会社から転勤を命じられたらどう対処したらいいのか

1 突然の転勤命令

 

 

先日,金沢から福岡への転勤を命じられたものの,

この転勤命令には従いたくないという法律相談を受けました。

 

 

相談者のお話を聞いていると,お子様がまだ小さく,

配偶者の体調がよくないこと,

今までに金沢から福岡に転勤になった労働者はおらず,

自分を退職に追い込むためになされたものと考えられること,

から転勤命令には応じられないということです。

 

 

 

転勤を伴う人事異動が頻繁に行われており,

労働者の成長を目的とした転勤であれば,

応じることができるのですが,会社は,時として,

労働者を退職に追い込むために,

非情な転勤命令を言い渡してくることがあります。

 

 

とくに,共働きで子育てをしている家庭ですと,

単身赴任で残された配偶者は,

ワンオペで育児家事をしなければならなくなり,

多大な負担を強いられることになります。

 

 

それでは,このような応じられない転勤命令に対して,

どのように対処すればいいのでしょうか。

 

 

2 勤務の継続を希望する場合の対処法

 

 

私の見解ですが,そのような非情な転勤命令をしてくる会社に

勤務し続けるのかをまずは検討します。

 

 

1つの方法は,転勤命令はひどいが,それ以外は,

よくしてくれる会社なので,転勤命令を争いつつも,

会社に残りたいと考える場合,労働者は,異議を留めて,

とりあえず転勤命令に従うことになります。

 

 

転勤命令に従わない場合,会社は,業務命令違反であるとして,

懲戒解雇をしてくる可能性があります。

 

 

懲戒解雇されてしまうと,給料の支給がなくなり,

当面の生活に窮することになります。

 

 

そのため,懲戒解雇を避けるために,転勤命令に異議を留めた上で,

転勤命令に従い,転勤先で働きつつ,転勤命令が無効であるとして,

訴訟や労働審判を起こすことになります。

 

 

 

3 会社を辞めてもいいと考えている場合の対処法

 

 

もう1つの方法は,このような非情な転勤命令を

してくる会社には勤務することができないので,

辞めてもかまわないと考えている場合,

労働者は,転勤命令を拒否すべきです。

 

 

転勤命令を拒否すると,業務命令違反であるとして,

懲戒解雇されるリスクがありますが,

そのような懲戒解雇は無効であるとして,

訴訟や労働審判を起こすことになります。

 

 

そのような懲戒解雇を争う裁判では,実質的な争点は,

転勤命令が有効だったか否かとなり,

転勤命令が無効になれば,懲戒解雇も無効になります。

 

 

懲戒解雇されるリスクを承知で,

転勤命令を拒否する場合,気をつけるべきことがあります。

 

 

それは,ひどい転勤命令をしてくる会社を

辞めてもかまわないと考えたとしても,

自分から退職してはならないことです。

 

 

自分から退職してしまったのでは,

後から,転勤命令を争いにくくなります。

 

 

自分から退職すると,その時点で,

会社との労働関係がなくなるので,

懲戒解雇が無効であったなら,

請求できたはずの未払賃金を請求できなくなり,

転勤命令を争ったとしても,

わずかな慰謝料が認められるだけとなります。

 

 

懲戒解雇された後に,転勤命令の効力を争い,

転勤命令が無効となり,懲戒解雇も無効になれば,

懲戒解雇されていた期間の未払賃金を請求できます。

 

 

また,裁判手続の中で,和解する場合にも,

会社から支払ってもらえる解決金の金額が多くなる傾向にあります。

 

 

そのため,転勤命令を受けて,会社を辞めてもいいと考えても,

自分から辞めるのではなく,しんどいかもしれませんが,

懲戒解雇された方が,裁判では争いやすくなるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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