在宅勤務で飲酒しながら仕事をした場合の賃金が支払われなくなるリスク
1 在宅勤務で飲酒しながら仕事をする方もいるようです
新型コロナウイルスの感染拡大はおさまりつつありますが,
新型コロナウイルスの影響で広がった在宅勤務を
そのまま継続する企業があります。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200526/k10012445301000.html
在宅勤務は,通勤の時間がなくなり,
家族と過ごす時間が増えるというメリットがあります。
もっとも,自宅で働くと,気が緩んでしまい,
飲酒しながら仕事をする方もいるようです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58568170Y0A420C2CE0000/
本日は,在宅勤務中に飲酒しながら仕事をすることの
問題について検討してみたいと思います。
2 職務専念義務・誠実労働義務
まず,労働者は,会社との間で労働契約を締結しています。
この労働契約に基づき,労働者は,会社に対して,
会社の指揮命令を受けながら労務を提供する義務を負っています。
労働者の労務を提供する義務は,
「債務の本旨に従って」履行しなければなりません(民法493条)。
労働者にとっての債務の本旨に従った履行とは,
労働契約に定められたとおりに誠実に仕事を行うことをいいます。
これを職務専念義務や誠実労働義務といいます。
労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしない場合,
会社は,その受領を拒否して,労務提供に基づく
賃金部分の支払を免れることができます。
労働者から債務の本旨に従った労務の提供がないので,
その受領を拒否しても,会社に落ち度がないことになるからなのです。
以上を前提に,在宅勤務と飲酒の問題にあてはめてみます。
3 飲酒しながら仕事をすると債務の本旨に従った労務の提供ではない?
通常,会社で仕事をしているときに飲酒をしている労働者はいません。
これは,飲酒により注意力が散漫となり,
労働能力が低下すること,周囲の労働者や取引先に対して,
不快な思いをさせることなどから,
仕事をしているときに飲酒をしないのだと思います。
労働者は皆,仕事が終わってから,会社帰りに居酒屋に繰り出します。
他方,在宅勤務の場合,仕事をする場所が
会社から自宅に変わるだけで,
労働者は,会社の指示に従って,
誠実に仕事をしなければならないことは変わりません。
そのため,在宅勤務で飲酒しながら仕事をすると,
債務の本旨に従った労務の提供をしていないとして,
会社から賃金の支払を拒否されるリスクがあります。
4 懲戒処分のリスク
また,在宅勤務で飲酒しながら仕事をすると,
勤務態度が不良であるとして,
懲戒処分がくだされるリスクもあります。
勤務態度不良については,在宅勤務の場合,
自宅で一人で飲酒しながら仕事をしていれば,
他の労働者に悪影響を与えていないとして,
実質的には懲戒事由に該当しないと判断される可能性もありますが,
懲戒処分されてしまうリスクにさらされない方が賢明です。
というわけで,在宅勤務で他の人の目がないからといって,
飲酒しながら仕事をすることはおすすめしません。
会社に発覚した場合,賃金が支払われなかったり,
懲戒処分されるリスクがありますので,
自宅での仕事が終わってから,
気兼ねなく飲酒をすることをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。