じることがある」
などの包括的な規定があるだけではだめで、
出向の条件について詳細を定めた規定が必要であり、
労働者に不利益にならない配慮が必要になるのです。
出向は、労働者にとって、仕事を提供する相手方である
指揮命令権者の変更を意味するので、同じ会社内で、
職種や勤務場所を変更する配転と比較して、
大きな不利益を労働者に及ぼすことになるので、
出向については、就業規則などで、
詳細に定めなければならないのです。
そのため、労働者としては、出向に応じる場合には、
出向期間、出向先での労働条件(賃金、賞与、業務内容、就労場所)
などを書面でよく確認する必要があります。
復帰条件についても、文書で合意しておくのが大切です。
労働者としては、出向期間中の賃金が気になるところです。
出向期間中の賃金については、
出向先と出向元の取決め・合意によって、
出向先が支払う場合と、出向元が支払う場合があります。
例えば、出向先が出向労働者に出向前と同額の賃金を支払い、
出向先での雇用の場合との差額を出向元が出向先に補填する方法と、
出向元が継続して賃金を支払い、
出向先が自らの分担金を出向元へ支払う方法があります。
出向に際して、賃金が引き下げられないように、労働者は、
出向前の賃金を保障してもらえるように交渉することが大切です。
労働者としては、出向に応じたくないのであれば、
会社の就業規則に包括的な出向の規定しかない場合には、
出向に同意しないようにすればいいのです。
出向に応じるのであれば、出向に関する労働条件を文書で明確にして、
出向前の労働条件を保障してもらえるように会社と交渉しましょう。
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