教員にはなぜ残業代が支払われないのか?

埼玉県内の市立小学校の59歳の男性教員が,

教員の時間外労働に対して残業代が支払われていないのは違法だとして,

残業代の支払いを求めて,さいたま地裁に提訴しました。

 

 

原告の教員は,教員を働かせ放題にさせている現状が許せず,

このままでは次世代の教員に引き継げないという覚悟のもと,

提訴にふみきったようです。

 

 

このブログで以前説明しましたが,教員は,

「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」

(給特法といいます)によって,残業については,

他の公務員とは異なる取扱をうけています。

 

 

 

すなわち,教員には,修学旅行や遠足などの学校外の教育活動や,

家庭訪問や学校外の自己研修など教員個人での活動,

夏休みなどの長期の学校休業期間という

勤務態様の特殊性を踏まえて,給特法により,

教員には,残業代が支給されず,その代わりに,

給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されます。

 

 

教員以外の一般の地方公務員は,時間外労働をした場合に,

残業代が支払われるのですが,地方公務員の中で教員だけが,

残業代が支払われず,4%の教職調整額が支給されているのです。

 

 

この4%の教職調整額ですが,昭和41年の教員の勤務状況調査

の結果を踏まえて,超過勤務時間相当分として

算定されたものが,今でも適用されているのです。

 

 

このように,給特法によって,教員は,どれだけ働いても,

4%の教職調整額が支給される以外に

残業代が支払われないという不合理な状況にあるのです。

 

 

過去の裁判では,給特法においても,教員の

「自由意思を極めて強く拘束」し,「常態化している」時間外労働

についてのみ,残業代が支払われるという非常に狭い基準

が示されましたが,結論として,教員の残業代請求は退けられています。

 

 

しかし,この給特法は,現代の教員の働き方に全く適合していません。

 

 

先日公表された今年の過労死白書によりますと,

教員の1日あたりの平均勤務時間は11時間17分です。

 

 

1日8時間を超える時間が残業になるので,

教員は毎日3時間近く残業していることになります。

 

 

さらに,教員は,部活動などで休日も働いていますので,

1ヶ月の時間外労働が過労死ラインである80時間を超えて

働いている方が多いと考えられ,実際,他の業種と比較しても,

荷重労働によって過労死や過労自殺する教員は多いです。

 

 

 

 

教員は,朝早くに出勤して,登校してくる生徒の見守りや,

授業の準備,部活動,保護者対応など,

仕事が多く,長時間労働になっていまうのです。

 

 

仕事内容が変わらないまま,

管理職から早く帰るように指示されても,

自宅での持ち帰り残業が増えるだけで,

何の解決にもなりません。

 

 

給特法によって,残業代が支払われないために,

教員が働かされ放題になり,長時間労働が蔓延しているのです。

 

 

給特法を廃止して,働いた時間分の残業代が支払われるようになれば,

自治体や教育委員会は,残業代増加による人件費の増加に危機感を覚えて,

長時間労働を是正するための抜本的な対策を考えざるをえなくなります。

 

 

残業代の支払いには,使用者に対して,

長時間労働を抑制させる機能がありますので,

給特法を廃止して,適正な残業代が支払われるようにして,

教員の長時間労働に歯止めをかけるべきだと思います。

 

 

さいたま地裁の裁判がきっかけとなり,

給特法を廃止する流れになることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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