保険外交員の搾取の問題

保険外交員が労働契約を締結する保険代理店から

搾取されている問題がクローズアップされています。

 

 

給料から様々な費用が天引きされて収入が低い,

売上が低いと費用のマイナスが多くなり,

借金を背負わされてしまう,

会社から損害賠償請求すると脅されて,

会社を辞めさせてもらえない,

等といった被害が発生しているようです。

 

 

 

このような保険外交員の搾取被害に対応するために,

保険外交員搾取被害弁護団」が結成され,

私も,弁護団の一員に加えていただきました。

 

 

http://hokenhigai.com/problem.html

 

 

本日は,保険外交員の搾取被害について解説していきます。

 

 

以前は,保険外交員は,保険代理店と委任契約を締結し,

保険の販売を行っていたようです。

 

 

委任契約の場合,労働基準法が適用されないため,

一方的に契約を解除されたり,最低賃金法が適用されないため,

毎月の収入が最低賃金を下回るなどのリスクを負うことになります。

 

 

ところが,2014年に金融庁の指針により,

保険外交員と保険代理店の委任契約は,

保険業法で禁止されている再委託の禁止に該当するとされて,

委任契約から労働契約へと切り替わりました。

 

 

 

 

委任契約から労働契約に切り替わると,

雇用主である保険代理店は,保険外交員の社会保険料を

一部負担しなければならなくなります。

 

 

保険代理店は,これまでなかった,

社会保険料などの費用負担が生じるので,

どこかで費用を圧縮したいと考えます。

 

 

そこで,保険外交員の給料から,

パソコンのキーボードの購入代金,

プリンター代,パソコンシステム使用料,名刺代など,

保険代理店が負担すべき費用について,

さまざまな名目で控除しているようです。

 

 

また,リーズという見込み客を割り当ててもらう費用も,

給料から天引きされていたようです。

 

 

保険に関心のある消費者を5,000円の商品券などで勧誘し,

その見込み客に対して,保険外交員が営業をかけるのです。

 

 

保険になにも関心がない人よりも,

商品券で勧誘されてたとはいえ,

保険に関心のある人に営業をかけた方が,

保険契約の締結につながる確率はあがることから,

リーズというものが利用されているようです。

 

 

とはいえ,商品券だけもらって契約しない見込み客もいますので,

リーズの割当を受けたからといって,

保険契約の締結につながるわけでもありません。

 

 

 

 

このリーズの割当を受けるのに費用がかかり,

給料から天引きされるのです。

 

 

保険外交員が保険契約を獲得して,

売上を伸ばせればいいのですが,売上が少ないと,

給料よりも費用が大きくなり,それが借金になるというのです。

 

 

このような保険外交員の借金が積み重なると,

退職したくても,借金の返済ができないので,

辞めさせてもらえないという悪循環になるのです。

 

 

しかし,給料から,会社にかかる費用を勝手に天引きすることは,

労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に違反します。

 

 

賃金全額払の原則は,労働者に賃金の全額を確実に受け取らせて,

労働者の生活が脅かされないように保護するために導入されました。

 

 

この賃金全額払の原則から,会社は,

労働者に対して請求権をもっていたとしても,

一方的に賃金と相殺することは禁止されています。

 

 

さらに,労働者が自由な意思に基づいて

賃金との相殺に合意することは禁止されていませんが,

この労働者の合意は,自由な意思に基づいてされたものと

認められるに足りる合理的な理由が客観的に存在する時に

限り認められ,厳格かつ慎重に判断されます。

 

 

そのため,保険外交員の給料から,

保険代理店の費用が天引きされていることについて,

保険外交員が自由な意思に基づいて合意していない限り,

無効となります。

 

 

石川県内の保険外交員の搾取被害については,

私が担当させていただきますので,

保険外交員の給料からの天引き,借金を背負わされる,

退職させてもらえないなどのご相談があれば,ご連絡ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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