運気を磨く~心を浄化する三つの技法~

1 田坂先生との出会い

 

 

今年の7月に田坂広志先生が主催している

田坂塾の塾長特別講話に参加して,

初めて田坂先生のお話をなまで聞くことができました。

 

 

澄んだ瞳で聴衆の一人ひとりとアイコンタクトをとり,

ご自身の体験からつかまれた叡智を,

一言一言魂を込めて語られる姿に感銘を受けました。

 

 

田坂先生のお話を聞いて,もっと田坂先生から学びたいと思い,

田坂先生の著書をより多く読むようになりました。

 

 

この7月の特別講話の演題が運気に関するものでした。

 

 

そして,田坂先生の最新の著書が

運気を磨く~心を浄化する三つの技法~」でして,

7月の特別講話を復習するために,

読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

2 ポジティブな想念とネガティブな想念の関係

 

 

よく,運がよくなるためには,潜在意識をポジティブにするために,

ポジティブな言葉を書いて,繰り返し見る,

ポジティブなイメージを心に焼き付けることが

書物で推奨されています。

 

 

私も,潜在意識について勉強し,

ポジティブな言葉を紙に書いて眺めたり,

イメージトレーニングをしていましたが,

思うように結果がでず,もやもやしていました。

 

 

このもやもやのなぞが,この本に書かれていたのです。

 

 

私達の心の世界には,ポジティブな想念とネガティブな想念が

同時に発生してしまうからなのです。

 

 

表面意識の世界で,仕事の目標を必ず達成できると

ポジティブな想念を引き出すと,無意識の世界では,

本当に達成できるのか,というネガティブな想念が

同時に生まれてしまうのです。

 

 

 

このネガティブな想念が無意識の世界にたまると,

私達は本来持っている力を十分に発揮できず,

運気が逃げていくのです。

 

 

そのため,表面意識でいくらポジティブな想念を抱いても,

無意識にネガティブな想念が生まれてしまうので,

私はうまくいかなかったのです。

 

 

なるほど~と思いました。

 

 

では,心の中にある無意識のネガティブな想念を浄化するには,

どうすればいいのでしょうか。

 

 

3 自然の浄化力

 

 

田坂先生は,自然の中に身を浸すことをあげています。

 

 

 

独り静かに自然と正対し,身を委ねるのです。

 

 

私は,1週間に1回,ランニングをすることを心がけており,

住宅街よりも,森の中や川の近くといった

自然の中をランニングするようにしています。

 

 

自然の中をランニングすると,不思議と心が静まり,

癒やされていくことを実感できます。

 

 

また,仕事の途中,道を歩いているときでも,

街路樹や道端の草花といった自然にも目を留めるようにしています。

 

 

すると,不思議なことに,すっと心が整います。

 

 

自然には,人の心癒やす力があることを実感できるようになりました。

 

 

4 言葉の力

 

 

次に,田坂先生は,ネガティブな日常言葉を使わないことをあげています。

 

 

ネガティブな日常言葉には,主語が抜け落ちるという性質があります。

 

 

例えば,「あの人はだめな人だ」と言うと,

主語である,「あの人」が抜け落ちるので,

「だめな人だ」という述語が残り,

それが自分に戻ってくるのです。

 

 

ネガティブな日常言葉を用いると,自分の無意識の世界に,

ネガティブな想念が蓄積されて,運気が逃げていくのです。

 

 

ようするに,自分の発する言葉が自分の心の状態を変えてしまうのです。

 

 

普段何気なく,人を批判してしまうことがあるのですが,

その批判はすべて自分に返ってくるのです。

 

 

ネガティブな日常言葉を使わないように意識していきます。

 

 

5 心の中で和解する

 

 

そして,心の中で和解するという技法があります。

 

 

 

自分が嫌だと思っている人がいたら,自分の心の中で,

「~さん,ありがとうございます」と語りかけるのです。

 

 

これは,自分の心の中でやるだけでよく,

相手に対して何もする必要がありません。

 

 

実際に,私は,妻とけんかしたときに,自分の心の中だけで,

妻に対して,「ありがとうございます」と語りかけると,

自分の心が落ち着き,妻の言い分を聞き入れることができて,

けんかの後の仲直りが早くできるようになりました。

 

 

自分の心の処し方が,田坂先生の実体験と多くの格言をもとに,

わかりやく記載されていますので,おすすめの一冊です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ防止指針案の改訂~パワハラの範囲を不当に狭めるべきではない~

1 パワハラ防止指針案の改訂版が公表されました。

 

 

以前,ブログで紹介しましたが,

今年10月にパワハラを防止するための指針が,

厚生労働省から公表されました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201910248667.html

 

 

しかし,労働者側から,対象範囲が狭く,

会社の弁解カタログになってしまうという批判がありました。

 

 

この批判を受けて,11月20日に,

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する

問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について

という文書が公表されました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000568623.pdf

 

 

本日は,この改訂されたパワハラ防止の指針案について解説します。

 

 

2 被害者の主観を考慮すべき

 

 

改訂されたパワハラ防止の指針案においても,

①優越的な関係を背景とした言動であって,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,

③労働者の就業環境が害されるもの,

という3つの要件の具体的な内容は変わっていません。

 

 

もっとも,パワハラの相談窓口の担当者が,留意すべきこととして,

相談を行った労働者の心身の状況や当該言動が行われた際の

受け止めなどその認識にも配慮しながら,

相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要である。

と記載されました。

 

 

 

参議院の附帯決議に,労働者の主観に配慮することが

記載されていたのに,今年10月の指針案には,

このことが盛り込まれていなかったことから,

今回の改訂で追加されました。

 

 

ある出来事をどのように受け止めるのかは,人それぞれですので,

パワハラの被害者の受け止め方も当然に考慮されるべきです。

 

 

3 改訂版での変更点

 

 

10月の指針案には,身体的な攻撃の類型の中に,

誤って物をぶつけてしまうことがパワハラに該当しない例

としてあげられていましたが,今回の改訂で削除されました。

 

 

通常,人に物をぶつけるときは,意図的にすることが多く,

誤ってぶつけることが考えにくいことから,

削除されたものと思われます。

 

 

10月の指針案には,精神的な攻撃の類型の中に,

パワハラに該当しない例として,重大な問題行動を行った労働者に対して,

強く注意することとがあげられていましたが,これが,

一定程度強く注意する」に変更されました。

 

 

一定程度という表現を加えることで,

問題行動を行った労働者を指導することが

パワハラに該当しない余地を残す必要があったのだと思います。

 

 

10月の指針案には,過小な要求の類型の中に,

パワハラに該当しない例として,

経営上の理由により,一時的に,

能力に見合わない簡易な業務に就かせること。

があげられていましたが,今回の改訂でこれが削除されました。

 

 

「経営上の理由」という会社にとって,

いかようにもつかえる都合のいい表現でしたので,

特定の労働者に無意味な作業を延々とやらせる

追い出し部屋を容認しているという批判を受けて削除されました。

 

 

 

追い出し部屋は労働者の尊厳を踏みにじって,

退職に追い込む狡猾な手段なので,

これが削除されたのはよかったです。

 

 

4 一番の問題点

 

 

10月の指針案よりも,表現がわかりやすくなり,

一歩前進していますが,私が一番懸念している

箇所が改訂されていなかったのが残念です。

 

 

それは,優越的な関係を背景とした言動の解釈として,

パワハラの被害者が加害者に対して

抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い

関係を背景として行われるもの」という点です。

 

 

パワハラの被害者がパワハラをやめてほしくて,

何かしらの抵抗や拒絶をすれば,

優越的な関係を背景とした言動に該当しないと判断される余地があり,

パワハラの範囲を不当に狭めるリスクがあると考えるからです。

 

 

なんとか,この表現を変更して,

パワハラの範囲を広げる必要性があります。

 

 

今後の,パワハラ指針の動向に注目したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

管理監督者や裁量労働制は過労死や過労自殺を助長する

1 三菱電機の子会社における過労自殺事件

 

 

三菱電機の子会社であるセルコセミコンダクタエンジニアリングの

技術職の40代男性労働者が,長時間労働が原因で過労自殺し,

今年の10月に労災認定されていたことが明らかになりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMCP53YLMCPULFA025.html

 

 

被災労働者は,三菱電機の別の子会社メルコパワーデバイスに出向し,

豊岡工場で勤務していたときに,管理監督者として扱われ,

時間外労働が1ヶ月100時間を超える長時間労働をさせられたそうです。

 

 

そして,福岡市の事業所へ異動した後に自殺したようです。

 

 

福岡市の事業所へ異動した後には,

裁量労働制が適用されていたようです。

 

 

管理監督者として扱われたり,裁量労働制が適用されると,

労働時間の管理が杜撰になり,長時間労働となって,

過労死や過労自殺が発生するリスクがあることを

物語っているニュースです。

 

 

 

本日は,管理監督者や裁量労働制と

過労死・過労自殺の関係について解説します。

 

 

2 管理監督者

 

 

労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」

に該当すれば,労働者は,会社に対して,残業代を請求できなくなります。

 

 

労働者が会社に対して,残業代を請求できなくなるので,

会社としては,残業代の計算をする必要がなくなり,

労働時間の管理が杜撰になってしまいます。

 

 

しかし,管理監督者として扱われるためには,

次の3つの要件を満たす必要があります。

 

 

 

①会社の経営に関する決定に参画し,

労務管理に関する指揮監督権限を認められていること

 

 

 ②自己の出退勤をはじめとする労働時間について

裁量権を有していること

 

 

 ③一般の労働者と比較して,

その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること

 

 

この3つの要件を満たすのはなかなか難しく,

いわゆる名ばかり管理職として,

残業代が違法に支払われていないことが多いです。

 

 

3 裁量労働制

 

 

次に,裁量労働制とは,仕事の性質上その遂行方法を大幅に

労働者に委ねる必要がある場合に,実労働時間とは関係なしに,

労使協定や労使委員会の決議で定めた時間を労働時間とみなす制度です。

 

 

すなわち,実際には12時間働いたとしても,

みなし労働時間が8時間と定められていた場合,

8時間しか労働していないとみなされて,

4時間分の残業代を請求できないのです。

 

 

裁量労働制には,専門業務型裁量労働制と

企画業務型裁量労働制の2つがあります。

 

 

専門業務型裁量労働制は,法令で定められた

専門的な職種に対してのみ適用される裁量労働制です。

 

 

企画業務型裁量労働制は,事業運営に関する事項についての

企画,立案,調査及び分析の業務に対して適用される裁量労働制です。

 

 

裁量労働制については,みなし労働時間が8時間に設定されていれば,

8時間を超えて労働しても残業代が発生しないので,会社は,

残業代の計算をする必要がなくなり,労働時間の管理が杜撰になるのです。

 

 

4 管理監督者や裁量労働制は長時間労働の温床

 

 

このように管理監督者も裁量労働制も,

労働者に対して残業代を支払わなくてもよくなる制度なので,

会社の労働時間の管理が杜撰になって,長時間労働が蔓延し,

過労死や過労自殺につながるのです。

 

 

三菱電機の子会社の過労自殺については,

管理監督者や裁量労働制が適用されて,

1ヶ月100時間を超える長時間労働があり,かつ,

豊岡から福岡へ転勤した出来事があるので,

心理的負荷が強となり,労災と認定されたのだと考えられます。

 

 

三菱電機では,ここ最近,男性労働者5人が長時間労働が原因で,

精神障害や脳疾患を発症したとして労災認定されています。

 

 

過労死や過労自殺を繰り返さないために,

労働時間を適切に把握して,残業代を支払うようにして,

長時間労働をなくしていくべきです。

 

 

また,企画業務型裁量労働制については,要件を緩和して,

適用される労働者を拡大していく動きがありますが,

三菱電機の事件でもわかるとおり,

裁量労働制は過労死や過労自殺を助長するので,

そのような規制緩和には反対です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

トヨタ自動車のパワハラ自殺からパワハラと労災申請を検討する

1 トヨタ自動車のパワハラ自殺事件

 

 

11月20日の過労死シンポジウムが

石川県で開催された日の朝刊で,

トヨタ自動車の労働者が上司のパワハラを受けて,

自殺したことが労災と認定されたことが報道されました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMCM33X0MCMPTIL006.html

 

 

報道によりますと,自殺した労働者は,上司から,

「バカ,アホ」,「死んだ方がいい」などの言葉の暴力を受けて,

適応障害を発症して,自殺したたようです。

 

 

 

日本を代表する企業において,

パワハラによる労働者の自殺が発生したことは,

社会に大きな衝撃を与えました。

 

 

あのトヨタ自動車でさえ,労働者が自殺してしまうほどの

パワハラが行われていたのですから,他の日本の企業においても,

パワハラの被害が生じているのが容易に想像できます。

 

 

さらに,法律でパワハラ防止措置義務が企業に課されることになり,

パワハラの指針が議論されている現状において,

トヨタ自動車のパワハラが明るみになっただけに,

衝撃は大きかったです。

 

 

 

本日は,トヨタ自動車の事件をもとに,

パワハラと労災申請について解説します。

 

 

2 精神障害の労災認定基準

 

 

パワハラを理由に労災申請する場合,労働者が受けたパワハラが,

「心理的負荷による精神障害の認定基準」という労災の基準の別表1

「業務による心理的負荷評価表」に記載されている具体的出来事に該当し,

その心理的負荷が強と判断されなければなりません。

 

 

パワハラで労災を申請する場合,具体的出来事としては,

「(ひどい)嫌がらせ,いじめまたは暴行を受けた」,

「上司とのトラブルがあった」にあてはまるかを検討します。

 

 

「(ひどい)嫌がらせ,いじめまたは暴行を受けた」の類型では,

部下に対する上司の言動が,業務指導の範囲を逸脱しており,

その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ,

かつ,これが執拗に行われた」場合に心理的負荷が強となります。

 

 

①業務指導の範囲の逸脱,

②人格や人間性を否定する言動,

③執拗に行われる,

という3つの要件を満たす必要があります。

 

 

とくに,③執拗に行われる,という要件があるため,

1回きりの人格を否定するひどい暴言だけでは,

労災と認定されないわけです。

 

 

 

次に,「上司とのトラブルがあった」の類型では,

業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような

大きな対立が上司との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した

場合に心理的負荷が強となります。

 

 

周囲から客観的に認識されて,業務に支障を来す必要があるので,

これを証明していくのは至難の業です。

 

 

このように,パワハラで労災の認定を受けるのは

ハードルが高いのが現状です。

 

 

3 録音や周囲の人間の証言が重要

 

 

トヨタ自動車のパワハラ自殺事件では,

上司が暴言をはいたことを認めているようですが,

暴言の録音や同僚の証言があったから,

上司は暴言をはいたことを認めたのかもしれません。

 

 

言葉による暴力は,録音や周囲の人間の証言がないと,

証明が難しいのです。

 

 

また,トヨタ自動車の事件では,

休職後にいったん復職して自殺しているので,

休職前のパワハラと復職後の自殺の因果関係を認めた

点においても画期的です。

 

 

以上解説してきたように,パワハラの労災の認定基準が厳しいので,

この労災認定基準を,パワハラの被害者に有利に改正する必要があります。

 

 

ちょうど,厚生労働省は,精神障害の労災認定基準に

パワハラについての項目を加える方向で改正をすすめるようですので,

労働者に有利に改正されることを期待したいです。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019111602000117.html

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

過労死はどうして発生するのか~過労死等防止対策推進シンポジウムに参加して~

1 過労死等防止対策推進シンポジウムに参加しました

 

 

11月20日,石川県の過労死等防止対策推進シンポジウム

に参加してきました。

 

 

 

過労死弁護団全国連絡会議の代表幹事である弁護士の松丸正先生が,

「過労死問題の現状と今後の課題~なぜ生じるとのか。どうしたらなくせるのか~」

という演題で講演されました。

 

 

松丸先生は,現在,過労死事件だけを専門に取り扱っているようで,

今の手持ち事件として,裁判が20件,労災申請が30件と,

本当に多くの過労死事件を担当しており,

まさに過労死事件の第一人者です。

 

 

 http://matumaru-blog.cocolog-nifty.com/

(松丸先生のブログです)

 

 

2 36協定の問題点

 

 

数多くの過労死事件を担当してきた松丸先生は,

過労死が発生する原因の一つに,

過労死ラインを超える36協定が締結されていることの問題

を指摘されていました。

 

 

労働基準法36条によれば,会社は,

労働者に残業をさせるためには,

労働者代表との間で36協定を締結しなければなりません。

 

 

36協定とは,会社と労働者代表との間で

時間外労働・休日労働に関して合意した内容を書面化したものです。

 

 

36協定には,①時間外労働をさせる必要のある具体的事由,

②業務の種類,③労働者数,④延長できる時間の上限,

⑤休日労働の回数,⑥有効期間を定めなければなりません。

 

 

厚生労働省の告示において,④延長できる時間の上限として,

時間外労働の上限時間として,1ヶ月45時間が設定されていました。

 

 

しかし,働き方改革関連法が成立する以前は,

36協定に特別条項を付けることで,特別の事情がある場合に,

1ヶ月45時間の時間外労働の上限時間を超えて働かせることができ,

さらに,この特別の事情がある場合の時間外労働の上限時間に

制限がありませんでした。

 

 

 

そのため,1ヶ月の時間外労働が300時間というありえない水準で,

36協定が締結されていたことがありました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASK955FY4K95PTIL00R.html

 

 

もっとも,働き方改革関連法の時間外労働の上限規制によって,

36協定で特別条項を付ける場合であっても,

1ヶ月100時間未満という上限時間が定められ,

1ヶ月100時間を超えて働かせた場合には,

会社には,懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金の刑事罰

が科せられることになりました。

 

 

これによって,1ヶ月100時間の時間外労働という

過労死ラインを超える36協定を締結できなくなりましたが,

松丸先生は,有名な大企業であっても,

36協定の上限時間を1ヶ月99時間59分未満に設定している

という問題点を指摘していました。

 

 

1ヶ月99時間59分の時間外労働であれば,

1ヶ月100時間未満なので,確かに改正労働基準法に違反はしませんが,

長時間労働を抑制しようという働き方改革関連法の

趣旨にそぐわないといえますし,

場当たり的な対応しかできていないという印象を抱きます。

 

 

過労死をなくしていくためには,36協定において,

そもそも特別条項を設定しないこと,

仮に特別条項を設定するにしても,

上限時間を極力短くしていくことが重要であると考えます。

 

 

3 労働時間の適正な把握

 

 

次に,松丸先生は,労働時間の適正な把握がなされていないことの

問題点を指摘していました。

 

 

松丸先生は,ご自身の経験から,労働者が自己申告していた残業時間と,

パソコンのログデータや警備記録から導かれた実際の残業時間とが,

あまりにもかけ離れている現実に,警鐘を鳴らしていました。

 

 

労働者は,残業時間を過小に記録してしまうので,

労働者の自己申告では,正確な残業時間は記録されず,

知らず知らずのうちに,長時間労働となり,

過労死が発生するのです。

 

 

労働時間の適正な把握なしには,

労働時間の規制は死滅してしまいます。

 

 

この点では,働き方改革関連法において,

労働安全衛生法に,会社の労働時間把握義務が法律で明文化されたことは,

一歩前進といえます。

 

 

労働時間を把握するためには,タイムカード,

パソコンのログデータ,警備記録などの客観的な記録が重要になります。

 

 

松丸先生は,グーグルマップのタイムラインが,

自分のタイムカードを常に持ち歩いている状態になるので,

おすすめであるとおっしゃっていました。

 

 

過労死事件を担当する上で,

貴重な学びを得ることができました。

 

 

1日でも早く,日本から過労死がなくなることを願っています。

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

第2次下請会社に雇用されている労働者は元請会社や第1次下請会社に対して安全配慮義務違反の損害賠償請求をできるのか

1 被災労働者は直接の雇用主以外に損害賠償請求できるのか

 

 

先日,造園業の労働者が高い樹木の上から転落した

労災事故の事案を紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/201911188752.html

 

 

この事案では,被災労働者の直接の雇用主に対する

安全配慮義務違反が争点となりましたが,

もう一つ,重要な争点がありました。

 

 

 

それは,被災労働者は,直接の雇用主ではない,

元請会社や第1次下請会社に対して,

損害賠償請求ができるのかという争点です。

 

 

この事案では,被災労働者は,第2次下請会社と

労働契約を締結していたので,第2次下請会社が,

被災労働者に対して,安全配慮義務を負うのは当然ですが,

元請会社や第1次下請会社も,第2次下請会社の労働者に対して,

安全配慮義務を負うのかが争点となったのです。

 

 

では,どうして,直接の雇用主ではない元請会社や

第1次下請会社に対して,損害賠償請求をする必要があるのでしょうか。

 

 

それは,第2次下請会社が中小零細企業の場合,資力が乏しく,

被災労働者が損害賠償請求をしても,

損害賠償金を支払うことができなかったり,

最悪,破産するおそれがあり,

損害賠償金を回収できないリスクがあるからです。

 

 

元請会社や第1次下請会社が,資金の余力がある会社であれば,

被災労働者は,元請会社や第1次下請会社に対して,

損害賠償請求できれば,損害賠償金を回収できなくなる

リスクを回避することができるわけです。

 

 

 

そのため,直接の雇用主の資力に不安があるときには,

元請会社や第1次下請会社に対して,

損害賠償請求ができないかを検討することになります。

 

 

2 特別な社会的接触の関係が認められるか

 

 

次に,元請会社や第1次下請会社が,

第2次下請会社の労働者に対して,

安全配慮義務を負うのは,

どのような場合なのかについて,検討します。

 

 

最高裁の裁判例によれば,安全配慮義務は,

ある法律関係に基づいて,特別な社会的接触の関係に入った

当事者間において,信義則上認められるものとされています。

 

 

この特別な社会的接触の関係があったか否かについては,

下請会社の労働者が元請会社の管理する設備,工具などを使っていたか,

下請会社の労働者が事実上元請会社の指揮監督を受けて働いていたか,

下請会社の労働者の作業内容と元請会社の労働者の作業内容との類似性

といった事情に着目して判断することになります。

 

 

3 元請会社と第1次下請会社の安全配慮義務違反を認めた裁判例

 

 

そして,日本総合住生活ほか事件の

東京高裁平成30年4月26日判決(労働判例1206号46頁)は,

次のように判断して,元請会社と第1次下請会社の

安全配慮義務違反を認めました。

 

 

第1次下請会社については,元請会社の指示に基づいて,

第2次下請会社に対して,具体的でかつ厳守を求める指示を行い,

この指示は,第2次下請会社をつうじて,

第2次下請会社の労働者に対しても及んでいたので,

特別な社会的接触の関係を肯定する指揮監督関係があったとされました。

 

 

元請会社については,第1次下請会社に対して,

安全帯の使用について具体的な指示をし,第1次下請会社は,

この指示に基づいて,第2次下請会社に対して,

同様の具体的指示を行い,

その指示が第2次下請会社からその労働者に及んでいたので,

特別な社会的接触の関係を肯定する指揮監督関係があったとされました。

 

 

 

元請会社や第1次下請会社の間接的な指示がされていたことを理由に,

わりと緩やかに,特別な社会的接触の関係を肯定したのが,

労働者によって有利なポイントです。

 

 

このように,労災事故が発生した場合,

直接の雇用主の損害賠償金を支払う資力に問題がある場合には,

元請会社など他の会社に対して,

損害賠償請求ができないかを検討することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

造園業の労働者の転落事故における安全配慮義務

1 造園業には転落事故のリスクがある

 

 

毎年11月1日,兼六園では,

雪から樹木を保護するために,

雪吊りをしています。

 

 

雪吊りのされた樹木と雪の景色は美しく,

金沢の冬の風物詩となっています。

 

 

 

ちょうど,11月ころになると,石川県内のニュースで,

兼六園の雪吊り作業が始まりましたというトピックが流れてきます。

 

 

そのニュースを見ていると,庭師や造園業の方々は,

高い樹木の上で作業をしているのがわかります。

 

 

このように,高い樹木の上で作業をしている方々が

転落した場合の労災事故について,本日は解説していきます。

 

 

2 安全配慮義務とは

 

 

まず,会社は,自己の使用する労働者の生命と健康を

危険から保護するように配慮する義務を負っています。

 

 

これを安全配慮義務といいます。

 

 

労災事故において,会社に損害賠償請求をする場合には,

会社に安全配慮義務違反がなかったかを検討することになります。

 

 

安全配慮義務の具体的内容は,

労働者の職種,仕事内容,仕事の場所

などの具体的状況によって定まります。

 

 

3 転落事故における安全配慮義務とは

 

 

次に,高い樹木の上から転落した場合の安全配慮義務違反が争われた,

日本総合住生活ほか事件の東京高裁平成30年4月26日判決

(労働判例1206号46頁)を紹介します。

 

 

この事件は,被災労働者が樹木の上から転落して,

四肢体幹機能障害などの後遺障害が生じたとして,

直接の雇用主である第2次下請業者と第1次下請業者と元請業者に対して,

安全配慮義務違反を根拠に,損害賠償請求をしたものです。

 

 

 

 

労災事故における安全配慮義務を検討するときには,

会社に労働安全衛生法や労働安全衛生規則の

違反がなかったかを検討します。

 

 

本件のような転落の労災事故については,

労働安全衛生規則518条と519条が参考になります。

 

 

(作業床の設置等)

第五百十八条 事業者は、高さが二メートル以上の箇所

(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において

墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、

足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。

 

2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、

防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等

墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

 

第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で

墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、

囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)

を設けなければならない。

 

2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき

又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、

労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等

墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

 

 

ようするに,労働者が転落しても,被害が最小限になるように,

防網を張り,墜落防止の器具を使用させなければならないのです。

 

 

そして,墜落防止の器具として使用されているのが安全帯です。

 

 

安全帯とは,高いところで作業する人の

墜落を防止するための保護具のことです。

 

 

 

https://www.bildy.jp/mag/safetybelt-fullharness/

http://www.cranenet.or.jp/susume/susume12_05.html

(安全帯についてはこちらのサイトに

わかりやすい説明が記載されています)

 

 

本件事件では,造園業界では一般的ではなかった

二丁掛の安全帯を使用させていなかったことが

安全配慮義務違反になるかが争点となりました。

 

 

二丁掛の安全帯を使用していれば,原則として,

高い樹木の上で作業する際に転落事故を防ぐことができ,

本件労災事故も防ぐことができました。

 

 

そして,雇用主が二丁掛の安全帯を被災労働者に提供して,

使用方法を指導して,樹木の上での作業のときに

二丁掛の安全帯を使用させる安全配慮義務があったのに,

これを怠ったと判断され,

雇用主の会社に対する損害賠償請求が認められました。

 

 

 

もっとも,被災労働者は,

一丁掛の安全帯を着用すべきことを認識しており,

一丁掛の安全帯を使用していれば,

本件労災事故を防ぐことができたとして,

5割の過失相殺がされました。

 

 

造園業界ではまだ一般的ではなかった

二丁掛の安全帯を使用させることが

安全配慮義務の具体的内容となると判断したことが,

今後の転落の労災事故で応用できそうです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ゼロから学べるブログ運営×集客×マネタイズ 人気ブロガー養成講座

1 私がブログをはじめたきっかけ

 

 

立花Beブログ塾の課題図書である菅家伸氏の

「ゼロから学べるブログ運営×集客×マネタイズ 人気ブロガー養成講座

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

そもそも,私がブログをはじめたのは,

樺沢紫苑先生の著作を通じて,

情報発信をすることが重要であると学び,

情報発信の中では,ブログが最も効果的であると

教えてもらったことがきっかけでした。

 

 

私が専門としている労働事件のことを情報発信すれば,

残業,労災,解雇などの労働問題で困っている人の

役に立つのではないかと思い,

2017年6月ころにアメブロをはじめました。

 

 

実は,2017年6月からブログをはじめる前に,

ブログをはじめるには何をどうすればいいのかがわからなかったので,

ブログに関する書籍を何冊か読みました。

 

 

そのうちの1冊が,今回の課題図書だったのです。

 

 

2年ほど前に読んだ本を改めて読み返したところ,

ブログを運営していく上で大切だけれども,

見落としていたことに気付かされました。

 

 

2 全ては読者のために

 

 

その一つが,読者の喜ぶ記事を書くです。

 

 

板坂裕治郎師匠も同じことをおっしゃっていました。

 

 

ブログを書くのは,全ては読者のためであると。

 

 

 

読者のためになるブログを記載していると,

その努力と誠意がめぐりめぐって自分に戻ってくるのです。

 

 

自分のブログ記事が読者の役に立っているという実感を味わえるときが,

ブログを運営していて一番うれしい瞬間となっています。

 

 

自分の能力を他人のために使うことで,

自分の能力の価値が発揮されるのです。

 

 

ときには,日記のようなブログ記事を記載することもありますが,

そのような日記記事であっても,

何か読者のお役立ち情報にならないかと,

ノウハウ記事にしていくことが重要です。

 

 

3 自分の成長をブログに記載する

 

 

また,立花岳志師匠もおっしゃっていたように,

自分の成長をブログに記載することが重要であると学びました。

 

 

自分の成長のプロセスを失敗や苦労話も含めて記載すると,

貴重なコンテンツになるのです。

 

 

 

 

そして,ブログに記載することで成長が実現するのです。

 

 

心理学に,コミットメントと一貫性という研究があるようです。

 

 

人は文章にすると約束を守ろうとするのです。

 

 

ブログに目標などを記載するとあとにひけなくなり,

その目標を達成するようにがんばるようになるのです。

 

 

私は,最高裁で労働事件に関する画期的な判決を勝ち取り,

最高裁の前で勝訴ののぼりを掲げるという夢を実現するために,

ブログで労働事件に関することをアウトプットしていきます。

 

 

また,自分の人間成長のためにも,

妻との関係や子育てについても,情報発信していきます。

 

 

今回,課題図書を読んで,セミナーで貴重な話しを聞いても

忘れてしまいますので,時間をおいた後に,

書籍でもう一度勉強すると,

より知識が定着することを実感しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ウーバーイーツの配達員は労働組合法の労働者か?

1 ウーバーイーツユニオン結成

 

 

先日のブログで,ウーバーイーツの配達員の

労働法の問題点について記載しました。

 

 

この問題点を改善するために,先月,

ウーバーイーツユニオンという労働組合が結成されました。

 

 

 https://www.ubereatsunion.org/

 

 

 

こちらが,ウーバーイーツユニオンのホームページのURLです。

 

 

オシャレなデザインですね。

 

 

かっこいいデザインにすることで,

労働組合に加入することの抵抗感をなくすように

配慮されていると思います。

 

 

それでは,なぜ,ウーバーイーツユニオンという

労働組合が結成されたのでしょうか。

 

 

2 団体交渉のメリット

 

 

それは,労働組合を結成すれば,会社と団体交渉ができるからです。

 

 

会社から賃金を支給されて働く労働者は,

会社にたてつくと,会社に居づらくなり,

会社を去ることになれば,賃金がもらえず,生活が困窮します。

 

 

そのため,労働者1人では,会社から理不尽な仕打ちをうけても,

何も言えずに,泣き寝入りせざるをえないときがあります。

 

 

しかし,多くの労働者が団結して,会社に対抗すれば,

会社は,労働者の意見を無視できなくなります。

 

 

労働者は,1人では弱いですが,

団結して多数になれば強くなれます。

 

 

労働者が団結して,団体として会社と交渉すれば,

会社は,労働者の要求に応じる可能性が高くなります。

 

 

 

さらに,会社は,労働組合から団体交渉を要求された場合,

これに応じなければなりません。

 

 

これを団交応諾義務といいます。

 

 

この団交応諾義務があることから,労働組合を結成して,

会社と団体交渉して,労働者の要求を実現していけるのです。

 

 

3 労働組合法の労働者とは

 

 

労働組合を結成するには,労働組合の加入者が,

労働組合法の「労働者」でなければなりません。

 

 

労働組合法の「労働者」は,労働組合を結成して

集団的な交渉による保護が図られる者が

幅広く含まれる必要があることから,

労働基準法の「労働者」よりも広く捉えられています。

 

 

労働組合法の「労働者」に該当するかについては,

次の要素を総合考慮して判断されます。

 

 

基本的判断要素

 

 

①事業組織への組み入れ

 

 

②契約内容の一方的・定型的決定

 

 

③報酬の労務対価性

 

 

補充的判断要素

 

 

④業務の依頼に応ずべき関係

 

 

⑤広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束

 

 

消極的判断要素

 

 

⑥顕著な事業者性

 

 

これら6つの要素をウーバーイーツの配達員にあてはめてみます。

 

 

①事業組織への組み入れ⇒配達員がいなければ,

飲食店から注文客のもとへ商品を配達できないので,

ウーバー社は,配達員を不可欠な労働力として,

組織内へ組み込んでいるといえます。

 

 

②契約内容の一方的・定型的決定⇒ウーバー社は,

配達員にとって最も重要な労働条件である報酬を

一方的にかつ定型的に決定しています。

 

 

③報酬の労務対価性⇒配達員は,飲食店から注文客のもとへ

商品を配達することで初めて報酬をもらえることができますので,

配達という労務に対する対価として報酬が支払われています。

 

 

④業務の依頼に応ずべき関係⇒配達員は,自分が働きたいときに

アプリをオンにして働くことができるので,

業務の依頼に必ずしも応ずべきとはいえないのかもしれません。

 

 

⑤広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束⇒

配達員が,飲食店から注文客のもとへ商品を配達できなかったときに,

ペナルティがかせられるのであれば,

広い意味での指揮監督があったといえますが,

自分が働きたいときに働くという意味では,

時間的場所的拘束は弱いといえそうです。

 

 

⑥顕著な事業者性⇒ウーバーイーツの配達員は,スキマ時間に,

自分の持っている自転車などを利用して働いているので,

事業者とはいえないと考えます。

 

 

まとめると,④と⑤の要素では,労働者性を否定する

方向にはたらきそうですが,①~③,⑥の要素が,

労働者性を肯定する方向にはたらきますので,総合判断すれば,

ウーバーイーツの配達員は,労働組合法の労働者に該当すると考えます。

 

 

 

今後,ウーバーイーツユニオンは,ウーバー社に対して,

交通事故での充実した補償や,適切な報酬の実現を求めていくようです。

 

 

自由な働き方と安心安全に働くこととは十分両立可能なはずですので,

ウーバー社は,ウーバーイーツユニオンの要求に応じてもらいたいです。

 

 

日本で初めてのプラットフォームワーカーの

労働組合の今後の活躍に注目したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

ウーバーイーツ配達員の労働法の問題点

1 労働者という争点

 

 

先日,岡山で開催された日本労働弁護団の全国総会では,

「労働者性」に関する報告が多くありました。

 

 

学習院大学法学部の橋本陽子教授による

「労働者性の判断要素と判断方法」という講演があり,

コンビニオーナー,公文式の先生,ウーバーイーツの配達員は,

労働組合法の労働者かについて,協議されました。

 

 

本日は,労働弁護団の総会で学んだことをアウトプットするために,

ウーバーイーツの配達員は,労働組合法の労働者なのかについて,

説明します。

 

 

2 ウーバーイーツとは

 

 

ウーバーイーツとは,ライドシェアの最大手の

ウーバーテクノロジー社のフードデリバリーサービスです。

 

 

ウーバーイーツの仕組みは,次のとおりです。

 

 

利用者は,スマートフォンにウーバーイーツのアプリをダウンロードし,

アプリに表示される登録飲食店の料理などを注文します。

 

 

注文がはいると,アプリをオンにしているウーバーイーツの配達員に

配達業務の依頼がきて,配達員は,飲食店に料理を取りに行き,

注文した客に料理を配達するというサービスです。

 

 

 

飲食店としては,出前の配達員を自社で準備する必要がなくなり,

人件費を削減でき,自分達の料理を,店に来てもらわなくても,

提供でき,売上をのばすことができます。

 

 

利用者は,自宅にいながら,

飲食店の料理を楽しむことができます。

 

 

ウーバーイーツのサービスは,現在,

大都市でしか利用できませんが,今後は,

地方都市でも利用できるようになるかもしれず,

ウーバーイーツの配達員が日本中に増えていくかもしれません。。

 

 

ウーバーイーツの配達員は,働きたいときにだけ,

アプリをオンにして,好きなときに働けるというメリットがあります。

 

 

今後,副業が解禁されていくので,サラリーマンが,

仕事が終わった後に,ウーバーイーツの配達の仕事をして,

お小遣いを稼ぐという働き方や,ウーバーイーツの仕事だけで,

好きなときに好きなように働くという働き方がでてくるかもしれません。

 

 

ウーバーイーツで好きなときに自由に働くというのは

魅力的にみえるかもしれませんが,現在,

ウーバーイーツの配達員には,

次のような問題が指摘されています。

 

 

3 ウーバーイーツ配達員には労災保険法が適用されない

 

 

現時点では,ウーバー社は,

ウーバーイーツの配達員を雇用しておらず,

ウーバーイーツの配達員は,

労働基準法の労働者ではないと判断しているようです。

 

 

ウーバーイーツの配達員は,

労働基準法の労働者ではないことになれば,

労災保険法が適用されません。

 

 

労災保険法が適用されないので,

ウーバーイーツの配達員が配達中に交通事故にあっても,

自分のケガに対する補償が受けられません。

 

 

 

労災保険を利用できれば,

治療費は労災保険から全額支給されますし,

ケガで仕事を休まなければならなくなっても,

休業期間中,約8割の給料が補償されます。

 

 

しかし,ウーバーイーツの配達員は,

仕事中にケガをしても,自分で保険に入っていなければ,

治療費は全額自己負担になり,

仕事を休んでいる期間の給料の補償はありません。

 

 

この交通事故の補償について,最近,

ウーバーイーツの配達員に対する傷害補償制度ができました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM9Z45CHM9ZULFA01H.html

 

 

ウーバーイーツの配達員に対する補償制度ができたことは,

大変よろこばしいことです。

 

 

ただ,治療費の上限が25万円に設定されていること,

休業補償がないことから,労災保険に比べると,

補償の水準が低いと言わざるをえません。

 

 

4 距離・報酬ちょろまかし問題

 

 

また,ウーバーイーツの配達員の報酬は,

配達先の距離が遠いほど,高くなる仕組みのようです。

 

 

しかし,実際の配達先の距離よりも短い距離で,

報酬が計算されるという「距離・報酬ちょろまかし問題」があるようです。

 

 

例えば,3キロ先の配達先へ料理を配達したにもかからわず,

約1.7キロ分の報酬しか支払われなかったということがあったようです。

 

 

このような問題について,個々の配達員がウーバー社に苦情を言っても,

ウーバー社と配達員個人の間には,交渉力に大きな格差があり,

ウーバー社に聞き入れてもらえないと考えられます。

 

 

 

この交渉力の格差を補い,ウーバー社に対して,

配達員の労働条件に関する適正な要望を聞き入れてもらうために,

ウーバーイーツユニオンが結成されました。

 

 

ウーバーイーツユニオンのことについては,明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。