ロイヤルリムジングループ整理解雇の仮処分手続で和解成立
1 ロイヤルリムジングループ整理解雇事件
タクシー事業を営むロイヤルリムジングループが,
新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化で大半の事業を休止して,
約600人もの運転手を解雇したため,
タクシー運転手が労働者としての地位確認を求める
仮処分の申立てをした事件で,和解が成立したようです。
https://mainichi.jp/articles/20200608/k00/00m/040/247000c
和解において,雇用継続が確認され,
休業手当の支払いや事業再開時の職務復帰が認められたようです。
ロイヤルリムジングループでは,
一部のタクシー会社ではまだ休業が続いているようですが,
休業手当が支払われることとなり,
事業が再開したときに職場復帰できるのは画期的です。
本日は,この和解について検討します。
2 整理解雇
新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績が悪化したことを
理由とする解雇を整理解雇といいます。
整理解雇では,
①人員削減の必要性,
②解雇回避努力義務,
③人選の合理性,
④労働者への説明などの手続の相当性,
という4つの要件(要素)を総合考慮して,
整理解雇が有効か無効かが判断されます。
ロイヤルリムジングループの事件では,
新型コロナウイルスの感染拡大によって,
人の移動が制限され,タクシーに乗る人が激減したので,
ロイヤルリムジングループには,
①人員削減の必要性は一定程度あったと考えられます。
しかし,雇用調整助成金を活用することなく,いきなり,
約600人ものタクシー運転手を解雇したので,
②解雇回避努力義務を尽くしておらず,
④労働者に対して,適切な説明を尽くしていなかったと考えられます。
そのため,ロイヤルリムジングループの整理解雇は
無効と判断される可能性は十分にありました。
3 仮処分
また,この事件は,緊急事態宣言の状況下で進行していたので,
裁判所に早急に審理してもらうために,
仮処分という裁判手続がとられました。
仮処分では,保全の必要性という要件を満たす必要があります。
労働事件における保全の必要性とは,
通常の裁判で解雇を争っていたのでは,時間がかかり,
労働者が困窮して生活が危機に瀕する状況になることをいいます。
労働者が解雇されても,
いくらか貯蓄が残っていたり,
配偶者が働いているので,
当面の生活はなんとかやりくりできるのであれば,
保全の必要性はないとして,
仮処分は認められないことが多いです。
そのため,労働事件ではあまり,
仮処分を利用することが少ないです。
もっとも,ロイヤルリムジングループ事件では,
解雇されたのがタクシー運転手で,高齢な方ですと,
新型コロナウイルスの影響で次の就職先を見つけるのが
非常に困難ですので,保全の必要性が認められる余地がありました。
以上のことから,ロイヤルリムジングループ事件では,
裁判官が,解雇は無効で,保全の必要性もあることから,
仮処分決定を出せる心証を抱いたので,
労働者に有利な和解案を提示して,
和解がまとまったのだと予想されます。
4 和解
裁判手続では,最終的に白黒はっきりつける判決や決定に至る前に,
和解で事件が解決することの方が多いです。
判決や決定が出ても,相手方が控訴などをすると,裁判は続き,
解決に時間がかかるのですが,和解であれば,
控訴などはなく,その時点で事件は終結します。
また,判決や決定では,相手方が任意に支払いに応じない場合には,
相手方の財産を差し押さえるなどの強制執行手続
という別の裁判手続をしなければなりませんが,
和解であれば,相手方も納得しているので,
任意の支払いに応じることが多いです。
このように,和解には,トラブルを解決するための
時間を短縮できること,支払いの確実性があがることの
メリットがあるので,和解ができるのであれば,
和解で事件を解決することが多いのです。
労働事件では,一度裁判で争った経緯があるので,
解雇された労働者が職場に復帰するのはなかなか難しいのですが,
ロイヤルリムジングループでは,
多くの労働者が裁判に立ち上がったので,
会社側も,大勢の声を無視することはできず,
職場復帰に応じざるをえなかったのかもしれません。
会社から酷い仕打ちを受けたときには,
労働者が団結して,会社に対して,
しっかりと物申すことが重要ですね。
多くの労働者の職場復帰が認められるのは珍しいので,
画期的な和解だと思います。
今後の解雇事件で活用できる解決の方法だと考えられます。
本日もお読みいただきありがとうございます。