会社から実際の終業時間よりも早くタイムカードを打刻するように指示された場合の対処法
1 実際の終業時間よりも早い時間にタイムカードを打刻せよという業務指示
未払残業代請求の依頼を受けているクライアントから、
次のような質問を受けました。
会社に対して、未払残業代を請求したところ、
会社から、今後は、残業をする場合には、
終業時間である17時30分に一旦タイムカードを打刻してから、
残業をするように指示されたのですが、
どうすればよいですか、という質問です。
この会社の始業時間は8時30分、
終業時間は17時30分、休憩時間1時間で、
1日の所定労働時間が8時間に設定されていましたので、
17時30分にタイムカードを打刻して残業したのでは、
残業をしていたことの証明が困難になります。
会社は、残業代の支払を免れたいために、労働者に対して、
労働時間を過小に申告するように圧力をかけてくることがよくあるのです。
このように、会社から、真実の労働時間とは異なり、
所定労働時間でタイムカードを打刻するように指示された場合、
どのように対処すればよいのでしょうか。
結論は簡単で、会社は、違法な指示をしているので、
そのような指示に従う必要はなく、
実際に出社した時刻にタイムカードを打刻し、
実際に退社した時刻にタイムカードを打刻すればいいのです。
2 労働時間把握義務
まず、会社は、労働時間を正確に把握する義務を負っています。
労働安全衛生法66条の8の3で、会社は、
労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されています。
また、厚生労働省が公表している、
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
においても、会社は、労働時間を適正に把握するなど
労働時間を適切に管理する責務を有していると規定されています。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf
このガイドラインには、会社は、
タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の
客観的な記録を基礎として確認して、
適正に記録することが記載されています。
タイムカードは、労働者が残業していたかを証明するための
貴重な記録なので、当然、正確に記録させなければ、
会社は、労働時間の適正把握義務に違反することになります。
そのため、会社が、労働者に対して、
真実の労働時間とは異なる労働時間でタイムカードを打刻するように
指示することは、労働時間の適正把握義務に違反する、
違法な業務指示となるので、労働者は、
違法な業務指示に従う必要はないのです。
このような違法な業務指示に従ってしまうと、
残業していたことを証明することができず、会社に対して、
未払残業代を請求することができなくなりますので、
勇気をもって、きっぱりと、
違法な業務指示を断るようにしてください。
3 労働時間を記録しよう
会社がタイムカードの時刻を改ざんするおそれがある場合には、
タイムカードを打刻するごとに、
タイムカードの記録を写真に残しておくのがいいです。
また、どうしても、タイムカードを実際の終業時間よりも
早く打刻するようにという、会社からの指示に
従わなければならない状況に追い込まれたときには、
会社からの指示を録音や記録しておき、かつ、
自分で正確な労働時間を記録するようにしてください。
自分で労働時間を記録するときにおすすめなのが、
「残業証拠レコーダー」(通称残レコ)というアプリです。
GPS機能を利用して、
自動で残業時間の証拠を確保することができる便利なツールです。
会社から、実際の労働時間とは異なる労働時間を記録するように
指示されたとしても、きっぱりと断ることが重要です。
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