電通違法残業刑事事件で略式不相当
平成29年7月13日の朝日新聞の報道によると,電通の違法残業刑事事件において,検察官が略式命令の請求をしたところ,簡易裁判所が略式不相当として,公判が開かれることになるようです。
http://www.asahi.com/articles/ASK7F0BDQK7DUBQU02B.html
窃盗や傷害といった一般的な刑事事件で,裁判所が検察官の略式命令の請求を認めないことはほぼなく,労働基準法違反の事件でも,大多数の事件は略式命令で終了しています。そのような現状の中,裁判所が略式不相当としたのに驚きました。
朝日新聞の報道によると,約6000人いる本社で違法残業と認定したのは4人で,時間外労働は1ヶ月19時間にとどまっているようです。そのため,ここまで大問題になった事件で,なぜ違法残業と認定された労働時間が少ないのかという疑問を公開の法廷で明らかにする必要があったのかもしれません。
通常の刑事裁判へ移行するので,公開の法廷で審理されるため,マスコミを通じて,違法残業の実態が明らかになると思われます。特に,検察官の冒頭陳述,書証の要旨の告知,論告において,違法残業の詳細が明らかになることが期待されます。
労働基準法は刑罰が軽く略式命令で終わるので,経営者に労働基準法を遵守させるインセンティブがはたらきにくいのですが,公開の法廷で有名企業の違法残業の実態が赤裸々になるのであれば,労働基準法を遵守する機運が高まります。また,これだけ大々的に報道されているので,電通に対する世間のイメージが悪化し,就職活動をしている学生の間にも悪い評判がたっているかもしれません。さらに,官公庁の入札の指名停止処分が出されているので,労働基準法違反の事件でも企業が受けるダメージは大きくなります。
この電通事件によって,多くの企業が労働基準法を遵守するようになることを期待しています。
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