仕事中に新型コロナウイルスに感染しても会社が労災申請に協力してくれない場合の対処法
1 コロナ労災・過重労働110番を実施しました
5月8日に,過労死弁護団全国連絡会議が主催する
「コロナ労災・過重労働110番」の電話相談を実施しました。
(2020年5月9日北陸中日新聞朝刊より抜粋)
石川県では,2件の電話相談があり,
まだ新型コロナウイルスに感染していないけれども,
仕事中に感染した場合に,労災申請をするには
どうすればいいのかという相談でした。
新型コロナウイルスに感染した場合に,
どのような補償がなされるのかについて,
不安に思っている方がいらっしゃるのがよくわかりました。
また,この電話相談について,NHKの報道があり,
興味深い指摘がありました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200508/k10012421741000.html
2 新型コロナウイルスの労災申請が少ない理由
労災申請ができなかった看護師のインタビューがあり,
勤務先に労災申請の相談をしたところ,
労災申請に必要な書類の作成に協力してくれなかったようです。
勤務先では,感染の事実を外にもらさないように
と指示があったからのようです。
新型コロナウイルスの感染による労災の申請件数は,
全国でたったの4件にとどまっているようです。
背景には,労働者が新型コロナウイルスに感染したことが公になれば,
会社を2週間ほど閉鎖しなければならなくなったり,
風評被害が発生することをおそれて,
会社が労災隠しをしている可能性が考えられます。
それでは,勤務先が労災申請に協力してくれない場合は
どうすればいいのでしょうか。
3 労災隠しの対処法
それは,自分で労災申請をすればいいのです。
労災申請書に必要事項を記載したら,会社に提出して,
会社が後の申請手続をしてくれることが多いのですが,
これは,会社が労災申請を代行しているだけにすぎません。
労災申請できるのは,労災事故にあった被災労働者なのです。
会社が請求するのではなく,
被災労働者が労働基準監督署に労災申請をするのです。
労災保険法施行規則23条1項には,
被災労働者が自分で労災申請をするのが困難な場合には,
会社は,労災申請に助力しなければならないと記載されているので,
会社は,労働者から労災申請の相談を受けたなら,
協力しなければならないのです。
また,労災事故が発生した場合,会社は,
遅滞なくそのことを労働基準監督署に報告する義務を負っています
(労働安全衛生法100条,労働安全衛生規則97条)。
そのため,会社は,労災隠しをしてはならず,
労災申請にあたって,労働者に協力しなければならないのです。
労災申請書には,事業主の証明の欄があり,
労災申請に協力してくれない会社は,
この証明を記載してくれないことがあります。
その場合には,会社が証明を拒否したことを文書にまとめて,
労働基準監督署に提出すれば,労災の手続をすすめることができます。
4 感染経路を特定するために日々の行動を記録する
仕事中に新型コロナウイルスに感染したとして,
労災申請する場合には,感染経路を特定する必要がありますので,
どのような仕事をしたのか,誰とあったのか,
などを日記などに日々記録に残しておくのがいいです。
場合によっては,スマホの行動履歴をとっておくと,
感染経路の特定に役立つと思います。
労災隠しはあってはならないことなので,
仕事中に新型コロナウイルスに感染した場合には,
会社は,労災申請に協力すべきですし,
迅速に労災認定がされるべきだと考えます。
本日もお読みいただきありがとうございます。