ワタミの残業代未払い問題は管理監督者が原因か?会社から管理監督者と言われても未払残業代請求をあきらめない
1 ワタミの残業代未払い問題
先日のブログで、ワタミの175時間の時間外労働についての、
労災認定の解説をしました。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/202010079712.html
本日は、ワタミの残業代未払いの問題をもとに、
残業代請求の解説をします。
報道によりますと、弁当宅配事業のワタミの宅食の
女性営業所長に対する残業代が未払いであったとして、
高崎労働基準監督署がワタミに対して、是正勧告をしたとのことです。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4093105.html
175時間の時間外労働をしていたのに、
残業代が未払いであったことに、
多くの方は、疑問を抱くと思いますが、
未払残業代請求事件ではよくあることです。
2 労働基準法41条2号の管理監督者とは
労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば、
残業代を支払わなくてよいことになっているので、
経営者が、労働基準法41条2号の適用を誤り、
営業所長などのように立場が上の労働者に対しては、
役職手当などが定額で支払われていて、
それ以外に残業代を支払わなくてよい
取扱にしていることがよくあります。
しかし、労働基準法41条2号の管理監督者に該当する労働者は、
ほとんどおらず、多くの会社では、違法に適用されていて、
労働基準法41条2号の管理監督者ではない労働者も、
管理監督者であるとして、違法に残業代が未払いとなっているのです。
管理監督者ではない労働者に対して、
残業代を支払わないことは違法なので、
労働者が、会社に対して、未払残業代を請求すれば、
会社は、未払残業代を支払わなければならないのです。
それでは、どのような労働者であれば、
労働基準法41条2号の管理監督者といえるのでしょうか。
3 管理監督者の判断要素
労働基準法41条2号の管理監督者に該当するかを判断する際には、
以下の3つの要素を総合考慮します。
①事業主の経営上の決定に参画し、
労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)
②自己の労働時間についての裁量を有していること(労働時間の裁量)
③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を得ていること
①については、当該労働者が会社の経営に関する
決定過程に関与しているか、採用や人事考課などの
人事権限が与えられているか、
現場作業にどれくらい従事していたかが検討されます。
②については、タイムカード等によって
出退勤の管理がされていたかが検討されます。
今回のワタミのケースにあてはめますと、
①この営業所長は、ワタミの経営には関与しておらず、
配達員の業務管理以外にも、配達の仕事を多く担当していたことから、
経営者との一体性は認められません。
②この営業所長は、配達員が急に仕事を休んだ時に
代役で配達をすることが多く、休みがとれないことが多かったので、
労働時間の裁量はなかったといえます。
③この営業所長の月額の賃金は26万円と低額であり、
管理監督者にふさわしい賃金とはいえません。
よって、この営業所長は、管理監督者ではないので、
ワタミに対して、未払残業代を請求できることになります。
4 労働時間の適正把握義務
もう一つ、報道によりますと、この営業所長は、
休日に勤務したはずなのに、エリアマネージャーから、
休日勤務の記録を削除されたようです。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき
措置に関するガイドライン」には、会社は、
労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する義務
を負うことが規定されています。
そのため、会社は、労働者の労働時間を正確に記録しなければならず、
当たり前ですが、勤怠記録を改ざんすることはあってはならないことです。
ワタミのような大手企業でも、いまだに、
残業代が未払いなどの労働基準法違反がありますので、
地方の中小企業でも、残業代の未払いが多いのが現実です。
私の経験上、残業代が未払いの会社に対して、
未払残業代を請求すれば認められることが多いので、
未払残業代の請求を思い立った場合には、
弁護士に相談するようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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