那須連山登山紀行

私の趣味の一つは登山です。

 

 

これまでに登った百名山は,羅臼岳(北海道),

雨飾山(新潟),赤城山(群馬),浅間山(長野),

筑波山(茨城),白馬岳(長野),立山(富山),

乗鞍岳(長野),富士山(山梨),白山(石川),

伊吹山(滋賀),韓国岳(宮崎),開聞岳(鹿児島)の13座です。

 

 

百名山を全て登ることが目標なのですが,

結婚してからは,登山ができず,目標達成が遠のいていました。

 

 

このままでは,百名山を登ることができないことに

焦りを感じた私は,出張ついでに登山することを考えました。

 

 

今回は,栃木県那須にいきましたので,

百名山の一つ茶臼岳の登山をしてきました。

 

 

 

9月27日,那須塩原駅でレンタカーを借り,

過労死弁護団の総会に参加し,9月28日に登山をしてきました。

 

 

出張ついでに登山をするときは,仕事道具があって荷物が多いこと,

山はバスの便が悪いことから,レンタカーを借りるのがおすすめです。

 

 

那須高原の街道を山の方向へ登っていくと,

那須ロープウェーの山麓駅に着きます。

 

 

那須は,首都圏に近いので,土曜日は,

多くの登山客が殺到しますので,早朝にいかないと

駐車場が満杯になる可能性があります。

 

 

ロープウェーに5分ほど乗れば,

一気に茶臼岳の9合目まで行けます。

 

 

 

ロープウェーの山頂駅から登山道を歩くこと30分,

茶臼岳の山頂へ登頂できました。

 

 

ロープウェーの山頂駅から茶臼岳の山頂までは,

難所はなく,初心者でも楽に登頂できます。

 

 

 

茶臼岳の山頂からは,会津,尾瀬,日光の

山々が見渡せる爽快な景色を満喫できました。

 

 

山頂駅から茶臼岳山頂だけのコースだけですと物足りないので,

隣にそびえ立つ朝日岳も登ってきました。

 

 

茶臼岳の火口縁を歩き,山の稜線を少し下ると,

峰の茶屋避難小屋という休憩スポットがあり,

そこで小休止をとりました。

 

 

 

そこから,朝日岳への登山道はなかなか過酷です。

 

 

登山道の傾斜が急であったり,

鎖をつたいながら崖の真横の細い道を進むなど,

中級レベルの難所があります。

 

 

 

朝日岳を登るときには,きちんとした登山装備が必要だと思います。

 

 

朝日岳の山頂からも素晴らしい景色を満喫でき,

特に,対面にある茶臼岳の勇壮な姿を見て心躍りました。

 

 

 

その後,朝日岳から,茶臼岳を経て,山頂駅へ戻りました。

 

 

 

登山をしているときは,特に考え事をすることなく,

ただただ無心で登っています。

 

 

日常生活で無心になることはないので,

山に登るという一つの行為だけに集中できるのは

貴重な体験のような気がします。

 

 

山に登ると,大自然を体中で受け止めてリラックスできますし,

山頂へ到達したときの達成感がたまらないです。

 

 

日常生活におけるドロドロとしたストレスが,

体の中から自然に抜けていき,体が浄化されたように感じ,

とてもリフレッシュできます。

 

 

やはり登山はいいですね。

 

 

登山のもう一つの楽しみは温泉です。

 

 

茶臼岳の麓には,那須温泉郷の一つの大丸温泉があり,

大丸温泉旅館で日帰り入浴をしてきました。

 

http://www.omaru.co.jp/

 

 

ここの温泉は,硫黄の感じがすごく,

温泉に入ると体の疲労が解消されていくのを感じます。

 

 

 

広い露天風呂は,川から温泉が流れてくるような

素晴らしいつくりになっていて,

那須の自然を満喫しながら,温泉を楽しめます。

 

 

まさに秘湯という表現がぴったりくる,素敵な旅館でした。

 

 

登山後の温泉は,最高のデトックスになりますね。

 

 

登山と温泉を満喫して,リフレッシュできましたので,

仕事をがんばっていきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

第32回過労死弁護団全国連絡会議に参加してきました

昨日,栃木県那須町で開催された過労死弁護団全国連絡会議の

第32回総会に参加してきました。

 

 

過労死や過労自殺の分野の第一人者の弁護士の

貴重な事件報告を聞くことができ,大変勉強になりますので,

4年連続で参加させていただいております。

 

 

個人的には,過労死弁護団総会の最大の目玉は,

過労死や過労自殺の分野で数々の勝訴判決や労災認定を勝ち取ってきた,

東京の弁護士の川人博志先生による,前回総会から今回の総会までの,

過労死や過労自殺の労災認定や裁判結果を総括するご報告です。

 

 

 

川人先生のご報告によれば,平成30年度は,

過労死・過労自殺の労災申請数は増加しているにもかかわらず,

労災と認定される数は減少し,

労災申請数に対する労災認定数の割合も減少しており,

厚生労働省は,過労死や過労自殺の労災認定の抑制に

かじを切ったようです。

 

 

本来であれば,労災と認定されるべき事案において,

労災と認定されていない状況にあるようです。

 

 

過労死や過労自殺が労災と認定されるためには,

時間外労働を1ヶ月に何時間していたかが重要であり,

おおむね1ヶ月に80~100時間を超える

時間外労働をしていた場合には労災と認定されます。

 

 

しかし,最近の労働基準監督署は,

移動時間を労働時間と評価せずに,

時間外労働を過小に認定して,

1ヶ月の時間外労働が80~100時間を超えていないとして,

労災認定をしない傾向にあるようです。

 

 

川人先生のご報告による具体的ケースでは,

横浜に住む労働者が,自宅から社用車を運転して静岡へいき,

商談をした後に,社用車で再び移動し,

三重県鈴鹿市のホテルで宿泊して,

夜にホテルで業務報告の仕事をした事案において,

遺族は,移動時間を含めて14時間の労働時間を主張していましたが,

労働基準監督署は,静岡の取引先で商談をした約4時間だけしか

労働時間と認めず,過労死の労災認定をしなかったようです。

 

 

 

確かに,通勤時間は労働時間ではなく,

電車で出張する移動時間も労働時間といえない場合もあります。

 

 

しかし,会社からの業務命令に基づき,

労働者が自分で自動車を運転して移動する時間については,

会社の指揮命令下にある労働時間と評価できると考えます。

 

 

電車の移動と違い,自分で自動車を長時間運転するのは,

かなり疲労がたまります。

 

 

さらに,平成15年3月作成の厚生労働省内実務要領では,

労働者が自ら運転して移動する場合には,

労働時間として認めることにしているようです。

 

 

そのため,労働者が自分で社用車を運転する時間は,

労働時間と認定されるべきです。

 

 

ちなみに,移動時間については,

仕事に必要な荷物などを運搬していると

労働時間と認定されやすくなるようです。

 

 

移動時間以外にも,新入社員の自己研鑽や,

会社の外でパソコン作業をしても成果物がなければ,

労働時間と認定されにくいようです。

 

 

移動時間,自己研鑽,社屋外でのパソコン作業について,

労働時間と認めさせるためには,

会社の指揮命令下におかれていることについて,

主張立証を工夫していく必要があります。

 

 

第一線で活躍されている先輩弁護士から,書籍には載っていない,

裁判や労災認定の知恵を吸収することができましたので,

過労死や過労自殺事件を担当するときに活用していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

解雇を争うときに賞与を請求することができるのか

 

労働者が会社から解雇された場合,解雇に納得できなければ,

解雇を争うために,裁判手続を利用することがあります。

 

 

解雇を争う裁判手続において,労働者は,会社に対して,

解雇は無効なので,労働者の地位がまだありますよという

地位確認の請求と,解雇期間中の未払賃金の請求をしていきます。

 

 

 

裁判で争った結果,解雇が無効になれば,

解雇期間中に解雇がなければもらえるはずであった

毎月の給料分の未払賃金は,問題なく認められるのですが,

解雇期間中の賞与の請求については,認められないことが多いです。

 

 

それは,どうしてなのでしょうか。

 

 

本日は,解雇期間中の賞与の請求について解説します。

 

 

解雇期間中の賞与請求が認められるのは,

具体的な権利性が認められる場合に限られています。

 

 

すなわち,就業規則や労働協約,労使慣行等において,

賞与の支給基準が具体的に定まっており,その支給基準に従えば,

形式的に賞与額を算定することができる場合に,

具体的な権利性が認められて,

解雇期間中の賞与請求が認められるのです。

 

 

例えば,就業規則に,賞与は,給料の2ヶ月分支給する

と定められており,実際に,そのとおりに賞与が支給されていれば,

具体的な権利性が認められて,

解雇期間中の賞与請求が認められるわけです。

 

 

他方,賞与の金額を決定するために,

会社の成績査定を経ることが必要な場合,解雇期間中には,

会社の成績査定が実施されていないので,

賞与の金額を算定できないこととなり,

具体的な権利性が認められず,

解雇期間中の賞与請求を認めないとする裁判例は多いです。

 

 

そのような中,解雇期間中の賞与請求を認めた

裁判例があるので紹介します。

 

 

東京高裁平成30年6月18日判決

(判例時報2398号106頁)では,

大学教授に対する懲戒解雇及び普通解雇が無効とされた上で,

解雇期間中の賞与請求が認められました。

 

 

この事件では,給与規定に,賞与の支給について,

実績等を斟酌し,また,勤務の状況により

賞与を増減額することがあると定められていたのですが,

被告の大学教授の賞与は,留学や休職などの事情がない限りは,

教授ごとに個別に成績査定するという運用はされておらず,

給与額に5・25をかけることで機械的に

賞与の額を算定するようになっており,

成績査定を経ずに賞与が支給されていました。

 

 

 

 

そのため,解雇期間中に,成績査定を受けていないからといって,

解雇された原告が具体的な賞与請求権を取得していないわけではない

と判断されて,解雇期間中の賞与請求が認められたのです。

 

 

就業規則の形式面ではなく,

賞与支給の実態をみて判断することになるのです。

 

 

そのため,賞与が機械的に算定されているようなケースでは,

諦めずに,解雇期間中の賞与請求をしていく必要があると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

エコノミークラス症候群と過労死の労災認定基準

朝日新聞の報道によりますと,海外出張先で長時間労働の末に

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)を発症して死亡した

労働者の遺族が労災申請をしたものの,

労災と認定されなかったことから,

労災の不支給処分の取り消しの裁判が

大阪高裁で係属しているようです。

 

 

 https://www.asahi.com/articles/ASM9P4H1RM9PPTIL002.html

 

 

朝日新聞の報道によりますと,死亡した労働者は,

中国出張の際,深夜までホテルで,外国人顧客に対する

プレゼンの資料などを作成するために仕事をしており,

死亡する前2ヶ月間の時間外労働は,

合計240時間以上に及んでいたようで,

中国における移動時間も多かったようです。

 

 

いわゆる過労死基準では,

①発症前1ヶ月間におおむね月100時間を超える時間外労働,

または,②発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって

おおむね月80時間を超える時間外労働があれば,

発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす

特に過重な業務に従事したといえ,労災と認定されます。

 

 

 

今回の中国出張で死亡した労働者の死亡前2ヶ月間の

時間外労働の合計が240時間以上であれば,

上記①または②の要件を満たすはずです。

 

 

それにもかかわらず,どうして,労災と認定されなかったのでしょうか。

 

 

それは,死亡原因となった病名に理由があります。

 

 

過労死の労災認定を得るためには,

業務による過重負荷があったことの他に,

対象疾病を発症したこと」という

もう一つの要件を満たす必要があるのです。

 

 

この対象疾病ですが,①脳血管疾患と②虚血性心疾患があります。

 

 

①脳血管疾患とは,脳内出血(脳出血),

くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症などであり,

②虚血性心疾患とは,心筋梗塞,狭心症,

心停止,解離性大動脈瘤などです。

 

 

長時間労働や過酷な業務に従事したり,

あるいは業務上の強い過重負荷にさらされることによって,

脳や心臓にある血管へのダメージが積み重なり,

脳・心臓疾患を発症することになるのです。

 

 

そのため,過労死とは,仕事が原因で脳血管や心臓などの

循環器系の病気に罹患して死亡することを言うのです。

 

 

 

これに対して,エコノミークラス症候群は,

長時間同じ姿勢でいることが原因で,

ふくらはぎなどの足の血管にできた血栓が流されて,

肺の血管につまることで発症する肺の病気で,

上記の対象疾病とはされていません。

 

 

対象疾病に罹患していない場合,

労災と認定されるのは難しいのが現状です。

 

 

もっとも,長時間労働などの過重な仕事をして,

対象疾病以外の病気を発症して死亡した場合,

その病気と仕事の過重性との関連性を証明することができれば,

労災と認定される可能性はあります。

 

 

実際に,裁判では,対象疾病以外の病気であっても,

労災と判断されたケースがあります。

 

 

対象疾病以外の病気で,仕事の過重性との関連性を

証明するためには,医学的な証明が必要になるので,

主治医や専門医の協力が不可欠となります。

 

 

今回の事件でも,長時間のデスクワークで

エコノミークラス症候群が発症するリスクがあり,

過労と出張が重なって発症したと考えられるという

医師の意見書が裁判所に提出されているようです。

 

 

そのため,医学的にありえることなのであれば,

労災と認定されるべきだと思います。

 

 

地裁では遺族が敗訴していますが,

高裁で,労災と認定されることを願っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労災保険の特別加入制度

労災事故に巻き込まれたので,会社に労災の申請を依頼したところ,

会社からは,君は労働者ではないので,労災保険は使えないと言われて

困っていますという法律相談を先日受けました。

 

 

相談者の方は,会社との間で,労働契約ではなく,

業務委託契約を締結しているので,会社は,

相談者の方について,労災保険料を支払っていないようです。

 

 

このような場合,業務委託契約を締結していても,

勤務実態をみてみると労働者と評価できる場合には,

労災保険法が適用される可能性があります。

 

 

もう一つ,労災保険の特別加入制度を利用するという方法もあります。

 

 

 

本日は,労災保険の特別加入制度について説明します。

 

 

特別加入制度とは,労働者以外の者であっても,

労働者に準じて労災保険の保護を与えるにふさわしいとされる者について,

労災保険の目的を損なわず,業務上・外の認定など

保険技術的に可能な範囲で,労災保険の適用をはかることとした制度です。

 

 

中小企業の事業主や,一人親方,自営業者などが対象です。

 

 

労働者にとっての労災保険は事業主において

強制加入することとされており,

労働者が加入手続などをする必要はないのですが,

特別加入制度は,事業主や,一人親方,自営業者

などが自分で加入手続をとる必要があります。

 

 

特別加入制度を利用するための手続きについては,

加入者が従事している業務内容に応じて窓口が設けられており,

その窓口を通じて特別加入申請書を労働基準監督署へ提出し,

各都道府県労働局長の承認を受けることが必要になります。

 

 

特別加入制度に加入した者が,仕事中に負傷したり,

通勤の途中で負傷した場合,治療費,休業補償,障害補償,遺族補償など,

通常の労災に準じた種類の給付を受けられます。

 

 

 

もっとも,特別加入の場合,各種給付の給付額を算定する

基礎となる給付基礎日額の決定方法が,

通常の労災の場合とは異なり,特別加入申請の際に,

加入者自身が所得水準に見合った適切な金額を選択して申請し,

都道府県労働局長が承認した金額が給付基礎日額となるのです。

 

 

ですので,仕事中に怪我を負う危険の高い業務をする

中小企業の事業主,一人親方,自営業者は,

特別加入制度を利用して,もしものときに備えるべきだと思います。

 

 

また,特別加入制度を利用していたとしても,

仕事中に怪我をしたときの具体的な契約内容や

就労実態からして労働者と認められる場合には,

特別加入制度ではなく,通常の労災補償を受けられるときがあります。

 

 

特別加入制度で定めた給付基礎日額よりも,

通常の労災補償の給付基礎日額の方が高い場合には,

労働者であるとして,通常の労災保険給付の

請求をしてみるのがいいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

定年退職前後の賃金の相違は不合理といえるか

先日,ある労働組合の勉強会に講師として呼ばれまして,

同一労働同一賃金について,解説しました。

 

 

私の講義の後に,多くの方が質問をされ,

正社員と非正規雇用労働者との間の労働条件の格差は

切実な問題なのだと実感しました。

 

 

さて,本日は,同一労働同一賃金に関連する

裁判例を紹介したいと思います。

 

 

ホテルの営業職の定年退職前後の賃金額の相違が

不合理な労働条件の相違といえるかが争われた

日本ビューホテル事件の東京地裁平成30年11月21日判決

(労働判例1197号55頁)です。

 

 

 

この事件では,被告の会社において,

正社員の定年は60歳だったのですが,

高年齢者の雇用確保措置として,

継続雇用制度が採用されており,正社員は,

定年退職後に,有期労働契約を締結して,

嘱託職員として再雇用されていました。

 

 

原告の退職時の月額賃金は約38万円でしたが,

嘱託職員として再雇用された後には,

月額賃金は約21万円~25万円に減額されました。

 

 

このように,定年退職の前後で,賃金額に差があることが,

労働契約法20条の不合理な労働条件の相違といえるかが争われたのです。

 

 

労働条件の相違が不合理といえるかについては,

①職務の内容,②人事異動,③その他の事情

という3つの考慮要素を総合検討して判断されます。

 

 

まず,①職務の内容について,定年退職前の原告の業務は,

売上目標を課せられ,部下の仕事の承認や,

クレーム対応などの相応の責任を伴うものでしたが,

定年退職後の原告の業務は,営業活動に限定され,

売上目標が達成できない場合には人事考課に影響するという

人事上の負担が軽減されており,職務の内容は異なっていました。

 

 

次に,②人事異動について,実態としては,

正社員には配転が実施される可能性があるのに対して,

嘱託職員には配転の実績がなく,今後も予定されておらず,

人事異動についても異なった取り扱いがされていました。

 

 

そして,③その他の事情について,正社員の賃金制度が

長期雇用を前提として年功的性格を含みながら

各役職に就くことなどに対応したものであるのに対し,

嘱託職員の賃金制度は長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず,

役職に就くことも予定されていないという,

定年後再雇用制度の運用実態が考慮されました。

 

 

 

 

①業務の内容及び②人事異動について相違があり,

③定年後再雇用制度の運用実態からして,

定年退職の前後で賃金月額に相違があることは

不合理ではないと判断され,原告の請求は棄却されました。

 

 

最近の裁判例の傾向から,定年後再雇用のケースや

基本給の格差を争うケースの場合,

不合理と判断されるのは難しいように思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

すべては導かれている2~逆境の解釈~

田坂広志先生の「すべては導かれている」という本の

アウトプットの続きについて記載します。

 

 

 

逆境に正対するための5つの覚悟のうちの第4の覚悟は,

大いなる何かが,自分を育てようとしている」というものです。

 

 

この覚悟を定めることで,究極の楽天性を身につけることができます。

 

 

「大いなる何かが,自分を育てようとして,この逆境を与えた」

 

 

 「だからこそ,この逆境は,必ず乗り越えられる」

 

 

 「だからこそ,この逆境を糧として,必ず成長していける」

 

 

 

このように解釈することで,人間の深層意識を

楽天的,肯定的な想念で満たすことができ,

逆境に正対する力が湧いてきます。

 

 

こう考えると,逆境とは一見,自分を不幸にするものと捉えがちですが,

実は,自分を成長させてくれる素晴らしい機会なのです。

 

 

私も約9年ほど弁護士の仕事をしてきましたが,

過去を振り返って思い出せるのは,

自分にとって苦しかった事件や辛かった事件ばかりです。

 

 

ただ,自分にとって苦しかった事件や辛かった事件を経験したからこそ,

弁護士として力をつけることができた,成長できたと実感できます。

 

 

そのため,逆境を単にそのまま逆境と捉えるのではなく,

自分を成長させる絶好の機会だというように,

楽天的に解釈することが重要になると思います。

 

 

次に,第5の覚悟とは,

逆境を越える叡智は,すべて,与えられる」ということです。

 

 

この覚悟を定めることによって,

様々な不思議な体験をするようになるようです。

 

 

例えば,直観が閃く,シンクロニシティ

(心の中で考えていることと現実の世界に起こる出来事の

不思議な偶然の一致)が起こる,運気が引き寄せられる,などです。

 

 

 

私は,正直,これらの不思議な体験を経験していません。

 

 

もしかしたら,不思議な体験をしているのかもしれませんが,

自分がまだ気づいていないだけなのかもしれません。

 

 

ただ,ここ数年,潜在意識などを勉強していくにつれ,

こういった不思議な体験はありうるという感覚は身についてきました。

 

 

このような不思議な体験を感じるためには,

負の想念を持たないことです。

 

 

私達が心のなかに,怒りや憎しみ,悲しみ,後悔,不安,

などの負の想念を持つと,深層意識のレベルが

深い世界とつながるのを妨げてしまい,

私達の心の奥深くに眠る能力が発揮されなくなってしまうからです。

 

 

では,負の想念を持たないためにはどうすればいいのか。

 

 

それは,この本の最初に戻るのですが,

「すべては導かれている」という覚悟を定めることなのです。

 

 

「すべては導かれている」という思想は,

全てを肯定することにつながるのです。

 

 

「人生で起こること,すべて良きこと」

 

 

こう捉えることで,自分の心の奥深くに眠る

不思議な力と叡智が湧き上がってくるのです。

 

 

この本に記載されていることは非常に深い話しなのですが,

著者がご自身の体験をもとに具体的に,

わかりやすく語りかけてくれるので,

自分のこととして,理解することができます。

 

 

逆境にぶつかったときに読むと,

勇気が湧いてくる素晴らしい一冊ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

すべては導かれている

田坂広志先生の「すべては導かれている

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

7月5日に田坂塾に参加して,

初めて田坂先生のお話を生で聞くことができました。

 

 

真剣勝負で,静かにそして力強く講話をされる

田坂先生のお姿を見て,なんと言葉に説得力のある方

なのかと感動しました。

 

 

なぜ,ここまで言葉に説得力があるのか。

 

 

その秘密が,この本を読んでわかった気がします。

 

 

田坂先生は,若い頃に,死を体験する大病を患ったようです。

 

 

この大病の療養中,ある禅師から,次の言葉を聞いたようです。

 

 

過去は,無い。未来も,無い。

有るのは永遠に続くいま,だけだ。

いまを,生きよ。いまを生き切れ。

 

 

 

田坂先生は,この言葉を心に定めた後,大病を克服したようです。

 

 

そして,大病を克服する過程において,

逆境を超えるための5つの覚悟に気づいたようです。

 

 

第1の覚悟は,「自分の人生は,大いなる何かに導かれている

ということです。

 

 

自分が直面している逆境を導かれた出来事であると信じて歩むと,

人生の解釈力が備わります。

 

 

解釈力とは,いま自分が直面している苦労や困難,

失敗や敗北,挫折や喪失,病気や事故などの

逆境の意味を解釈する力のことです。

 

 

この解釈力は,第2の覚悟である

人生で起こること,すべて,深い意味がある

と心に思い定めて,信じることで身につきます。

 

 

何が起こったか。それが,我々の人生を分けるのではない。

起こったことを,どう解釈するか。それが,我々の人生を分ける。

 

 

この解釈力をみにつければ,人間として

成長していくことができると思います。

 

 

 

この解釈力をみにつけるためには,第3の覚悟である

人生における問題,すべて,自分に原因がある

と心に深く思い定めることが大切になります。

 

 

これは「引き受け」という心の姿勢のことをいい,

たとえ,自分に直接の原因が無いことでも,すべてを,

自分自身の責任として,引き受けることです。

 

 

この「引き受け」をすることで,目の前の問題を,

自分自身の問題として受け止め,

自分に与えられた課題に正対することができるのです。

 

 

そして,その逆境が,自分に何を教えようとしているのか,

何を学ばせようとしているのか,何をつかませようとしているのか,

を正しく解釈することができるのです。

 

 

人生における心の姿勢について,

大変わかりやすく記載されている名著ですので,

紹介させていただきます。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。

 

 

均等待遇と差別的取扱いの禁止

9月21日に,ある労働組合から,

同一労働同一賃金についての勉強会の講師の依頼を受けましたので,

同一労働同一賃金について勉強をしています。

 

 

同一労働同一賃金については,働き方改革において,

パートタイム・有期雇用労働法が成立し,

8条において均衡待遇に関する規定が,

9条において均等待遇に関する規定が整備されました。

 

 

 

均等待遇とは,等しきものには等しい待遇をすることをいい,

均衡待遇とは,等しくなくてもバランスのとれた待遇をすることをいいます。

 

 

本日は,このうち,均等待遇について解説します。

 

 

パートタイム・有期雇用労働法9条の内容は次のとおりです。

 

 

「事業主は,職務の内容が通常の労働者と同一の

短時間・有期雇用労働者であって,

当該事業所における慣行その他の事情からみて,

当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,

その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の

職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが

見込まれるものについては,短時間・有期雇用労働者であることを

理由として,基本給,賞与,その他の待遇のそれぞれについて,

差別的取扱いをしてはならない。

 

 

まず,職務の内容が同一といえるためには,

個々の作業まで完全に一致している必要はなく,

それぞれの労働者の職務の内容が実質的に同一であればいいのです。

 

 

具体的には,正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間において,

業務の内容が実質的に同一かを判断し,

次に責任の程度が著しく異なっていないかを検討します。

 

 

業務の内容については,中核的な業務を抽出して比較します。

 

 

中核的業務については,以下の3つの基準にしたがって総合考慮します。

 

 

①与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務

②その成果が事業に対して大きな影響を与える業務

③労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務

 

 

中核的業務が実質的に同一であれば,

正社員とパートタイム・有期雇用労働者の

職務に伴う責任の程度が著しく異なっていないかを検討します。

 

 

その際には,以下の事項について比較を行います。

 

 

ア:授権されている権限の範囲

(単独で契約締結可能な金額の範囲,管理する部下の数,決裁権限の範囲など)

イ:業務の成果について求められる役割

ウ:トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度,

エ:ノルマ等の成果への期待の程度

オ:所定外労働の有無及び頻度(補助的指標)

 

 

もうひとつ,職務の内容及び配置の変更の範囲が

同一か否かについて,検討します。

 

 

これは,転勤,昇進を含む人事異動や

本人の役割の変化の有無や範囲を総合判断します。

 

 

 

例えば,正社員の就業規則には,「正社員には配置転換することがある」

と規定されているものの,他方でパートタイム・有期雇用労働者には

そのような規定がないという形式的な違いではなく,

実際の人事異動の実態をみて判断されるので,

正社員もパートタイム・有期雇用労働者の両方とも

実際には配置転換がされていないという実態があれば,

職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であると判断されます。

 

 

以上を具体的な裁判例でみてみます。

 

 

京都市浴場運営財団ほか事件の

京都地裁平成29年9月20日判決です

(労働判例1167号34頁)。

 

 

この事件では,パートタイム労働者である嘱託職員であっても

主任になる者がいたこと,嘱託職員には

他の浴場への異動が予定されておらず,

正社員にもそれが予定されていたという事情はなく,

正社員と嘱託職員との間での人材活用の仕組み,

運用が異なっていたわけではないにもかかわらず,

正社員にのみ退職金が支給され,

嘱託職員には退職金が支給されないことは

差別的取扱いに該当するとして,

損害賠償請求が認められた。

 

 

 

そのため,正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間で,

仕事の内容と人事異動の範囲が同じであるにもかかわらず,

正社員にだけ退職金が支給されていて,

パートタイム・有期雇用労働者には退職金が支給されていないなど,

労働条件に格差がある場合には,

差別的取扱いに該当するとして,

損害賠償請求が認められる可能性があるのです。

 

 

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会社が労災保険の届出をしていなくても労働者は労災保険を利用できるのか?

先日,次のような労働相談を受けました。

 

 

仕事中に事故にあったので,会社に労災の申請をお願いしたら,

君はまだ見習いだから,君については,労災の届出をしていない

という説明を受けたという内容でした。

 

 

このように,会社が労災保険の届出をしていなかったり,

労災保険料の支払を滞納していたときに,

労働者が仕事中にけがをした場合,労働者は,

労災保険を利用することができるのでしょうか。

 

 

 

結論から言いますと,このような場合でも,

労働者は,労災保険を利用できます。

 

 

労働者を一人でも使用する事業主は,

会社等の法人や個人事業主の区別なく,

労災保険に加入する義務があります(労災保険法3条1項)。

 

 

そのため,会社が労災保険の届出や加入手続をしていなくても,

労働者は,当然に労災保険の適用を受けることができるのです。

 

 

このように,労災保険は,強制加入制度になっているわけです。

 

 

会社が勝手に労災保険料を支払う必要がないと考えて,

労災保険料を支払っていなかった状態で,

労働者が労災事故に巻き込まれた場合,

その労働者は,会社が労災保険料を支払っていなくとも,

当然に,労災保険の適用を求めることができます。

 

 

そして,①会社が故意または重大な過失によって

労災保険の届出をしていない期間に発生した労災事故,

②会社が労災保険料を滞納していた期間に発生した労災事故,

③会社が故意または重大な過失によって発生させた労災事故について,

国が,被災労働者に対して,労災保険の給付を行った場合,

国は,会社に対して,労災保険の給付に要した費用

に相当する金額の全部または一部を徴収することができます。

 

 

 

例えば,労働基準監督署から労災保険の届出をするように

指導を受けていたにもかかわらず,

会社が手続を行なわない期間中に労災事故が発生した場合,

会社が故意に手続を行なわなかったとして,

その労災事故に対して支給された保険給付額の100%が徴収されます。

 

 

また,労働基準監督署からの指導はなかったものの,

労働者を採用してから1年が経過しても,

なお労災保険の届出を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合,

会社が重大な過失によって手続を行なわなかったとして,

その労災事故に対して支給された保険給付額の40%が徴収されます。

 

 

このように,会社が労災保険の届出をしていなかったり,

労災保険料を滞納していたとしても,労働者には,

労災保険が適用されるので,労災事故に巻き込まれてしまったら,

会社に気兼ねすることなく,労災申請をするようにしてください。

 

 

その後,会社が労災保険給付について徴収されたとしても,

それは自業自得ということになるのです。

 

 

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