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新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の制度が始まりました

1 未だに多い休業手当の相談

 

 

東京では,連日,新型コロナウイルスの感染者が200人を超えており,

再び休業を強いられる会社がでてくるかもしれません。

 

 

先日,日本労働弁護団主宰の新型コロナウイルスの

労働問題の電話相談を実施したところ,

解雇や雇止めの相談が増えると予想していましたが,

未だに休業していた期間の賃金が支払われていない

という相談が多かったです。

 

 

休業手当が支払われずに困っている労働者が多いことを実感しました。

 

 

 

このような休業期間中に賃金が支払われていない場合に,

労働者に対して,直接支給金が支払われる制度が

7月10日から始まりました。

 

 

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金というものです。

 

 

2 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

 

 

新型コロナウイルス感染症及びその蔓延防止の措置の影響により

休業させられた中小企業の労働者のうち,

休業期間中に賃金の支払を受けることができなかった方に対して,

その労働者の申請により,給付金が支給される制度です。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

(こちらの厚生労働省のサイトをご参照ください)

 

 

対象となるのは,2020年4月1日から9月30日までの間に

会社の指示を受けて,賃金の支払いなしに休業をした

中小企業の労働者です。

 

 

休業前の1日あたりの平均賃金の8割が,

休業した日に応じて支給されるのです。

 

 

日額の上限は11,000円となっています。

 

 

休業した労働者が,申請書類を作成して,

都道府県労働局に設置された集中処理センターに提出し,

審査に通れば,支給されます。

 

 

3 支給要件確認書の問題点

 

 

申請書類として,支給要件確認書という書類を提出します。

 

 

支給要件確認書は,事業主の指示による休業であること等の

事実を確認するもので,労働者と事業主が

それぞれ記入して押印する必要があります。

 

 

 

支給要件確認書には,会社が休業期間中に

労働者に賃金を支払っていないことを記載する欄があります。

 

 

不可抗力以外で会社が休業する場合,会社は,

休業期間中に労働者に対して,

平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならず

(労働基準法26条),これに違反した場合,

30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条)。

 

 

支給要件確認書を記載する際には,会社は,

労働基準法に違反していることを自認しなければならないのです。

 

 

そのため,会社は,労働基準法に違反していることを隠すために,

支給要件確認書に記入押印することを拒否することが考えられます。

 

 

仮に,労働者が会社に支給要件確認書の記入押印を

申し出たにもかかわらず,会社が休業証明を拒否した場合には,

労働者は,支給要件確認書に,会社の協力が得られないことを記載すれば,

受け付けてもらえそうです。

 

 

もっとも,その場合には,都道府県労働局が会社に対して,

報告を求めることになり,会社からの回答があるまでは

審査を行わないことになるようです。

 

 

そうなると,労働者が申請をしても,

会社が都道府県労働局に対して,休業のことを回答しない場合,

労働者に,新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が

支給されなくなってしまいます。

 

 

それでは,あまりにも労働者にとってかわいそうなので,

おそらく,都道府県労働局が何かしらの対応をしてくれるものと

期待したいですが,支給まで時間がかかってしまいます。

 

 

このような事態が生じる可能性がありますので,

都道府県労働局には,しっかりと対応してもらいたいです。

 

 

また,新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は,

休業期間中に,会社から,6割未満の休業手当を受給していた場合には,

支給されないことにも注意が必要です。

 

 

中途半端な金額の休業手当が支払われていると,

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が

支給されないのはおかしな話なので,支払われた休業手当と,

本来支払われるべき新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

との差額を支給するようにすべきと考えます。

 

 

いろいろと不備はありそうですが,労働者に直接,

休業手当に相当する給付金が支払われる制度ができたので,

労働者が救済されることを願いたいです。

 

 

会社は,この制度ができたからといって,

休業手当を支払わなくてよくなったわけではないので,

注意すべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ・コロナ労災・過労死110番で石川県で多かった労働相談は休業手当でした

1 パワハラ・コロナ労災・過労死110番

 

 

6月20日に過労死弁護団全国連絡会が主催する,

「パワハラ・コロナ労災・過労死110番」を石川県でも実施しました。

 

(NHKで報道していただきました)

 

 

もともと,この過労死110番は,過労死の被害を防止するために,

1年に1回実施しているもので,今年で33回目となります。

 

 

今回の過労死110番では,

パワハラとコロナ労災についても,

電話相談を受け付けました。

 

 

今年の6月1日から,改正労働施策総合推進法が施行され,

大企業に対してパワハラ防止措置が義務付けられたことから,

パワハラに関する労働相談が増えることが予想されたからです。

 

 

また,今年は,新型コロナウイルス感染拡大の影響で,

仕事中に新型コロナウイルスに感染したという労災や,

新型コロナウイルスに対応するために過重労働をしなければならなくなり,

過労死や過労自殺に至るケースが増えることが予想されたからです。

 

 

そのため,パワハラやコロナ労災の法律相談が

多く寄せられることを予想していました。

 

 

実際に,全国では,パワハラに関する相談が最も多かったです。

 

 

ところが,石川県では,6件の電話相談があったのですが,

そのうち4件は,休業手当に関する相談でした。

 

 

要するに,会社から休業するように言われたものの,

賃金が支払われないという相談です。

 

 

 

緊急事態宣言が解除され,経済活動が再開されてきているので,

休業手当の法律相談は減少すると考えていたのですが,

まだ,休業手当に関する法律相談が多いことに驚きました。

 

 

2 休業手当

 

 

さて,休業手当ですが,会社は,

災害などの不可抗力の場合を除いて,

労働者を休業させた場合,労働者に対して,

平均賃金の6割以上を支払わなければなりません。

 

 

休業手当を支払わない会社に対しては,

30万円以下の罰金が科せられます。

 

 

特に,新型コロナウイルスの感染拡大がおさまって,

経済活動が再開した現段階においては,会社は,

労働者から労務を提供してもらうことが可能であるのに,

会社の判断で休業させる場合には,民法536条2項に基づき,

労働者に対して,給料の全額を支払う必要があります。

 

 

そのため,現時点において,休業をしている労働者は,

会社に対して,給料の全額を請求すべきなのです。

 

 

この休業期間中の賃金の全額の請求は,

パートやアルバイトなどの非正規雇用労働者にも認められます。

 

 

3 雇用調整助成金の特例措置

 

 

さらに,今年の6月12日付の雇用調整助成金の特例措置により,

雇用調整助成金の1人当たりの助成額の上限が

8,330円から15,000円に引き上げれました。

 

 

また,解雇や雇止めをしない中小企業の助成率が

9/10から10/10に引き上げられることになりました。

 

 

そのため,企業にとっては,労働者を休業させても,

雇用調整助成金をより利用しやすくなったのです。

 

 

休業中に賃金が支払われないと,

労働者の生活は困窮してしまうので,

会社は,雇用調整助成金を活用して,

労働者に対して,休業期間中,

最低6割以上の賃金を支払うべきです。

 

 

ただ,現実には,6割の休業手当すら

支払われていない労働者がいるのも現実です。

 

 

 

4 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金

 

 

会社が休業手当を支払わない場合,新しく,

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金が導入され,

労働者がハローワークに申請することで,

約8割の賃金が国から直接支給されることになりそうです。

 

 

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金については,

まだ詳細が公表されていませんが,これが導入されると,

労働者は,休業手当を支払わない会社に対して,

裁判を起こすことなく,国から一定額の支給を受けられるので,

便利になります。

 

 

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金が

早急に導入されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

河井議員夫妻の労働基準法違反の疑惑

1 公職選挙法違反だけではないようです

 

 

6月16日,広島地裁において,

公職選挙法違反の罪に問われた河井案里参議院議員の

公設秘書の男性に対して,

懲役1年6ヶ月執行猶予5年の判決が言い渡されました。

 

 

この公設秘書の事件以外にも,

河井案里参議院議員と河井克行前法務大臣が地元の議員に対して,

総額2600万円もの現金を渡した疑惑が浮上しており,

検察当局が捜査をすすめています。

 

 

 

河井議員夫妻には,公職選挙法違反以外にも,

労働基準法違反の疑惑も浮上しています。

 

 

2 給料の減額

 

 

まず,河井議員夫妻の事務所で働いていた元私設秘書は,

一方的に給料を減額されたようです。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/1fc7a5dd0a73c3c79f4a5a675f3cafd2d52082c3

 

 

雇用主が労働者の給料を一方的に減額することは原則としてできません。

 

 

雇用主が労働者の給料を減額できるのは次の4つの場合に限定されます。

 

 

①給料の減額について労働者との個別の同意がある場合

 

 

 ②就業規則の不利益変更を行った場合

 

 

 ③新たな労働協約の締結による不利益変更を行った場合

 

 

 ④労働契約や就業規則で使用者に委ねられた

労働条件の決定・変更権限を行使した場合

 

 

このうち④については,懲戒処分としての減給,

業務命令としての降格による給料の減額,

就業規則中の賃金査定条項に基づく給料の減額などがあり,

原則として,労働契約や就業規則の根拠が必要になります。

 

 

河井議員夫妻による給料の減額ですが,

上記の②と③の可能性は低く,①か④を検討することになります。

 

 

元私設秘書の方が,①給料の減額に同意していなければ,

河井議員夫妻が一方的に給料を減額することは違法になります。

 

 

④による給料の減額の場合であれば,

労働契約や就業規則に根拠規定があるのか,

根拠規定があれば,減額の要件を満たすのかをチェックします。

 

 

3 割増賃金が支払われていない

 

 

次に,河井克行前法務大臣に雇用された運転手は,

選挙期間中は休日を返上して深夜まで働いたにもかかわらず,

割増賃金が支払われなかったようです。

 

 

使用者は,労働者に対して,

1週間に1回の休日を与えなけばなりません(労働基準法35条1項)。

 

 

1週間に1回与えなけばならない休日を法定休日といい,

法定休日に労働させた場合,使用者は,労働者に対して,

35%増しの割増賃金を支払わないといけません(労働基準法37条1項)。

 

 

22時から5時までの深夜の時間帯に働かせた場合には,

使用者は,労働者に対して,25%増しの

割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条4項)。

 

 

そのため,河井克行前法務大臣が運転手に対して,

法定休日に労働させたり,深夜の時間帯に労働させていたのに,

割増賃金を支払っていないのであれば,

労働基準法37条に違反し,6ヶ月以下の懲役または

30万円以下の罰金となります(労働基準法119条)。

 

 

 

4 解雇

 

 

さらに,河井克行前法務大臣に雇用された運転手は,

選挙後に,突然解雇を通告されたようです。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/e92cecc0bcc23a630eb03137d3fe9a21cd1753c2

 

 

解雇は,よほどの理由がないとできませんし,

他の手段を尽くしても解雇はやむを得ないという社会的相当性がないと,

無効になります。

 

 

報道によりますと,河井克行前法務大臣に雇用された運転手の

解雇については,合理的な理由がなく無効になる可能性があります。

 

 

このように,政治家に雇用される秘書の方々は,

労働基準法で保護されていない実態がありそうです。

 

 

政治家は権力者なので,労働基準監督署も

調査に踏み込みにくいのかもしれません。

 

 

政党内に労働法に関する相談窓口を設置するなどの

対策が必要だと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナ対応休業支援金が新設されることを理由に休業手当を支払わないことは違法です

1 新型コロナ対応休業支援金を理由に休業手当を支払わない会社

 

 

朝日新聞の報道によりますと,

令和2年度第2次補正予算案・関連法案が

今国会で可決されれば導入される

新型コロナ対応休業支援金をあてにして,

休業手当を支払わないと主張する会社がでてきているようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/DA3S14500707.html

 

 

新型コロナ対応休業支援金は,

休業手当を受けられない中小企業の労働者に対して,

国が月額33万円を上限に賃金の8割を直接支給するという制度です。

 

 

ただ,6月9日現時点では,新型コロナ対応休業支援金は,

まだ成立しておらず,具体的にどのようにして申請するのか,

支給までにいつまでかかるのかは未定です。

 

 

この新型コロナ対応休業支援金の制度ができるから,

という理由で,中小企業が休業したのに,

労働者に対して,休業手当を支払わないことは,

労働基準法26条に明確に違反する違法行為です。

 

 

2 休業手当

 

 

労働基準法26条には,会社の責めに帰すべき事由による休業の場合,

会社は,休業期間中,労働者に対して,

平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならない,

と規定されています。

 

 

 

この会社の責めに帰すべき事由とは,

会社の故意(わざと),過失(落ち度)

または信義則上これと同視すべきものよりも広く,

不可抗力によるものは含まれないとされています。

 

 

ようするに,台風や地震といった自然災害などの

不可抗力以外の理由で休業した場合には,

会社は,労働者に対して,平均賃金の6割以上の

休業手当を支払わなければならないのです。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による休業の場合は,

緊急事態宣言がだされた状況において,

新型コロナ特措法45条2条の休業要請や

同3項の休業指示の段階までいけば,

不可抗力による休業に該当する可能性がでてきますが,

それ以外の休業の場合は,会社は,休業する場合,
労働者に対して,最低でも6割以上の

休業手当を支払わなければならないのです。

 

 

そのため,緊急事態宣言が解除されて,

経済活動が再開された現時点において,

会社の業績が悪化していても,

休業手当を支払わなくてもよいことはありえない

と言ってもよいでしょう。

 

 

さらには,会社が自らの判断で休業する場合,

民法536条2項に基づき,会社は,労働者に対して,

賃金の全額を支払わなければなりません。

 

 

そうなれば,労働者が,新しく導入されることになる

新型コロナ対応休業支援金で8割の賃金の支給を受けたとしても,

会社は,残りの2割を労働者に対して支払わなければなりません。

 

 

3 会社が休業手当を支払わないときのリスク

 

 

また,労働基準法26条による休業手当の支払義務に違反した場合,

会社には,30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。

 

 

会社が休業手当を支払えるのに支払わないような悪質なケースでは,

労働局などが調査をして,検察庁に書類送検して,

処罰するように動き出すでしょう。

 

 

会社が休業手当を支払わないという事実が

インターネット上で拡散すれば,多大な風評被害が生じて,

ブラック企業というレッテルを貼られて,

新しく人材を採用できなくなるリスクが生じます。

 

 

 

そのため,会社は,新型コロナ対応休業支援金が

新しくできるからといって,休業手当の支払を

しなくてよいことにはならず,むしろ,

適切に休業手当を支払うべきなのです。

 

 

休業期間中の労働者の生活を維持させるためにも,

休業手当は迅速に支払われるべきです。

 

 

平均賃金の6割の休業手当では,金額が低くなり,

労働者の生活が維持できなくなるリスクがあるので,

会社は,6割以上の休業手当を支払うべきです。

 

 

休業手当を支払わない会社がなくなることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

在宅勤務で飲酒しながら仕事をした場合の賃金が支払われなくなるリスク

1 在宅勤務で飲酒しながら仕事をする方もいるようです

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大はおさまりつつありますが,

新型コロナウイルスの影響で広がった在宅勤務を

そのまま継続する企業があります。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200526/k10012445301000.html

 

 

在宅勤務は,通勤の時間がなくなり,

家族と過ごす時間が増えるというメリットがあります。

 

 

 

もっとも,自宅で働くと,気が緩んでしまい,

飲酒しながら仕事をする方もいるようです。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58568170Y0A420C2CE0000/

 

 

本日は,在宅勤務中に飲酒しながら仕事をすることの

問題について検討してみたいと思います。

 

 

2 職務専念義務・誠実労働義務

 

 

まず,労働者は,会社との間で労働契約を締結しています。

 

 

この労働契約に基づき,労働者は,会社に対して,

会社の指揮命令を受けながら労務を提供する義務を負っています。

 

 

労働者の労務を提供する義務は,

「債務の本旨に従って」履行しなければなりません(民法493条)。

 

 

労働者にとっての債務の本旨に従った履行とは,

労働契約に定められたとおりに誠実に仕事を行うことをいいます。

 

 

これを職務専念義務や誠実労働義務といいます。

 

 

労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしない場合,

会社は,その受領を拒否して,労務提供に基づく

賃金部分の支払を免れることができます。

 

 

労働者から債務の本旨に従った労務の提供がないので,

その受領を拒否しても,会社に落ち度がないことになるからなのです。

 

 

以上を前提に,在宅勤務と飲酒の問題にあてはめてみます。

 

 

3 飲酒しながら仕事をすると債務の本旨に従った労務の提供ではない?

 

 

通常,会社で仕事をしているときに飲酒をしている労働者はいません。

 

 

これは,飲酒により注意力が散漫となり,

労働能力が低下すること,周囲の労働者や取引先に対して,

不快な思いをさせることなどから,

仕事をしているときに飲酒をしないのだと思います。

 

 

労働者は皆,仕事が終わってから,会社帰りに居酒屋に繰り出します。

 

 

 

 

他方,在宅勤務の場合,仕事をする場所が

会社から自宅に変わるだけで,

労働者は,会社の指示に従って,

誠実に仕事をしなければならないことは変わりません。

 

 

そのため,在宅勤務で飲酒しながら仕事をすると,

債務の本旨に従った労務の提供をしていないとして,

会社から賃金の支払を拒否されるリスクがあります。

 

 

4 懲戒処分のリスク

 

 

また,在宅勤務で飲酒しながら仕事をすると,

勤務態度が不良であるとして,

懲戒処分がくだされるリスクもあります。

 

 

勤務態度不良については,在宅勤務の場合,

自宅で一人で飲酒しながら仕事をしていれば,

他の労働者に悪影響を与えていないとして,

実質的には懲戒事由に該当しないと判断される可能性もありますが,

懲戒処分されてしまうリスクにさらされない方が賢明です。

 

 

というわけで,在宅勤務で他の人の目がないからといって,

飲酒しながら仕事をすることはおすすめしません。

 

 

会社に発覚した場合,賃金が支払われなかったり,

懲戒処分されるリスクがありますので,

自宅での仕事が終わってから,

気兼ねなく飲酒をすることをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社はアルバイトにも休業手当を支払わなければなりません~ユニオンの可能性~

1 ブラックバイトユニオンの活躍

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,

日雇いアルバイトのキャンセルが相次いだ東京の男子学生が,

ブラックバイトユニオンという労働組合に加入して,

会社3社と交渉して,合計約5万円の休業手当を勝ち取ったようです。

 

 

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020052001002015.html

 

 

この約5万円の休業手当の中には,

日当の10割支給分も含まれているようです。

 

 

これまでですと,アルバイトの場合,仕事がなくなれば,

次のアルバイト先を探せば仕事がすぐにみつかって,

休業手当の問題は顕在化することはなかったと思います。

 

 

しかし,コロナショックにより,飲食店や学習塾,

イベント関連など,学生のアルバイトが多い業種で仕事がなくなったため,

アルバイトをキャンセルされることで,収入がなくなり,

生活に困窮する学生が増えてきたのが,問題の背景にありそうです。

 

 

 

本日は,アルバイトと休業手当について検討します。

 

 

2 休業手当

 

 

まず,労働者が会社に対して,

労務を提供することが可能であるにもかかわらず,

会社が故意(わざと),過失(落ち度)

または信義則上これと同視すべき理由で,

会社を休業した場合,会社は,労働者に対して,

100%の賃金を支払わなければなりません(民法536条2項)。

 

 

次に,会社に過失がなかったとしても,

不可抗力以外の会社側に原因のある経営,管理上の障害による休業の場合,

会社は,労働者に対して,平均賃金の60%以上の

休業手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。

 

 

そのため,会社が新型コロナ特措法24条9項の

都道府県知事からの休業要請に応じたとしても,

それは,会社の自主的な経営判断による休業になるので,

会社は,賃金の100%若しくは60%以上の平均賃金を

支払わなければならないのです。

 

 

特に,緊急事態宣言が解除されても休業を継続する場合には,

賃金の100%を支払わなければならなくなります。

 

 

このように,会社が休業した場合には,労働者に対して,

賃金100%若しくは平均賃金60%以上の休業手当を

支払わなければならないことは,正社員だけでなく,

アルバイト,パート,派遣労働者といった

非正規雇用労働者にも等しく当てはまるのです。

 

 

3 時給制の場合の平均賃金の計算の仕方

 

 

ただ,アルバイトのように時給で給料をもらっている場合には,

平均賃金60%以上の休業手当の計算において,注意すべき点があります。

 

 

平均賃金の計算については,労働基準法12条1項に規定されており,

直近3ヶ月間に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割って,平均賃金を算出します。

 

 

勤務日数ではなく,総日数で割るので,

1週間に2日とかしか働かないアルバイトですと,

賃金の総額が小さいため,平均賃金が低くなってしまいます。

 

 

それでは,時給制で働く労働者の保護に欠けるので,

時給制の労働者の場合は,賃金の総額をその期間中に労働した日数で

割った金額の60%とするとされています。

 

 

もっとも,平均賃金を算出するために60%としているので,

休業手当がこの平均賃金からさらに60%となると,

1回の休業に対する休業手当はとても低い金額となります。

 

 

そのため,とくにアルバイトの場合,

平均賃金60%以上の休業手当では,

金額が低すぎるので,民法536条2項を根拠に,

100%の賃金を請求すべきだと思います。

 

 

とはいえ,学生のアルバイトが,

休業手当をもらうことすら難しいのに,

賃金100%を請求するのはさらに困難を伴います。

 

 

4 ユニオン

 

 

そのようなときに活躍するのが,ユニオンです。

 

 

 

ユニオンとは,個人加盟できる労働組合です。

 

 

会社に労働組合がない職場も多いので,

一人で労働問題を解決できない場合には,ユニオンに加入して,

団体交渉することで,労働問題を解決できることがあります。

 

 

労働者が一人で交渉しても,

会社は相手にしてくれないことがありますが,

ユニオンが申し入れする団体交渉には,

会社は応じなければならず,会社が団体交渉で,

譲歩してくれる可能性がでてきます。

 

 

学生のアルバイトが団体交渉で成果を挙げたことは素晴らしく,

今後,コロナ禍で雇用が悪化していく状況において,

労働組合の大切さを学んだニュースでした。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるアルバイトのシフト削減への対処法

1 アルバイトのシフト削減の問題

 

 

多くの県で緊急事態宣言が解除され,少しずつですが,

日常生活が取り戻されつつあります。

 

 

一方で,新型コロナウイルスの感染拡大を理由とする

解雇や雇止めについては,7428人になるなどと報道されており,

コロナショックによる雇用情勢の悪化が急速に進んでいます。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5K6KMZN5KULFA00H.html

 

 

このように雇用情勢が悪化している中,

アルバイトのシフト削減による給料の減額の問題が指摘されています。

 

 

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/13/news108.html

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による営業自粛のあおりを受けて,

仕事がないことから,シフトが減らされて,

アルバイトの給料が減額されているようです。

 

 

特に,アルバイトで生計をたてているような学生にとっては,

シフト削減は,大学などを退学しなければならない状況に

追い込まれるほどの死活問題となります。

 

 

 

おそらく,これまでも,シフトを勝手に減らされるという

問題はあったはずですが,以前であれば,

そのようなバイト先であれば,辞めてしまい,

次のバイト先を探せばよかったので,

それほど問題にならなかったのだと思います。

 

 

しかし,新型コロナウイルスの感染拡大で,

多くの会社が採用を抑えている現状において,

次のバイト先を探そうにも求人が少なく,

シフト削減による給料の減額が,

学生アルバイトを中心に問題となってきたのでしょう。

 

 

本日は,シフト削減の対処法について,解説します。

 

 

2 労働条件を確認する

 

 

まずは,週何日間働くシフトになっていたのかを確認します。

 

 

労働条件通知書や労働契約書などの文書があれば,

その内容を確認します。

 

 

アルバイトであれば,労働条件通知書などが交付されていない

かもしれませんので,そのようなときには,求人票などを確認します。

 

 

これらの文書があれば,文書に記載されている

1週間に何日働くことが,労働契約の内容になります。

 

 

これらの文書がなかった場合には,採用時にバイト先から,

「1週間に3日間シフトに入ってくださいね」と言われて,

これに応じて,実際に1週間に3日間働いてきた実績があれば,

1週間に3日間働くことが労働契約の内容になります。

 

 

3 労働者の合意がない限り不利益な労働条件の変更をできないのが原則

 

 

次に,バイト先から,1週間に3日間働いていたのを

1日にしますと言われた場合,給料が減額される

不利益が生じるのであれば,アルバイトがこれに合意しなければ,

バイト先は,勝手にシフトを削減することはできません。

 

 

 

先の例でいうと,1週間に3日間働くことが

労働契約の内容になっているので,

給料が減額されることにつながる1週間に1日だけ働くことは,

労働条件を一方的に労働者の不利益に変更することになりますので,

労働者の合意がなければできないのです。

 

 

シフト削減によっても,以前と同じ給料が保障されているのであれば,

労働者にとって,休みが増える有利な変更になるので,

労働者の同意がなくても,問題ないのですが,

給料の減額が生じる不利益な変更をするには,

労働者の合意が必要となります。

 

 

アルバイトが,給料減額につながるシフト削減に同意していないのに,

シフトを削減されて,給料が減額となった場合,

シフトを削減された分の給料をバイト先に全額請求できることになります。

 

 

特に,緊急事態宣言が解除されれば,

都道府県知事からの休業要請は緩和されるので,

休業をするかどうかは,会社の経営判断に委ねられます。

 

 

会社が労働者に仕事をしてもらうことが可能であるのに,

自らの判断で休業する場合には,民法536条2項に基づき,

労働者は,会社に対して,給料の全額を請求できるのです。

 

 

そのため,アルバイトが勝手にシフトを削減された場合には,

シフトを削減される前の給料と,シフトを削減された後の給料との

差額分をバイト先に請求できるのです。

 

 

もっとも,一人のアルバイトがバイト先に,

差額分の給料を請求するのは勇気がいりますので,

同じバイト仲間と一緒に請求したり,

弁護士などの専門家や労働組合に相談するのがいいでしょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルス特措法45条の休業要請・休業指示と労働基準法26条の休業手当

1 大阪府による休業要請に応じないパチンコ店の公表

 

 

大阪府は,新型コロナウイルス特措法45条に基づき,

パチンコ店に対して,休業を要請し,店名の公表に踏み切りました。

 

 

しかし,店名を公表しても,パチンコ店が休業に応じず,

むしろ宣伝効果となり,客が集まる結果にもなっているようです。

 

 

 

そのため,大阪府は,休業しないパチンコ店に対して,

特措法45条3項に基づく休業指示をするようです。

 

 

 https://mainichi.jp/articles/20200428/k00/00m/040/256000c

 

 

さらには,特措法による休業指示にも従わない場合に備えて,

罰則規定を設ける法改正の話しまででてきました。

 

 

状況が刻一刻と変わり,日本労働弁護団の

新型コロナウイルスに関する労働問題Q&Aも改訂されたことから,

特措法による休業要請と労働基準法26条の休業手当について,

まとめてみます。

 

 

http://roudou-bengodan.org/covid_19/

 

 

2 特措法24条9項の休業要請の場合

 

 

まず,多くの都道府県で実施されてきた休業要請は,

特措法24条9項に基づくものであり,これについては,

単なるお願いであり,応じなくても,氏名を公表されることはありません。

 

 

特措法24条9項の休業要請の段階であれば,

事業者がこれに自主的に協力しても,

事業者側に起因する経営判断に過ぎません。

 

 

そのため,特措法24条9項の休業要請に応じて,

事業者が休業した場合には,不可抗力ではないとして,

労働者は,会社に対して,労働基準法26条に基づき,

休業手当を請求できると考えられます。

 

 

この点,2020年4月22日のブログでは,

特措法24条9項の休業要請に応じた場合には,

休業手当を請求できない可能性があると記載しましたが,

訂正させていただきます。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202004229228.html

 

 

3 特措法45条2項の休業要請の場合

 

 

次に,特措法45条2項に基づく休業要請について検討します。

 

 

 

特措法45条2項によれば,都道府県知事は,

施設の使用の制限若しくは停止を要請できるとされています。

 

 

大阪府によるパチンコ店に対する休業要請は,

特措法45条2項に基づく,パチンコ店という

施設の使用の停止を要請していることになります。

 

 

この特措法45条2項に基づく要請は,行政指導にあたります。

 

 

行政指導とは,行政が相手方を粘り強く説得して,

何らかの行為をさせ,あるいはさせないように働きかけるという

事実行為です。

 

 

行政指導に応じるか否かは,相手方の自由です。

 

 

ただし,特措法45条2項の要請は,

特措法45条4項の公表と相まって,

通常の行政指導よりも強力となっています。

 

 

特措法45条4項の公表は,

どの範囲までの情報を公表するかについて,

行政側に裁量があり,大阪府のように事業者の名前まで

公表する場合もあります。

 

 

休業要請に応じない事業者として名前が全国に公表されますので,

休業要請に応じないと,同調圧力の強い日本では,

バッシングを受けるリスクがあります。

 

 

そのため,特措法45条2項の休業要請については,

罰則規定はなく,法的な強制力はないものの,

事実上の強制力がはたらきます。

 

 

特措法45条2項に基づく休業要請に応じた場合には,

不可抗力に該当する可能性があり,労働者は,会社に対して,

休業手当を請求するのは困難になる可能性があります。

 

 

4 特措法45条3項の休業指示の場合

 

 

さらに,特措法45条3項による休業指示までいけば,

行政処分に該当しますので,不可抗力の要素がもっと強まります。

 

 

行政処分とは,直接国民の権利義務を形成しまたは

その範囲を確定することが法律上認められているものをいいます。

 

 

特措法45条3項に基づく休業指示についても,

特措法45条4項による公表がされますので,

休業指示を受ける事業者に対しては,

強力なプレッシャーになります。

 

 

そのため,特措法45条3項の休業指示に応じて休業した場合には,

より不可抗力に該当する可能性があり,労働者が会社に対して,

休業手当を請求できるのが困難になります。

 

 

以上まとめますと,特措法24条9項の休業要請の段階では,

休業手当の請求は認められている可能性がありますが,

特措法45条2項の休業要請と特措法45条3項の休業指示の

段階までいくと,休業手当の請求は認められない可能性が高くなります。

 

 

とはいえ,雇用調整助成金が拡充されていますので,

仮に不可抗力による休業となるとはいえ,会社には,

雇用調整助成金を活用して,労働者に対して休業手当を支払い,

雇用を維持してもらいたいです。

 

 

労働者は,雇用調整助成金の活用を会社にうったえて,

休業手当を支払ってもらえるように交渉してみてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働基準法26条の休業手当と不可抗力

1 都道府県知事による休業要請

 

 

緊急事態宣言の対象区域が全国に拡大され,

石川県は特定警戒都道府県に指定されました。

 

 

石川県は,4月19日に休業養成する業種や施設を公表し,

4月21日から休業期間が始まりました。

 

 

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kikaku/documents/kyuugyouitiran1.pdf

 

 

4月22日現在の石川県の休業要請は,

いわゆる新型コロナ特措法24条9項に基づく

「必要な協力の要請」であり,この休業要請に応じるか否かは,

各業者の判断に委ねられています。

 

 

 

24条9項に基づく休業要請に応じなくても,

事業者には法的な不利益はありません。

 

 

他方,大阪府では,休業要請に応じない事業者に対して,

事業者名を公表していく方向で動いているようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012399571000.html

 

 

新型コロナ特措法45条には,都道府県知事が休業要請をし,

または休業の指示をした場合には,

その旨を公表しなければならないと規定されています。

 

 

大阪府は,この45条による休業の要請や指示をして,

休業に応じない事業者名を公表することを検討しているのでしょう。

 

 

もともと同調圧力が強い日本社会で,さらに,

コロナ禍で人々のうっぷんがたまっている今,

休業要請に応じない事業者名が公表されれば,

世間からバッシングを受けて,

多大な風評被害を被るリスクがあります。

 

 

そのため,新型コロナ特措法45条の休業要請の手前の

24条9項の休業要請の段階で,

多くの対象企業は休業に応じると考えられます。

 

 

2 休業要請に応じた場合に休業手当はどうなるのか

 

 

では,都道府県知事の要請に応じて休業した場合,

会社は労働者に対して休業手当を支払わなければならないのか

が問題となります。

 

 

労働基準法26条には,使用者の責めに帰すべき事由

による休業の場合には,使用者は,休業期間中,

労働者に対して,平均賃金の6割以上の休業手当

を支払わなければならないと規定されています。

 

 

ここで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合,

使用者の責めに帰すべき事由に該当するのかが難しい問題となります。

 

 

労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」について,

経営者として不可抗力を主張しえない一切の場合が含まれる

と解されています。

 

 

 

要するに,不可抗力以外で休業する場合には,

会社は労働者に休業手当を支払わなければならないのです。

 

 

3 不可抗力とは

 

 

では,不可抗力とはどのような場合でしょうか。

 

 

不可抗力とは,①事業の外部より発生した事故であること,

②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお

避けることのできない事故であること,

の2つの要件を備えたものをいいます。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてなされる

都道府県知事の休業要請は,①の要件を満たすので,

問題は②の要件を満たすかです。

 

 

②の要件については,厚生労働省のQ&Aには,具体例として,

「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが

可能な場合において,これを十分に検討しているか」,

「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず,

休業させていないか」といった事情から判断されますと記載されています。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-2

 

 

例えば,バーであれば,バーテンダーがお店ではない

自宅で勤務する意味はありませんし,お客が来店しないので,

他に仕事がないので,上記の事情を満たすと考えられます。

 

 

 

緊急事態宣言が出されて,都道府県知事からの休業要請を受けて,

これに抗って,営業を続けるのは,現状厳しいと考えられ,

不可抗力に該当する可能性があります。

 

 

4 労働者は会社と休業手当の支給について協議すべき

 

 

とはいえ,休業手当も支払われないのであれば,

労働者は,収入が途絶えて,生活できなくなります。

 

 

そこで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合でも,

労働者と使用者でよく協議して,

せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように

交渉してみてください。

 

 

厚生労働省も,休業手当について,

労働者と使用者が話し合いをすることを推奨しています。

 

 

休業要請に応じた場合,都道府県から協力金が支給されますし,

雇用調整助成金を活用して,

労働者に休業手当を支払うという方法もあります。

 

 

労働者は,職場のメンバーと一致団結して,

せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように会社と協議し,

会社も,雇用を維持するために,

なんとか休業手当を支給してもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コロナショックで関心が高まっている休業手当の計算方法

1 緊急事態宣言がだされて休業手当への関心が高まっています

 

 

新型コロナウイルス対応の特措法に基づく緊急事態宣言を受けて,

東京都は,娯楽施設や一部商業施設に対して,

休業を要請したいようですが,

神奈川県,埼玉県,千葉県,大阪府,兵庫県,福岡県は,

住民の外出自粛の効果を見極めてから,

休業の要請を検討する考えのようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200408/k10012375431000.html

 

 

やはり,知事が事業者に対して,休業を要請した場合,

「使用者の責めに帰すべき事由」ではないとして,

休業に応じた事業者が,労働者に対して,

休業手当を支払わなくても,労働基準法違反ではなくなる可能性が高く,

労働者に何も補償されなくなりますし,

事業者の不利益が大きすぎるので,

事業者に対する補償がないのに休業を要請するのが

ためらわれるからなのでしょう。

 

 

 

緊急事態宣言がでた今,

休業手当がどうなるのかに関心が高まっています。

 

 

労働基準法26条では,使用者の責めに帰すべき事由によって

労働者が働けなかった場合,その休業期間中,

使用者は,労働者に対して,平均賃金の60%以上の休業手当を

支払うべきことを規定し,労働者の生活を保護しようとしています。

 

 

2 休業手当の計算

 

 

この休業手当について,朝日新聞に気になる記事がありました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200406000180.html

 

 

東京ディズニーリゾートを運営しているオリエンタルランドが,

東京ディズニーリゾートを臨時休園する際のキャストに対する説明では,

休業時は手当などを除いた基本時給の6割だけが支給される

との説明があったようです。

 

 

労働基準法26条は,休業手当は,平均賃金の6割以上

と規定されているので,手当などを除いた基本給の6割ではありません。

 

 

平均賃金については,労働基準法12条に定められており,

平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に

労働者に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割った金額なのです。

 

 

ここでいう「賃金の総額」には,通勤手当,年次有給休暇の賃金,

通勤定期券代及び昼食料補助なども含まれます。

 

 

この「賃金の総額」から除外されるのは

臨時に支払われる賃金(私傷病手当,加療見舞金,退職金など),

3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(年2期の賞与など)です。

 

 

例えば,基本給22万円,営業手当3万円,通勤手当1万円の

合計26万円の給料をもらっていた労働者が

2020年4月1日から休業した場合,

1月から3月までの平均賃金を計算すると次のようになります。

 

 

(26万円×3ヶ月)÷(31日+29日+31日)

=8,571円

 

 

そして,この労働者が2020年4月1日から30日間休業した場合,

休業手当は,8,571円×0.6×30日

=154,278円となります。

 

 

そのため,基本給以外にも,

各種の手当を含んだ賃金で休業手当を計算するのです。

 

 

結局,オリエンタルランドでは,手当も含めた賃金の6割分

が支給されたようで,間違った計算はされていなかったようです。

 

 

会社が休業手当の計算をするにあたり,

基本給の6割を支払えばいいと勘違いしているかもしれませんので,

労働者は,基本給以外の手当を含めて,

休業手当が計算されているのかを,

給料明細を見て,チェックしてください。

 

 

3 休業手当では生活できない

 

 

とはいえ,もともとの賃金が低い場合,

休業手当は低い賃金の6割になりますので

生活がままならないという問題があります。

 

 

やはり,コロナショックで生活が苦しくなる方々への

補償が必要不可欠になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。