新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の制度が始まりました
1 未だに多い休業手当の相談
東京では,連日,新型コロナウイルスの感染者が200人を超えており,
再び休業を強いられる会社がでてくるかもしれません。
先日,日本労働弁護団主宰の新型コロナウイルスの
労働問題の電話相談を実施したところ,
解雇や雇止めの相談が増えると予想していましたが,
未だに休業していた期間の賃金が支払われていない
という相談が多かったです。
休業手当が支払われずに困っている労働者が多いことを実感しました。
このような休業期間中に賃金が支払われていない場合に,
労働者に対して,直接支給金が支払われる制度が
7月10日から始まりました。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金というものです。
2 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
新型コロナウイルス感染症及びその蔓延防止の措置の影響により
休業させられた中小企業の労働者のうち,
休業期間中に賃金の支払を受けることができなかった方に対して,
その労働者の申請により,給付金が支給される制度です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html
(こちらの厚生労働省のサイトをご参照ください)
対象となるのは,2020年4月1日から9月30日までの間に
会社の指示を受けて,賃金の支払いなしに休業をした
中小企業の労働者です。
休業前の1日あたりの平均賃金の8割が,
休業した日に応じて支給されるのです。
日額の上限は11,000円となっています。
休業した労働者が,申請書類を作成して,
都道府県労働局に設置された集中処理センターに提出し,
審査に通れば,支給されます。
3 支給要件確認書の問題点
申請書類として,支給要件確認書という書類を提出します。
支給要件確認書は,事業主の指示による休業であること等の
事実を確認するもので,労働者と事業主が
それぞれ記入して押印する必要があります。
支給要件確認書には,会社が休業期間中に
労働者に賃金を支払っていないことを記載する欄があります。
不可抗力以外で会社が休業する場合,会社は,
休業期間中に労働者に対して,
平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならず
(労働基準法26条),これに違反した場合,
30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条)。
支給要件確認書を記載する際には,会社は,
労働基準法に違反していることを自認しなければならないのです。
そのため,会社は,労働基準法に違反していることを隠すために,
支給要件確認書に記入押印することを拒否することが考えられます。
仮に,労働者が会社に支給要件確認書の記入押印を
申し出たにもかかわらず,会社が休業証明を拒否した場合には,
労働者は,支給要件確認書に,会社の協力が得られないことを記載すれば,
受け付けてもらえそうです。
もっとも,その場合には,都道府県労働局が会社に対して,
報告を求めることになり,会社からの回答があるまでは
審査を行わないことになるようです。
そうなると,労働者が申請をしても,
会社が都道府県労働局に対して,休業のことを回答しない場合,
労働者に,新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が
支給されなくなってしまいます。
それでは,あまりにも労働者にとってかわいそうなので,
おそらく,都道府県労働局が何かしらの対応をしてくれるものと
期待したいですが,支給まで時間がかかってしまいます。
このような事態が生じる可能性がありますので,
都道府県労働局には,しっかりと対応してもらいたいです。
また,新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は,
休業期間中に,会社から,6割未満の休業手当を受給していた場合には,
支給されないことにも注意が必要です。
中途半端な金額の休業手当が支払われていると,
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が
支給されないのはおかしな話なので,支払われた休業手当と,
本来支払われるべき新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
との差額を支給するようにすべきと考えます。
いろいろと不備はありそうですが,労働者に直接,
休業手当に相当する給付金が支払われる制度ができたので,
労働者が救済されることを願いたいです。
会社は,この制度ができたからといって,
休業手当を支払わなくてよくなったわけではないので,
注意すべきです。
本日もお読みいただきありがとうございます。