新型コロナウイルス感染拡大の影響による雇止めの増加
1 雇止めの増加
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,企業の業績が悪化し,
契約期間の定めのある有期労働契約の雇止めが増加傾向にあるようです。
https://www.asahi.com/articles/ASN3L66YSN3KPTIL00N.html
年度末の3月は,契約社員や派遣社員の契約期間満了の時期と
重なるので,今年は,新型コロナウイルスの感染拡大も加わって,
飲食業や宿泊業では,雇止めが増えることが予想されます。
本日は,新型コロナウイルス感染拡大の影響による
雇止めについて解説します。
2 有期労働契約と雇止め
労働契約の契約期間が半年や1年間で区切られているものを
有期労働契約といい,有期労働契約は,
契約期間が満了したら終了するのですが,
会社が有期労働契約を更新すれば,契約が継続して,
働き続けることが可能になります。
ようするに,会社から有期労働契約を更新してもらえなかったら,
契約期間の満了で仕事がなくなってしまう,不安定な働き方なのです。
もっとも,労働契約法19条の以下の要件を満たす場合には,
有期労働契約が期間満了で終了しても,
従前と同じ内容の有期労働契約が継続することになります。
①有期契約労働者が契約更新の申込をした場合または
契約期間満了後遅滞なく有期労働契約の申込をした場合
②-1過去に反復して更新されたものであって,雇止めをすることが,
期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと
社会通念上同視できると認められること(労働契約法19条1号)
または
②-2有期労働契約の契約期間満了時に当該有期労働契約が
更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと
認められること(労働契約法19条2号)
③使用者が当該申込を拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き,
社会通念上相当であると認められないとき
雇止めの事件では,要件の②を満たすのかが第1のハードルになります。
要件の②を満たすかについては,
以下の要素を総合考慮して判断されます。
①業務の客観的内容
(業務の内容が恒常的か臨時的か,基幹的か補助的か)
②更新の回数
③雇用の通算期間
④契約期間管理の状況(更新手続が厳格か形式的か。
契約書を作成しない,事後的に作成するなど,ずさんであるか)
⑤雇用継続の期待をもたせる言動や制度の有無
⑥労働者の継続雇用に対する期待の相当性
⑦契約上の地位の性格(基幹性,臨時性,労働条件の正社員との同一性)
②更新回数が多く,③雇用の通算期間が長ければ,
上記の要件の②を満たす方向に傾きますが,更新回数が少なく,
雇用の通算期間が短くても,間違いなく契約を更新するという
社長の言動の録音があれば,⑤や⑥の要素を重視して,
要件の②が満たされることもあります。
そのため,雇止めの事案は,見通しがたてにくいのが現状です。
3 新型コロナウイルス感染拡大による雇止めを争うには
さて,要件②のハードルを超えれば,
次は要件の③を満たすかが問題になりますが,
これは解雇とパラレルに考えればよく,
新型コロナウイルス感染拡大の影響による業績悪化を理由とする
雇止めの場合は,整理解雇と同じ4つの要件を満たすかを検討します。
整理解雇の4要件とは,
①人員削減の必要性があること,
②解雇回避努力を尽くしたこと,
③人選が合理的であること,
④説明・協議を尽くしたこと,です。
ただ,整理解雇の4要件のあてはめにあたって,
非正規雇用労働者の場合は,正社員の場合と比べて,
緩やかに判断される傾向にあります。
③人選の合理性の要件の検討において,
正社員よりも非正規雇用労働者を先に整理して,
正社員の雇用を守ることを認める裁判例が多いです。
そのため,本当に会社が経営危機で,
リストラやむなしとなった場合には,
雇止めを争うのはなかなか難しくなります。
もっとも,会社が雇用調整助成金の利用をして
②解雇回避努力を尽くしたのかなどについては,
雇止めであっても厳格に検討する必要があります。
また,有期労働契約が2回以上更新されて,
契約の通算期間が5年を超えれば,
有期労働契約を無期労働契約に転換させて,
正社員になる方法もあります。
打つ手があるかもしれないので,
新型コロナウイルスの関係で雇止めにあった場合,
早目に弁護士に相談してみてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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